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6.「首謀者の正体」

「助けなきゃ!」


 壁に立て掛けておいたショートソードを手に取り、窓から飛び降りて着地。

 と同時に大きく跳躍した僕は、蔦で縛られ持ち上げられていた女性エルフを助けるため、蔦を薙ぎ払った。


「たあああああ!」


 空中に放り出された女性をキャッチ、着地する。


「大丈夫ですか?」

「ええ。ありがとう!」

「いえ! 出来るだけ遠くに逃げて下さい!」


 逃げる女性を追わんとする複数の蔦を、素早く斬り落とす。


「おらああああ!」


 雄叫びに振り返ると、エルアさんが大斧を振るい、蔦で拘束された男性エルフを救出しているところだった。


「『サンダーアロー』! 遅くなってごめん!」


 魔法の杖を持ったマイカさんが駆け付け、幾多の雷矢でエルフの人々を同時に救い出す。


「リュウ君、大聖樹に何があったの?」

「分かりません。でも、まずは助けないと!」

「そうね!」


 建物の間を走りながらショートソードを一閃、捕まった人々を助けながら考える。


 なんでエルフの人々は、反撃しないんだろう?

 エルフは弓矢の名手だって言うし、風魔法も得意なはずだ。

 それなのに――


「皆の者! 大聖樹さまを傷付けはならぬ!」


 凛とした声が、村中に響いた。


 目を向けると、杖をついた族長さんが佇んでいた。


 そうか。

 神聖視しているから、みんな戦えないんだ。


 少し離れたところでは、レンベスさんが、構えていた弓を下ろした。

 唇を噛みながら。


 そんな中、唯一立ち向かっているエルフの女性が声を上げる。


「んなこと言ってる場合じゃないだろうが、頑固ジジイ!」


 迫り来る数多の蔦を斬り刻むエルアさん。


「ならぬ! 大聖樹さまは、儂らエルフの守り神じゃ!」


 保守的で頑固という族長さんの性格がやっと見えた気がする。


 エルアさんが言うように、そんなことを言ってる場合じゃない。

 

 だって――


「たあああああ!」

「『サンダーブレード』!」


 大聖樹は、蔦だけでなくその巨大な枝をも操り、本格的に攻撃し始めたからだ。


 迎撃して枝を何回斬ろうと、大元を叩かないと止まらない。


 真っ黒になってしまった大聖樹を見上げ剣を構える僕に、後ろから族長さんが釘を刺す。


「良いか! 何人たりとも、大聖樹さまを傷付けはならぬ! ならぬのじゃ!」


 ……やり辛い……


 どうすれば良いんだ?

 

「大聖樹をこんな風にした元凶が分かれば、戦えるのに……」


 ふと、振り返ると。


「ヒッヒッヒ~」

「!」


 族長さんのすぐ横に、さっきまでいなかったヴェルグさんの姿が見えた。


 不敵な笑みを浮かべる彼に、嫌な予感がする。


 まさか……彼が、この状況を作り上げた……?

 そのために、エルフの村に侵入した……?


「見て、リュウ君! もしかして、あれが原因じゃない?」


 マイカさんが指差す先を見ると。


「あれは……!」


 大聖樹の上空を、一匹のモンスターが飛翔しているのが見えた。


 僕が跳躍しても、あそこまでは跳べない。

 今僕が召喚出来る中じゃ、飛べるドラゴンもいない。


「マイカさん、魔法で攻撃出来ますか?」

「ごめんなさい。遠過ぎてちょっと……」


 大聖樹をこんな風にしたのは、ヴェルグさんなのか、はたまた上空のモンスターなのか?


 くそっ!

 迷ってる場合じゃないのに!

 

 こんな時きっと、強くて格好良いドラゴンだったら、迷ったりしないのに!

 ……って、え? ドラゴン?


「そうだ! 『召喚サモン! 感知ディテクションドラゴン』!」


 レベルアップした時に新しく呼べるようになったドラゴンを召喚した。

 ディテドラは、感知能力に特化したタイプだ。


「ディテガアアア!」


 子犬くらいの大きさの彼を肩の上に乗せつつ、感知してもらった僕は。


「!」


 〝あること〟に気付いた。


「もし違っていたら、すいません!」


 振り返って駆け寄ると、ヴェルグさん――の隣の族長さんを殴った。


「ぐほっ!」


 吹っ飛んで気を失う族長さん。


「族長!」

「族長さま!」


 エルフたちが騒然とし、マイカさんも「リュウ君、何してるの!?」と、混乱している様子だったが。


「ケケッ! よく気付いたな、人間のガキ! このジジイが憑りつかれてるってよ」

「「「「「!」」」」」


 族長さんの口から、黒い霧のようなモンスターが出現した。


「ディテドラのおかげだ」


 最近様子が変わったという族長さんと怪しい見た目と言動のヴェルグさんのどちらかが、モンスターが化けた姿である可能性を考慮して、ディテドラに二人の魔力を感知してもらったら、族長さんからモンスターの魔力を感じ取ったのだ。


 ディテドラには感謝を伝えて、一旦消えてもらった。


 空中に浮遊する黒霧モンスターから手のようなものが二本伸び、中心には顔らしきものが見える。


「このダークフォギーは、魔王さま直属の――」

「たあああああ!」

「『サンダーブレード』!」


 待ってやる義理も無い。

 僕の刃とマイカさんの放つ雷刃が、敵を斬り裂く。


 ――はずだった。


「話は最後まで聞くもんだぜ? ったく、礼儀のなってないガキどもが」

「なっ!?」

「効いてないの!?」


 思わず瞠目する僕らに、ダークフォギーは口角を上げた。

 

「魔王さま直属の部下であるこのダークフォギーには、物理攻撃も魔法も一切効かないんだよ! ケケッ!」

「「!」」

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