表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/44

42.「vs魔王」

「ほれ、集中するのじゃ。一瞬で全滅してしまうぞ? ほれ」

「! みんな、避けて!」


 魔王が凝縮した魔力を親指で弾いた〝指弾〟が、高速で飛ばされ、壁に穴を開ける。

 目で見てから避けるのは困難なため、予め射線上から離脱するしかない。


「こういうのはどうじゃ? ほれ」

「くっ!」


 上げた爪先を勢いよく下ろしただけで、風刃が放射状に射出、床を削りながら襲い掛かる。


「おらああああ!」

「はあああああ!」


 跳躍したエルアさんとウルムルさんが頭上から狙うが。


「ほれ」

「うわあ!」

「きゃあ!」


 大斧と棍棒を素手で掴んだ魔王が投げ飛ばすと、二人は壁に叩き付けられる。


「『エリアウルトラヒール』! 『サンダーブレード』!」


 パワドラ含め、仲間たち全体をドーム状の輝きで包み癒やしつつマイカさんが放った三本の雷刃を、指弾で撃ち落とす魔王。


「ハッ! 隙が無さすぎて笑えないね!」


 回避しながら観察していた僕は、肩に乗せたディテドラに魔王の魔力の流れを感知してもらいつつ、「大丈夫です!」と、仲間たちに告げる。


「LV1000は一時的なものです! そんな力を常に出し続けられるなら、ドラゴンの力なんて必要としなかったはずですから!」


 魔王は回し蹴りによって魔力を帯びた刃を放ち、身体の大きなパワドラを消しつつ僕は屈んで回避、仲間たちも何とか避ける。


「ドラゴンを欲したのは、妾自身が手を下すのが面倒臭かったからじゃが、まぁ、其方が言うことも間違ってはおらん。あくまで短期決戦用のものじゃ」


 魔王は、「じゃが、其方らを皆殺しにするには、十分な時間だと思うがのう」と言葉を継ぐと、天に手を翳した。


「賢者よ。其方は確か、雷魔法が得意だったかのう? 妾も少々雷魔法には心得があるのじゃ。こんな風にのう」


 刹那。

 魔王城の屋根と天井を吹っ飛ばして、落雷。


 いつの間にか暗雲が立ち込めていた空から、無数の雷が魔王の手の平に落ち、バチバチと放電現象を起こしながら、凝縮されていく。


「みんな、固まって!」

「『エリアプロテクト』!」


 〝圧縮された雷そのもの〟のようになってしまった魔王には近付くことすら出来ず、マイカさんが防御魔法の光で全員を包む。


「『サモン』! がはっ!」

「リュウ君! 大丈夫?」

「平気……です……。……癪ですが、さっき乗っ取られた時に、無理すればたくさん呼べることが分かったので……」


 吐血しつつ僕が四体のドラゴンを同時に召喚すると、魔王が愉快そうに嗤った。


「ククッ。どれだけ持ち堪えられるかのう? 『アストロノミカルサンダー』」


 凝縮された数多の雷が一気に放出。

 と同時に、こちらも迎撃する。


「ファアガアアア!」

「アイガアアア!」

「ウォオガアアア!」

「ポイガアアア!」

「『サンダートルネード』!」


 ファイアドラゴン、アイスドラゴン、ウォータードラゴン、ポイズンドラゴンがドラゴンブレスを吐き、マイカさんが雷の竜巻を放つ。


「その程度かのう?」

「くっ!」


 僕らの総攻撃が、魔王の雷撃によって徐々に押されていく。

 恐らく僕らを包む防御魔法も、簡単に破壊されてしまうだろう。


「何も出来ないってのかい!」

「歯痒いですわ!」


 僕は、必死に思考を重ねる。


 他に何か出来ることはないか?

 魔王に対抗出来るような、この事態を打開できるような何かがないか?


 ! そうだ、ドラゴンは?

 他に召喚して戦えそうなドラゴンはいないか?


「あ!」


 そこで、僕は漸く思い至った。


 名前の無いドラゴンだ!


「『サモン』!」


 早速呼んでみるが。


「……あれ? 『サモン』!」


 一向に召喚されない。


「ディテドラ!」


 ディテドラに感知して調べてもらうと。


「ディテガ!」

「え!?」


 段階を踏む必要があるとのことだった。


 彼の言葉に従って、まず僕は、彼女を呼び出す。


「ラクドラ!」

「ラクガアアア!」


 虹色の彼女を出現させることによって、幸運値が上昇。


 その上で、〝こんなドラゴンに来て欲しい〟という願いを僕が込めながら呼ぶと、その通りのドラゴンが召喚されるという。


「あともう一息じゃのう。ヒヒヒヒヒ」

「ファアガアアア!」

「アイガアアア!」

「ウォオガアアア!」

「ポイガアアア!」

「やあああああ!」


 既に魔王の雷撃は眼前まで迫っている。


 この窮地から救ってくれるドラゴン!

 絶望的な状況を変えてくれるような!


 いや、変えるというよりも、むしろ……!

 そうだ!


「『サモン! イレイズドラゴン』!」

「イレイガアアア!」


 現れたのは、まるで月光を纏っているかのような、銀色に光り輝くドラゴン。


「行けええええええ!」

「イレイガアアアアア!」


 大口を開けたイレイズドラゴンから放たれたドラゴンブレスが、魔王の雷撃に触れた瞬間。


「何じゃと!?」


 雷撃が〝フッ〟と消滅。


「くっ! ならば! 灰燼と化せ! 『アルティメットヘルファイア』!」


 空を埋め尽くした夥しい数の獄炎が、落下して来るが。


「イレイガアアアアア!」


 イレイズドラゴンは、その全てを消して。


「これならどうじゃ! 穿て、『ジェットブラックデーモンソード』!」


 星の数程の漆黒魔剣が天から降り注ぐが。


「イレイガアアアアア!」


 それらもまた消え去って。


「ぐっ!」


 とうとう、魔王へと、ドラゴンブレスが届いた。


 右半身を失った彼女は、左半身も消滅していく。


「一旦退いた方が好さそうじゃな。『ワープ』」


 空間転移魔法を唱えるが。


「魔法すらも消すというのか!?」


 発動出来ず。


「……どうやら、見誤ったようじゃな。千年前と違い〝この世界の理〟から外れた存在となったドラゴンの底力を。今回は、妾の負けじゃ。じゃが、妾はまた復活するからのう! 次は千年と言わず、近い内に復活してやるのじゃ! そしてまた、大勢の人間を喰らい、今度こそ、滅ぼしてやるからのう! ヒヒヒヒヒ!」


 魔王の肉体が消えた。


「そんな……せっかく倒したのに、また復活しちゃうだなんて……」

「チッ! いたちごっこじゃないか!」

「これでは、本当の平穏は訪れませんわ……」


 顔を曇らせる仲間たちに、僕は告げる。


「大丈夫です! 何たって、ドラゴンは最強ですから!」


 僕は、肩上の相棒に声を掛ける。


「ディテドラ!」

「ディテガ!」


 ディテドラが、〝見えないソレ〟を感知した。


「よし! イレドラ!」

「イレイガアアア!」


 イレイズドラゴンがドラゴンブレスを吐くと、壁が消失。

 不可視であるはずの〝ソレ〟の輪郭が薄っすらと見えて。


『なっ!? 馬鹿な! 〝魂〟にまで干渉するじゃと!?』


 壁を擦り抜けて逃げようとしていた魔王の〝魂〟――揺らめく炎のようなそれが、少しずつ消えていく。


『こ、こんなはずでは……ぎゃああああああああああああああああああああ!!!』


 魔王の〝肉体〟とその〝魂〟までが、完全に消滅した。

お読みいただきありがとうございます!

もし宜しければ、ブックマークと星による評価で応援して頂けましたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ