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36.「決着」

「がぁっ!」


 ショートソードでナイフを迎撃しようとしても剣筋からするりと逃れて、左足に突き刺さる。


 これ程容易く硬化を貫通するとなると、魔導具なのかもしれない。

 もしくは、固有スキルの中に、威力増大効果も入っているのかも。


「『エリアウルトラヒール』!」


 マイカさんにより、一定範囲内にいる仲間全員の傷が完全回復し、ナイフも抜ける。


「デヒヒッ。いつまで持つかな? それっ」

「ぐぁっ! たあああああ!」


 回避しても追尾するみたいなので、被弾覚悟で攻撃するが。


「残念。また外れちゃった。デヒヒッ」


 不自然に攻撃の軌道が逸れる。


「スピガ!」


 スピドラの攻撃も同様で、一向に当たらない。


「ガアッ!」


 デリドリのナイフはドラゴンの硬い皮膚も貫き、マイカさんが回復魔法で治癒する。


「デヒヒッ」

 

 LV280にしては、強過ぎる。

 こっちはLV420であり、ドラゴンが負ける訳ないのだ。


 となると、何かカラクリがあるはず!


「ディテドラ!」

「ディテガ!」


 スピドラと入れ替わりでディテドラに感知してもらうと。


「ディテガ!」

「!」


 見つけた!


「そこだあああああ!」


 闘気を纏ったまま、結界の前方右隅に跳躍、上段に構えた剣を振り抜く。


 パリン。


 何も無かったはずの空間から、ドラゴンを象った漆黒魔石が出現した。


「デヒヒッ。よく見つけたな。だが、僕ちんは三大将軍最強。他の二人とは用心深さが違う。その魔石の破壊方法は、君たちには絶対に分からな――」

「ファアガアアア!」

「アイガアアア!」

「たあああああ!」

「おらああああ!」

「はあああああ!」


 バキッ

 ガラガラガラ


「………………へ?」


 入れ替わりでファイドラとアイドラがドラゴンブレスを吐き、その後タコ殴り。


 もうこれで四個目の漆黒魔石破壊だ。

 これだけ行えば、嫌でも慣れる。


「デ、デヒヒッ。中々やるじゃないか。でも、〝一個〟破壊したところで、意味はないんだ。この世界のどこかに隠してある〝残り三個〟も壊さないと、結界は消えないのさ」


 あー。

 残り三個も、ね。


「でも、君たちはこの結界から出られない。だから、絶対に結界は解除出来なぶべばッ!?」

「あ、当たりましたわ!」


 デリドリを棍棒で吹っ飛ばしたウルムルさんが、明るい声を上げる。


「な、何故!? 食らえ!」

「よっと。ハッ! 必殺のナイフも結界が無きゃ形無しだな」


 エルアさんが軽く避ける。


 いつの間にか、結界は消えていた。


「終わりだ!」


 距離を詰めて薙ぎ払うが。


「! 速いっ!」


 デリドリのスピードが格段に速くなった。

 見ると、胸部分が輝いている。


「デヒヒッ。〝用心深さが違う〟と言ったはずだ。四つの魔石が破壊された場合は、胸に埋め込んだ魔石が発動して、スピード特化型になるのさ」


 デリドリの姿が〝ブレ〟たかと思うと、全方位から声が聞こえてくる。


 どうやら、僕らの周囲を高速で移動しているようだ。


「デヒヒッ。さっきのナイフが効くことは照明されたからね。今度は直接、確実に急所を貫かせてもらうよ」


 再びデリドリが姿を見せた時は、既に僕の眼前で。


「死ね!」

「!」


 貫かれた。


「がはっ!」


 デリドリの心臓が。


「バ……バカな!」


 密かに入れ替わりで召喚しておいたスピドラの前足によって。


「覚えておけ! スピード勝負でスピドラに勝てる者なんて誰もいないんだ!」

「スピガ!」

「今度こそお仕舞いだ!」


 スピドラが前足を抜き、心の臓と共に魔石が砕かれたデリドリがふらつくが。


「デヒヒッ」

「!」


 突如デリドリが地面を叩き付けると、大地が揺れ、地割れが起きた。


「デヒヒッ。もう一度言うよ。僕ちんは〝用心深さが違う〟んだ。胸に埋め込んだ魔石が壊されたら、頭に埋め込んだ魔石が発動して、パワー特化型になるのさ」


 身体が一回り大きくなった彼は。


「デヒヒッ。叩き潰してやるぼべッ!?」


 上から叩き潰された。


「パワガ!」

「こ……こんなの……規格外過ぎどがぶッ!」

「パワガ!」


 入れ替わりで呼び出したパワドラが、両前足を組んで上から叩き付けると、一発ごとに地中に埋まっていき。


「ぐはっ! がぁっ! がはっ!」


 大きく振り上げ、渾身の一撃を食らわせると。


「パワガアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ぎゃあああああああああ! 魔王さまあああああああああああ!」


 デリドリは頭部の魔石を破壊されて地面を貫通、地下深くまで吹っ飛んだ。


 こうして、僕たちは三大将軍の最後の一人を倒した。

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