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34.「空中で危険物処理&最後の魔王軍幹部の居場所」

「これも破壊しておきましょう!」


 空中に静止する漆黒魔石を指差す。


 元々いた世界と違って、ここでは飛行機が飛んだりはしていないからぶつかって困る人はほぼいないだろうけど、残しておくと何か悪いことが起こるような気がするし。


 ちなみに、どうやら魔石は虚空に固定されているらしく、フライドラゴンの力でも動かせなかったので、ここで壊すしかない。


「ディテガ!」

「破壊する手順も、今までと同じみたいです!」

「良いけど、どうやって破壊するの?」

「ハッ! ドラゴンの上に別のドラゴンを召喚するのも無理があるしね」

「流石に重いでしょうし、そもそもわたくしたちもいますし、乗るスペースがありませんわ」


 少し考える。


「では、こういうのはどうでしょうか?」


 みんなの同意を得て、僕はディテドラと入れ替わりで、まずはファイドラを召喚する。


「宜しくね!」

「ファアガ!」


 漆黒魔石の〝上〟に。


「ファアガアアア!」


 器用にも漆黒魔石の上でバランスを取りつつ、巨体のファイドラが炎のドラゴンブレスを吐いて、自分の後足ごと漆黒魔石を焼く。


 炎に対して絶対的な耐性を持っているからこそできる荒業だ。


「ありがとう!」


 次に、ファイドラと入れ替えでアイドラを呼ぶ。


「アイガ!」


 今度は、漆黒魔石の〝上空〟に。


「アイガアアア!」


 念のためにマイカさんに防御魔法を掛けてもらったアイドラは、漆黒魔石に対して猛烈な冷気を吐いて冷やしつつ落下、魔石に着地した後は、先程のファイドラと同じく、ドラゴンブレスで自分の足ごと漆黒魔石を凍結させる。


「ありがとう! 今度は僕らの番です! たあああああ!」

「おらああああ!」

「はあああああ!」


 その背の上に漆黒魔石が来る位置までフライドラゴンに移動してもらい、闘気を纏った三人で斬撃と殴打を浴びせる。

 

 レベルアップを重ねてきたこともあり、程無くして、粉々に破壊出来た。


「ふぅ」


 一つ問題が片付いた。

 あとは、三大将軍の残り一人が、次の国で見つかると良いんだけど。


 まぁ、フライドラゴンはかなりスピードが速いし、また別の国に探しにいくとなっても、それ程時間のロスはないけどね。


※―※―※


 ファーリップ皇国皇都を出てから三時間ほどで、ホワイトシュレイ共和国の国境を越えた。


 元々高空だから涼しいというのはあったけど、北にあるためか、更に温度が低下した気がする。


「ディテガ!」

「え? 本当?」


 ディテドラが告げた内容に、僕は思わず目を瞠る。

 僕は、振り返ってみんなの顔を見た。


「三大将軍の最後の一人が、見つかったみたいです!」

「「「!」」」


 LV280のモンスター。

 そんなの、魔王軍幹部以外に有り得ない。


※―※―※


 フライドラゴンが降り立った場所は、ホワイトシュレイ共和国の東端にあるヴァウスブルームという村だった。


「ありがとうね、フラドラ!」

「フラガ!」


 フラドラには一旦消えてもらって、木製の柵に覆われた村の入口から中に入っていくと。


「デヒヒッ、来たか。情報通りだな」


 全身黒ずくめの男が、中央辺りにある家から出てきた。


 一人……?

 他にモンスターの気配はない。


 ……いや、モンスターだけじゃない。


 村が静か過ぎる!

 まさか……!?


「デヒヒッ、この村の人間どもは全員、僕ちんの部下が連れ去った」

「「「「!」」」」

「おっと、訂正だ。そういや、さっき見つけたんだった」


 そう言って男が家の中から引きずりだしたのは。


「……ひっく……パパ……ママ……」

「!」


 まだ幼い女の子だった。


「デヒヒッ。上手く隠れたもんだよな。でも安心しろ。すぐにパパとママに会わせてやる。そして、親子仲良く殺してやる」

「ヒッ!」


 悲鳴を上げる女の子を乱暴に掴む手を。


「おっ?」


 僕は斬り飛ばし、男の背後に着地。


 闘気に包まれたまま、再び跳躍して戻って来ると、抱き抱えていた女の子を地面に下ろして、ディフェンスドラゴンを召喚し、託す。


「少し離れた場所で、この子のことを守ってあげて」

「ディフェガ!」


 斬り飛ばされた男の腕が。


「デヒヒッ。速い。やるね」

「!」


 スーッと、何事も無かったかのように、元に戻る。


 ……再生能力持ちか。


「ディテガ!」


 ディテドラが感知した詳細を伝えてくる。


 名前:デリドリ。属性:闇。LV280。

 スキル:召喚。再生。

 固有スキル:アルティメットアタック(攻撃必中)、アルティメットプロテクト(回避率百パーセント)。


 ……え? 攻撃必中!?

 しかも、防御まで! 回避率百パーセント!? どういうことだ?

 再生スキルじゃなくて?


 食らってる……ように見えるだけで、実は回避しているってこと?

 いやでも、再生スキルもあるし……


「君と同じように、僕ちんも得意なんだよ、コレ」


 混乱する僕の眼前で、デリドリは無造作に手を翳した。


「ガアアアアア!」

「!」


 地面に描かれた魔法陣から、S級モンスターであるキングキマイラが出現。


「デヒヒッ、お手柔らかにね」


 デリドリは不敵な笑みを浮かべた。

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