28.「vs毒のガスポイ(魔王軍幹部)」
「ポヒャヒャ! 早くくたばれポイ!」
湖周辺を覆う結界内が紫色の毒霧で満たされていく。
飛んでいた鳥が死亡して落下、木々や草が瞬時に朽ち果て、湖が毒に染まる。
「くっ!」
マイカさんが必死に魔力を注ぎ込んで抗おうとしているものの、僕ら全員をドーム状に覆う防御魔法が徐々に侵食されていき、罅が入る。
教皇さんの結界が解けるまで、あともう少し掛かる。
このままじゃ防御魔法が持たない。
「ファイドラ! アイドラ!」
「ファアガアアア!」
「アイガアアア!」
入れ替わりで召喚した二体が、防御魔法内からドラゴンブレスを上空に向けて発射。
「ポヒャヒャ! 残念ポイ!」
だけど、虚空に浮かぶガスポイはひらりと身を翻して炎と冷気を避けてしまった。
ここからだと、遠過ぎて回避する余裕を与えてしまうようだ。
ん?
っていうか、〝回避〟した?
ウォタドラの水塊は避けなかったのに?
水だとダメージを食らわないけど、炎や冷気はそうじゃない?
どうやら、無敵ではないみたいだ。
「ポヒャヒャ! さっさと死ねポイ! 早く! 一秒でも早く!!」
それに、なんか余裕が無い?
焦ってる?
こんなに強力な力を持ってるのに?
「ディテドラ!」
「ディテガアアア!」
二体と入れ替わりで再び呼んだ彼に感知してもらう。
名前:ガスポイ。属性:毒。LV230。
いくら相性があると言っても、レベル差から考えて、ウォタドラの攻撃をもろに食らってるのに無傷なのはおかしい。
「ディテガ!」
「やっぱり!」
炎のファルガの時のように戦闘能力の底上げをしているんじゃないかと思ったら、やはりあった。
身体の中心に、毒魔石とでもいうべきものが埋め込まれている。
でも、固体じゃない。液体。大量の毒が圧縮されているものだ。
ディテドラによると、その毒は少しずつ減っているらしい。
魔石が新たに毒を生み出しているというよりも、元々の毒の量が決まっていて、そこから少しずつ使用している状態。
「それって、もしかしたら……!」
攻撃するためには、毒を使わなければならない。
けど、使い過ぎたらマズいってこと?
下手したら、自分の命にもかかわるくらい?
「チッ! あたいらには、指をくわえて見ていることしか出来ないのかい!?」
「歯痒いですわ!」
「リュウ君、ごめんなさい! もう持たないわ!」
光り輝く防御魔法が紫色に変色、あちこちに罅が入っており、崩壊寸前だ。
「大丈夫です! あの子、以前〝お腹空いてる〟って言ってたので!」
「え? お腹!?」
「『召喚! ポイズンドラゴン』!」
「ポイガアアア!」
ポイドラが出現した直後、金属の割れるような音と共に、防御魔法が砕け散った。
猛毒が全方位から襲い掛かる。
「ポヒャヒャ! 終わりポイ!」
「ポイドラ!」
「ポイガ!」
勝利を確信するガスポイの哄笑が響く中、ポイドラは思いっ切り吸い込んだ。
「すごい!」
「どんどん吸い込まれていきますわ!」
毒が僕たちに触れる寸前に、ガスポイの口に強引に引き寄せられ、吸い込まれていく。
まるでブラックホールのように全ての方向から吸引すると、あっと言う間に結界内の大気が浄化された。
更に。
「ポヒャ!? どれだけ吸うつもりポイ!?」
ガスポイが毒魔石を利用して放つ毒を、ぐんぐん吸い込んでいき。
「や、やめるポイ!」
吸い込んでいき。
「そ、それ以上は!」
吸い込んでいき。
「マ、マズいポイ!」
吸い込んでいき。
「に、逃げないと――ぶべっ! あ、そう言えば結界があったポイ!」
毒魔石を構成していた毒全てを吸引、逃げようとするも結界に阻まれるガスポイ、その身体を成していた毒すらも全て吸い込んで。
「魔王さまああああああああ!」
ガスポイは消滅。
三大将軍の二人目討伐を完了した。
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