27.「vsクラーケン」
「結界の持続時間はどのくらいですか?」
「い、一時間です!」
「一時間!? なんでそんな無駄に長いんですか!」
襲い来るクラーケンの触手を斬り落としながら、僕は教皇さんの答えに、覚悟を決める。
それまでこの結界内で逃げ続けられる訳がない。
みんなを守りつつ倒すしかない!
「ギュウウウウウウウ!」
クラーケンが咆哮を上げ、残り全ての触手が同時に伸ばされる。
「たあああああ!」
「おらああああ!」
「はあああああ!」
「『サンダーブレード』!」
ショートソード、大斧、棍棒、雷刃で二本ずつ斬り、または叩き潰す。
これで十本全て斬り落としたはず。
だが。
「ギュウウウウウウウ!」
「「「「!?」」」」
新たに生えた触手が襲来。
「くっ!」
僕らは必死に迎撃するが。
「しまった!」
斬り損ねた三本が、背後の子どもたちと、彼らを守る教皇さんに襲い掛かる。
「「「「うわああああ!」」」」
「「「「きゃああああ!」」」」
「『召喚! ディフェンスドラゴン』!」
「ディフェガアアア!」
ギリギリでディフェドラを呼ぶ出すことに成功。
同時攻撃して来た触手を、彼が全て弾き飛ばした。
「安心して! ディフェドラの防御力を貫ける攻撃なんて、この世に無いから!」
その間に、仲間たちが触手を斬り、叩き潰してくれたが、更にまた新たな触手が生えてくる。
「チッ! キリがないね」
僕は、水のスペシャリストを呼ぶことにした。
「『召喚! ウォータードラゴン』!」
「ウォオガアアア!」
湖に現れたウォタドラが、局地的に津波を起こして、近付いて来ていたクラーケンを湖の中央にまで押し戻す。クラーケンよりもずっと身体は小さい彼だが、水を操る力なら誰にも負けない。
「『アイスプレート』! みんな、私の氷に乗って! 触手を押さえこんで! そしたら、きっと何とかしてくれるわよね、リュウ君?」
「はい! 任せて下さい!」
流石マイカさんだ!
彼女が生み出した氷板に乗ると、スーッと高速で移動していく。
マイカさんの操る氷板のおかげで、僕、エルアさん、ウルムルさんは、湖の上空で次々と触手を斬り飛ばし、吹き飛ばしていく。
「ウォタドラ!」
「ウォオガアアア!」
その隙に、ウォタドラが虚空に浮かべた水を凝縮して、飛ばした。
二本の水矢はクラーケンの両目を貫く。
「ギュウウウウウウウ!」
しかし。
あれ? あんまり効いてない?
怒り狂ったクラーケンは、再度触手を生やして攻撃してくる。
それなら!
「『召喚! 感知ドラゴン』!」
「ディテガアアア!」
迎撃しながら、ウォタドラと入れ替えでディテドラを召喚、肩に乗せた彼に感知してもらう。
「分かった! ありがとう!」
「ディテガ!」
ディテドラと入れ替えで再びウォタドラを呼び出した僕は、狙いを一ヶ所に定めた。
「ウォタドラ!」
「ウォオガアアア!」
空中にて大量の水を凝縮、先程とは比べ物にならない程に巨大な圧縮水塊を生み出したウォタドラが、高速で飛ばす。
「ギュウウウウウウウ!」
防がんとして伸ばされた複数の触手を吹き飛ばしながら、目の上にある頭部のように見える部分の中心を穿つ。
「心臓ならどうだ?」
「……ギュ……ウウウ……!」
巨大な穴が開いたクラーケンは、断末魔の叫びと共に湖に沈んだ。
※―※―※
「おにいちゃん、おねえちゃん、ありがとう!」
「いえいえ。それよりも、クラーケンに止めを刺したのは、このドラゴンっていう生き物なんだ。世界最強のモンスターなんだよ? どう? 格好良くない?」
「うん、かっこういい!」
「ドラゴン、クラーケンたおしてくれてありがとう!」
「まもってくれてありがとう、ドラゴン!」
「ウォオガ!」
「ディフェガ!」
子どもたちの声に、ウォタドラとディフェドラが、それぞれ前ヒレと前足で鼻の下をこする。
「ディテドラも、ありがとうな」
「ディテガ!」
ディフェドラと入れ替わりで呼んだディテドラも、同様に。
ふっふっふ~。
何度見ても良いもんだ。
この光景を見るために頑張っていると言っても過言ではない。
「ウォオガ!」
「え? 変な物があるって?」
そう言ったウォタドラが、湖の中に潜って、浮上して来ると。
「ウォオガ!」
「これは!」
ズイポ村の地下で見つけたのと同じ、漆黒魔石だった。
やはりこちらも〝ドラゴンの形〟をしている。
「爆発とかしたらマズいし、出来るだけ早く処理したいけど……」
子どもたちもいる。
結界も、まだ解けない。
「ディテドラ!」
「ディテガ!」
ディテドラに感知してもらうと、以前と同じ方法で安全に破壊出来るとのことだった。
「マイカさん、念のために子どもたちと教皇さんに防御魔法をお願い出来ますか?」
「分かったわ!」
「『召喚! ファイアドラゴン! アイスドラゴン』!」
「ファアガアアア!」
「アイガアアア!」
入れ替わりで呼び出したファイドラとアイドラに、まずは焼き、その後冷やしてもらう。
「たあああああ!」
「おらああああ!」
「はあああああ!」
闘気を纏った僕ら三人で、斬って、殴る。
レベルアップしたおかげか、前回に比べてかなり手早く粉砕することが出来た。
「ふぅ~。これで安心です」
僕が額の汗を拭った。
直後。
「ポヒャヒャ! クラーケン討伐と魔石破壊で疲れている今がチャンスポイ! 死ねポイ!」
「「「「「!?」」」」」
突如、湖の上空に、全身が紫色の男が現れた。
どうやら、近くでずっと隠れて機会を窺っていたようだ。
男が無造作に翳す両手から、紫の霧が噴出される。
「「「「うわあああああ!」」」」
「「「「きゃあああああ!」」」」
「ディテドラ!」
「ディテガ!」
「致死性の毒です! みんな、一ヶ所に固まって下さい!」
「『エリアプロテクト』!」
二体と入れ替わりに召喚したディテドラで確認、呼び掛けると全員が集まり、マイカさんが半球状の防御魔法で僕らを包む。
「ウォタドラ!」
「ウォオガ!」
毒が到達する直前にウォタドラを召喚、先刻クラーケンを屠った水塊を上空に発射すると同時に、毒から守るためにウォタドラには消えてもらう。
空中に静止する男を吹き飛ばした。
が。
「ポヒャヒャ! この程度じゃ、三大将軍が一人、ガスポイは倒せないポイ!」
「「「「「!」」」」」
飛び散っていた紫色の液体が寄り集まり復活、何事も無かったかのように、ガスポイは口角を上げた。
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