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20.「砦防衛戦(モンスター1000匹)」

 見つけた!

 魔王軍幹部だ!


 それにしても、塔が四つだから、四天王みたいに四人だと思ってたのに、三大将軍――つまり、三人なのか。


「その名も炎のファルガ。我が国が誇る近衛隊長は、LV100で、闘気を纏うと150だ。だが、ファルガはそれ以上だ。ギマルタスがスキルで見たところ、LV210とのことだった。更に、奴は実力者を目にすると、周囲のモンスター共々、炎で焼き払うのだ」

「仲間ごと……!?」

「酷いわ……!」

「うむ。そのせいで、何人もの手練れを失った。しかも、ただ殺すだけでなく、奴らは兵士を何人も拉致している。厄介な敵だが、頼まれてくれるか?」


 僕は、胸を張って答えた。 


「はい! 大丈夫です! 僕には、心強い仲間たちと、何と言っても最強のドラゴンがいますから!」

「頼もしいな。して、ドラゴンとは?」

「僕が召喚する最強のモンスターです」

「なるほど。其方は召喚士だったな。ドラゴン……か。分かった」


 頷いた皇帝さまが、傍に控える近衛隊長さんに目配せをすると、彼は後方にある台座に置いてあった長剣を取り、掲げた。


「リュウ殿。良ければ、これを受け取ってもらえないだろうか」

「それは……?」

「聖剣だ」

「!」


 格好良い!

 男なら誰だって憧れる最強の剣!

 ……だけど……


「僕にですか……? もう僕は勇者パーティーではないですし、そもそも召喚士なんですが……」

「ギマルタスから聞いた貴公のレベルと、何よりも理不尽な目に遭いながらも世界を救わんとするその心意気が、この剣に相応しいと思ったのだ」

「!」


 滅茶苦茶嬉しい!

 レベルはドラゴンのおかげだけど、それでもすっごく嬉しい!


「……正直ものすごく嬉しいですし、大変光栄です。……が、申し訳ありませんが、お断りさせて下さい」

「ほう。何故だ?」

「小柄な僕が扱うには長すぎるというのと、女王さまから既に素晴らしい武器を貰っていますので……」

「なるほど。分かった」

「申し訳ありません……」

「いや、気にしなくて良い。では、南部の砦の件、頼んだぞ」

「はい!」

「そうそう、これを持って行くと良い。門兵に見せれば、王命を受けた者だと証明できる」

「ありがとうございます!」


 近衛隊長さんとは逆側にいる宰相さんらしき人から、金属製の銀色のカードを受け取った。

 多分魔導具になっていて、見せれば簡単に身分証明が出来るんだろう。


「見事成し遂げた際には、報告しにきて欲しい」

「分かりました!」


 こうして僕たちは、王城を後にした。


※―※―※


「また宜しくね」

「スピガアアア!」


 馬車の申し出を断り、帝都の南門を出た僕たちは、今日もスピドラの背に乗り、街道を通って南部前線へと向かう。


「それにしても、聖剣って二本もあったんですね!」

「そうね、私も一本だけだと思っていたわ」

「ハッ! 貰えるもんは貰っときゃ良かったのによ! まぁ、そこもまたあんたの可愛いところではあるけどさ」

「意地汚いですわよ。こんなエルフは絶対にやめておいた方が良いですわ、リュウさま。わたくしのような、心も身体も綺麗な女の方がずっとオススメですわ」

「何だと!? 喧嘩売ってんのかい、この淫乱狼女!」

「ほら、二人とも喧嘩しないの!」


 うん。今日もみんな仲良しだ。


 草原の中を走っていき、いくつか遠くに森を見つつ、三時間ほど経つと。


「わぁ!」

「大きいわね!」


 山脈の中にある砦が見えた。


 岩山と岩山の間――谷に作られた砦は、その両側の岩壁を上手く利用した、天然の要塞と呼べるかもしれない。


 既に、戦闘の音や声が小さく聞こえる。


 砦の城門に辿り着いた僕たちは、スピドラから下りて、消えてもらった後、「さっきの生き物は一体……!?」と混乱する門衛二人に対して、「皇帝さまの勅命で、援軍として来ました!」と、貰った金属製のカードを渡した。


「それは心強い! 宜しく頼む!」


 銀色のカードを、読み取り機のような魔導具に接触させて、金色に光り輝くのを確認した彼らは、笑みを浮かべた。


 憔悴しきっていた彼らの顔に、生気が戻る。


 砦の中に入れてもらった僕らは、中にいた兵士の一人に案内された。


「俺はイガドレだ。宜しく」

「リュウです! よろしくお願いします!」


 まずは全体の状況を確認するため、屋上へと向かう。


「見てもらえば分かるが、状況は絶望的だ。何も手を打たなければ、今日中にこの砦は落ちる」


 イガドレさんいわく、千匹の敵に対して、こちらはあと三百人ほどしか残っていないという。


 少数であるため、倒すというよりも、進軍を出来るだけ遅らせることを意識して戦っているようだ。


 ちなみに、既に倒した千匹と今残っている千匹、合わせて二千匹の中には、A級モンスターは数体のみで、あとはB級以下だったらしい。


「だが、A級は一匹いるだけでも十分脅威だからな」


 ゴーレムやトロール、それにサイクロプス、ゴブリンキングなどは、単体でも、その巨躯で砦を破壊しかねないため、多大な犠牲を払いながら、まずはA級を排除することを優先したという。


 残りは全てB級以下で、A級に比べればかなりマシだが、あまりにも数が多過ぎて、半分に減らすまでに甚大な損害を受けたとのこと。


 砦が破られれば、そこから真っ直ぐに北上すれば帝都だ。

 国家存亡の危機である。何としてもここを死守しなければならない。


 もちろん、ガルティファーソン帝国の国軍がこれだけ、ということはない。


 だけど。


「事情があってな」


 イガドレさんが言うように、ギリギリまで援軍を出したくない事情があった。


 そもそも、帝都の防衛が手薄になるような事態は避けたい、というのが一つ。


 更に。


「四半世紀前の、ロドリアス王国での事件を聞いてしまうとな」


 二十五年前にロドリアス王国にて、〝国内の〟複数のダンジョンから千匹のモンスターが出現、王都へ攻め込もうと、西の城門に迫ったことがあり、それを知っているため、南端の国境線上にある砦に大量の兵力を割いてしまうと、その隙に国内のダンジョンからモンスターの別部隊が現れて帝都を襲撃した場合に対処できないから、という理由もある。


 加えて。


「お前さんたちには悪いが、他国を百パーセント信用して良いのかってこともある」


 四ヶ国は不可侵条約を締結してはいるものの、モンスターの軍勢に押されている隙に乗じて他国が攻め入って来る可能性がゼロかと言われれば、そうとも言えないからだ。


「冒険者にも簡単に力を借りる訳にはいかないんだ」


 国軍ではなく冒険者たちに頼めないかという意見もあるが、冒険者たちも、出来れば帝都にいてもらい、何かあった際の防衛に回って欲しいと思っているので、出来るだけ派遣したくないのだ。また、報酬で折り合いがつかないという問題もある。


 そもそも、〝モンスターの大軍の殲滅作戦〟に参加したいなどという奇特な冒険者は、少ない。しかも今回は、魔王軍幹部であるS級モンスターすらいる。


「だから、お前さんたちには、本当に感謝している! ありがとよ!」

「いえいえ!」


 そのような理由があるからこそ、僕たちのように、自国の軍隊や冒険者ギルドに所属している訳ではなく、遊撃部隊として動けるような冒険者パーティーは理想的な存在であり、是非とも力を借りたいと思っていたのだろう。


※―※―※


 そんな会話を重ねるうちに、屋上に到着した。


「「「「!」」」」


 死屍累累たるありさまに、一瞬言葉を失う。

 大規模な戦闘であることから、覚悟はしていたが。


「……酷い……!」


 砦の南側に見えるは、多数の兵士の死体と、千匹のモンスターの死骸。

 肉を斬られ血を流し、折り重なっているそれらを踏み越えて、なおも千匹残るモンスターと戦う三百人ほどの人間たち。


 入り混じる雄叫びと怒声と悲鳴。

 それは、地獄と呼ぶに相応しい光景だった。


「『サンダーブレード』!」

「「「ギャアアアアアアア!」」」


 隙を狙って上空から急襲せんとするハーピー三匹を、マイカさんが雷刃で串刺しにして倒し、落下させる。


「っと、流石だな!」


 そう言いながらも、ちゃんと剣を抜き構えていたイガドレさん。

 防衛戦で心身ともに擦り切れているだろうに、すごい集中力だ!


「じゃあ、僕たち、助けにいきますね!」

「すまんな! じゃあ、城門を開けないとな。下に下りて――」

「いえ、大丈夫です!」

「え?」

「マイカさん、失礼します!」

「きゃっ! リュウ君!?」

「行きますよ!」

「きゃああああ!」


 闘気を纏った僕は、マイカさんをお姫様抱っこして外壁の縁に立ち、そこから跳躍した。


「ハッ! 常識破りの派手な登場で良いじゃないか!」

「リュウさま、わたくしもお姫様抱っこして欲しいですわ!」


 エルアさんとウルムルさんもすぐに続く。


 戦場のど真ん中に着地した僕は、マイカさんを下ろし、周囲の兵士たちに叫ぶ。


「皆さん、助けに来ました! もう大丈夫です!」

「おお、援軍か! って、え!? 今空から!?」


 と同時に。


「『召喚サモン! ラックドラゴン』!」


 最強のサポートドラゴンを召喚。


「ラクドラ、みんなを援護してあげて!」

「ラクガアアア!」


 これで、ここにいるB級以下のモンスターたちは怯えから動きが鈍り、幸運値アップで、攻守ともに兵士たちは戦いやすくなるはずだ。


「みんなは、モンスターたちをお願いします! 僕は、ボスを倒しますので!」


 僕は、再び南に向けて大きく跳躍した。


「分かったわ!」

「ハッ! 任せておきな!」

「うふふ。かしこまりましたわ」


 空中でチラリと後ろを振り返ると、魔法と大斧、それに棍棒によって、次々とモンスターが倒されて行くのが見えた。


 集団から離れた場所に着地。


 僕の目の前には、身体が炎で出来た男が立っていた。


「三大将軍のファルガだな!」

「ワファファ! そうファイ!」

「なんでこんなことするんだ!」

「ワファファ! 楽しいからに決まってるファイ! 人間なんて全部燃やしちまえば良いファイ!」


 分かり合えるだなんて思ってなかったけど……

 やっぱり、コイツは絶対にここで倒さなきゃ!


「あんた強そうファイ! 燃えるファイ! 俺と戦えファイ!」


 ファルガは楽しそうに笑った後、首を傾げる。


「でも、後ろのも結構強そうファイ! じゃあ、まとめて」


 彼は、無造作に手を翳すと。


「『アルティメットフレイム』!」

「!」


 戦場全体を呑み込まんとする巨大な炎が放たれた。

 敵も味方も全員を焼き尽くすつもりだ!


「『召喚サモン! アイスドラゴン』!」

「アイガアアア!」


 慌てて召喚したアイドラが、氷のドラゴンブレスで猛炎を相殺した。

 

 ふぅ、危なかった……


「ワファファ! なかなかやるファイ! どれどれ。LV495!? いや、今は闘気を使ってるから、元はLV330ファイ。どっちにしろファイ! そりゃ強いはずファイ! ワファファファ!」


 何がおかしいのか、ファルガは炎で出来た腹を抱えて笑う。


「俺はLV210ファイ! LV300越えの冷気を存分に味わってみたいファイ! その変な生き物でやってみろファイ!」


 ……何を考えているんだろう?


 でも、チャンスだ!

 敵軍の大将を倒せば、兵士たちの士気は高まる!

 

「アイドラ!」

「アイガアアア!」


 吐き出された冷気のドラゴンブレスが、ファルガに襲い掛かった。


 そのままアイドラは放出し続ける。


 全身の炎が、少しずつ小さくなっていったが……


「……アイ……ガ……」


 ……え?


 全力で吐き続けたアイドラが、冷気を切らせ、肩で息をする。 


 再び最初の大きさに戻ったファルガは。


「どうやら、そいつの技でも俺は倒せないみたいファイ!」

「!」


 紅蓮の炎で出来た口角を上げた。

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こんばんは。 >俺はレベル210ファイ! ホントにその申告通りだったのかなぁ? 昔F○Ⅳで自分にライブ○をかけて雷弱点アピール→信じて雷魔法当てたら「引っ掛かりおったな!」と自分にヘイ○トかけてサン…
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