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18.【一方勇者パーティーは(4)】

「まぁまぁ、うちは既に前衛二人いるんだし、被らなくて良かったじゃないですか」

「……チッ……」


 狙っていた美人冒険者二人を既にリュウに取られていたことに激怒したアキラは、トモユキに慰められてようやく落ち着いた。


 好みの女性を入れることを優先し過ぎたあまり、パーティーバランスという意識が頭から抜けていたのだ。


「ガハハハッ! では、あとは補助系のジョブを入れるか?」

「それが良いと思います。どうですか、リーダー?」

「……まぁそれしかねぇだろうな」


 アキラは、LV53のシーフとLV52の召喚士の冒険者を更に加えた。

 もちろん、どちらも美女だ。


 人数が増えるほど儲けの取り分が少なくなるため、本当は召喚士だけのつもりだったのだが。


「索敵に使うモンスターは、もちろんトラップも発見出来るよな?」

「あたしのデビルウルフが出来るのは、索敵だけよ」


 と言われたため、仕方なくもう一人加入させる羽目になったのだ。


 チッ! この役立たずが!

 あのクソガキが召喚するトカゲですら出来たってのに!


 こうして、総勢七名という大所帯となった。


「早速だが、今から馬車で西塔に向かう。大体一日掛かるから、野営しつつ明日の昼につく予定だ」


 勇者として、そしてリーダーとして格好良く決めたアキラだったが。


「え~」

「明日にしようよ~」

「野営とか、肌に悪いし~」

「だよね~」


 女性陣から反対されて、ブチ切れそうになった。


 このクソビッチどもが!

 俺様は勇者だぞ! てめぇらは、俺様の言うことを黙って聞いとけば良いんだよ!


 怒りが顔に表れていたらしく、「駄目ですよ! また辞めちゃいますよ!」と、トモユキに耳元で制止されて、何とかアキラは抑え込む。


 クソッ!

 あのクソガキが新たに加えた貴族令嬢は、その立場からして、出立前に女王に謁見しにいく可能性が高い。


 となると、パーティー全員で行くだろうし、A級二人S級一人を有するパーティーを見た女王は、アイツらにも魔王討伐を依頼するかもしれない。いや、既に依頼した後かも。


 なら、今すぐにでも向かわないとな!

 俺様は、あのクソガキだけにはぜってぇ負けらんねぇんだよ!


「頼むよ、みんな。一刻も早く世界を救いたいんだ」

「お願いします」


 珍しくアキラが人に頼み、トモユキが懇願すると、彼女たちは折れた。


「もう~」

「しょうがないな~」

「じゃあ、ちょっと待ってて~」

「準備して来るから~」


 「ガハハハッ! 何とか説得出来たな」「ああ」と安堵していたところ。


「おせぇよ! 何してやがるんだ、あのビッチども!」


 予想以上に待たされ、結局ブチ切れた(が、本人たちには言わなかった)。


※―※―※


 野営を挟みつつ、二頭立ての幌馬車で一日かけて国の東端へと向かう。


 「あたし、御者なんて出来な~い」「私も~」という女性たちに苛々しながらも、男三人で交代しながら何とか馬車を御する。


 翌日の昼、街道の先に見えてきたのは、毒汚染地域と、女王に避難の呼び掛けを頼まれていたズイポ村だった。


「ババアの頼みなんか知ったこっちゃねぇ。んなことより、こっちだ! 塔を攻略すりゃ、あのババアもギャアギャア言わねぇだろうが!」


 干し肉を齧りながら、アキラは行き先を決めた。


※―※―※


「がぁっ! 早く回復しろよ!」

「さっきから攻撃を食らい過ぎよ! どんだけ回復魔法使わせるのよ!」

「もっと魔法で敵の数を減らせよ!」

「それは前衛の仕事でしょ! A級モンスター相手に高火力魔法連発してたら、魔力が持たないわよ!」

「デビルウルフとかいうモンスターにも戦わせろよ!」

「無茶言わないで! 確かにあたしが持ってる中では一番強いけど、それでもB級だから、A級なんかと戦わせたらすぐに殺されちゃうでしょ!」


 トロールの棍棒による一撃で吹っ飛ばされたアキラは、苛立ちを爆発させる。


 少し手前で馬車を停め、近くの木に馬の紐を縛り付けた上で西塔に入ったアキラたちは、A級モンスター相手に苦戦していた。


 B級モンスターに比べて手強いのは当たり前だが、理由はそれだけではない。

 召喚士のモンスターによって索敵は出来るため、先手を取られることはないが、純粋な戦闘能力が十分ではないのだ。


 リュウがいた頃に比べて、やはりモンスターたちの動きが良く、攻撃を防ぐことが難しく、逆にこちらの攻撃がなかなか当たらない気がする。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……あともう少しだな……」


 それでも、何とか六階に辿り着いた。

 途中まで進んで行くと。


「みんな、待って!」


 シーフが手で制する。


「この先にある床、全部トラップだわ。跳躍で何とかなるような距離じゃない」

「解除出来るか?」

「やってみるわ」


 当たり前だ。

 「B級モンスターだったらなんとか。A級は無理よ」とか言って、ろくに戦闘も出来ない癖に、トラップすら解除出来なかったら、何のためにパーティーにいるんだてめぇは?


「これ、二つのトラップが連動してるわ……かなり複雑ね……でも……!」


 額の汗を拭いながら、シーフは床を慎重に弄り、作業を続けると。


「解除出来たわ! これで通れるはずよ!」


 明るい声を上げた。


「よし、行くぞ」


 アキラがシーフの横を通り、前に一歩を踏み出す。


 カチッ


「は?」


 と同時に、解除されていなかった〝三つ目〟のトラップが発動。

 足下に出現した巨大な魔法陣により、全員塔の入口前へと空間転移させられた。


「何やってんだてめぇ!」

「しょうがないでしょ! 二つのトラップを解除したら、三つめが発動するとか、誰が分かるのよそんな高度な罠!」


 怒りのあまりプルプルと震えるアキラを、「まぁまぁ。きっと次は解除してくれますよ」と、トモユキが宥める。


「当然よ! 今度こそ三つめも解除してみせるわ!」

「ケッ! その言葉忘れるんじゃねぇぞ」


 アキラたちは、再び塔に入った。


※―※―※


 六階に着くと。


「なっ!?」


 例のトラップがあった場所の右側の壁に、出入口が出来ていた。


 まさか……

 また嫌な予感がする。


 中に入り、その通路を使うことでトラップを回避したアキラたちは、最上階へと辿り着いた。


「ガハハハッ! 何者かが既に倒してるな!」


 ゴブリンキング五匹が殺されていた。


「宝箱まで……! あのクソガキ、ふざけんなよ!」


 いつの間にか追い抜かれていたという事実に、アキラは空の宝箱を蹴飛ばした。


※―※―※


 魔法陣で入口へと移動したアキラは、怒りを抑え、何とか思考を切り替えた。


「仕方ねぇ。せめて、村だけでも避難させてやるか」


 ババアのお使いは二つ。

 その内一つをクソガキに取られたが、もう一つを俺様たちが実行すれば文句ねぇだろ。


 だが。


「無い……だと!?」


 毒汚染地域に接していた村が、消えていた。

 その代わり、少し離れた所に、村らしきものが見える。


「おいおい、冗談だよな……?」


 半信半疑といった様子で、その村に行ってみると。


「避難の件ならもう済んだぞ! 村の場所が変わったからな! リュウさんたちのおかげだ! 彼らには本当に感謝している!」

「全部持ってくんじゃねぇよ! あのクソガキがあああああああああ!」


 村長の言葉に、アキラは怒髪天を衝いた。

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