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16.「意外な策で村の悩み解決&西塔攻略」

「〝この場所から村が消える〟だと!? そんなの、良い訳ないだろうが!」

「あ、言葉足らずでした。すいません……。〝ここから村を移動させても良いですか?〟と言いたかったんです」

「村を移動? 一体何を言って――」

「見てもらうのが手っ取り早いと思うので、やっちゃいますね。『召喚サモン! アースドラゴン』!」

「アスガアアア!」

「!?」


 前回のレベルアップ時に召喚出来るようになっていたアスドラを召喚。


 巨大なドラゴンの出現に驚く村長さんと周りの人々を尻目に、アスドラは地面を掘ってあっと言う間に地中へと潜っていく。


 アスドラは、〝地面〟に関するスペシャリストだ。

 だから、あれだけの巨体が穴を掘り、地中に消えても、砂粒一つ舞い上がらない。


 まるで溶けるように地下に消えたアスドラは、作業に取り掛かった。


 村全体を包むように、地面に円形の〝罅〟が入る。


「流石にこの規模だと、ちょっと騒音と振動がありますけど、どうかご容赦ください」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「ワシは……夢を見ているのか!?」


 村が、地面ごと動いていた。


 にもかかわらず、前方の土が盛り上がるでもなく、後方に巨大な穴が開くでもない。


 村の真下で、土地全体を背負ったアスドラが周囲の土にも干渉、自在に操りながら土中を泳ぐ。


「よし、これで完成です! これで、あと十年は持ちますよ!」

「………………」


 西に百メートルほど移動した地点で、アスドラには止まってもらった。


※―※―※


 最初は何が何だか分からなかった村長さんと村の人たちだったけど。


「毒から少しだけ離れてる!」

「でも、離れ過ぎてはいないわ!」

「これだけ距離を取ったんだから、もう王都の連中に文句は言わせない!」

「面倒くさいことが一つ減った!」

「これで商売に集中できるわ!」


 毒汚染地域から適度に距離を取り、しかし遠ざかり過ぎてはいないという絶妙な距離に、喜んでくれた。


「皆さん、彼が! ドラゴンが村を動かしてくれたんです!」

「その生き物が!? すごいのね!」

「はい! ドラゴンはすごいんです!」

「ドラゴンと言うのか。初めて見たが、不思議な力を持っているんだな!」

「いやぁ、大したもんだ!」


 ふっふっふ~。

 どうだ、すごいだろう!


 ドラゴンを褒めたたえる人たちに、胸の底から喜びが湧き上がってくる。


「ありがとう、アスドラ! 助かったよ!」

「アスガアアア!」


 一仕事終えたアスドラは、胸を張り得意顔をすると、消えた。


「面倒くさくなくなって良かっただなんて……本当は、村の人たちの健康のためにやったのにね」

「ハッ! 良いじゃないか。喜んでるんだから」

「そうですよ! ゼロ距離よりかは、百メートルの方が、ずっと良いはずです!」


 ちなみに、〝魔法で解毒して、顔や身体は水性絵の具で紫色に塗る〟という提案もしたんだけど、「そんなお客さんを騙すような真似はしない」と、断られてしまった。


 う~ん、プロ意識よりも健康の方が大事だと思うんだけどなぁ。


「何と、これから西塔へ? 攻略した後には、是非ともまた来てくれ! 改めてお礼を言いたい!」


 村長さんは満面の笑みで、そう言ってくれた。


※―※―※


 村を出て、左に見える西塔へと四人で歩いていく。


「みんなで頑張って、一刻も早く魔王を倒しましょう! そうすれば、毒汚染地域自体が無くなって、ズイポ村の人たちも健康になりますよね!」

「そうね!」

「そうなると彼らの事業は成り立たなくなるのですけれど……仕方ありませんわね」


※―※―※


 石造りの巨大な塔。

 西塔は、その大部分が毒汚染地域に接していたが、入口付近はまだ大丈夫だった。

 なお、どちらも魔王が生み出したものだからか、毒によって西塔が溶かされている様子はない。


 コポコポと毒の気泡が弾け、湯気が漂っているが、マイカさんの防御魔法のおかげで、今の所は何ともない。


「『召喚サモン! ラックドラゴン』!」

「ラクガアアア!」

「さぁ、行きましょう!」


 ラクドラを加えた僕らは、西塔に入った。


※―※―※


「たあああああ!」

「おらああああ!」

「はあああああ!」

「『サンダーブレード』!」

「「「「ギャアアアアアアア!」」」」


 鬼のような見た目のオーガ四匹それぞれを、ショートソードで首を落とし、大斧で一刀両断、棍棒で頭部を叩き潰し、雷刃で貫く。


 B級に比べて、A級モンスターはかなり強い。

 

 ゴーレム、キマイラ、トロール、サイクロプス、ゴブリンキング、デビルアイスベアなど、いずれも、ベテラン冒険者でも手こずる敵だ。


 けど。


「おらああああ!」

「はあああああ!」


 みんな強過ぎて、相手にならない。


 当たり前だ。


 四人中三人が闘気を使える冒険者パーティーなんて、聞いたことがない。


 その瞬間、僕、エルアさん、ウルムルさんがそれぞれLV270からLV405に、LV91からLV136に、LV84から126になるのだ。


 まぁ、僕の場合は、レベルが指し示すのはほとんどドラゴンの力であって、僕自身はまだまだ弱くて、二人に辛うじてついて行っているという感じなんだけどね。


 僕と違ってパワー型の美しき前衛二人は自信満々で、プラチナブロンドのポニーテールと焦げ茶色の長髪を振り乱しつつ、出現と同時に蹴散らしてくれるので、何の問題もなく進んでいけた。


 ありがたい。

 本当にありがたいことなんだけど……


「ドラゴンの見せ場が全く作れない……」


 既にドラゴンのすごさを知っている仲間たちにも、やっぱり彼らの格好良いところを見せたい!

 っていうか、個人的に僕が見たい!


 のだけど、みんなが強過ぎて出番がないのだ。


「ラクガ!」

「うん、もちろんラクドラには感謝してるよ!」


 ラクドラに、索敵・罠の発見・荷物も持ってもらって、更には幸運値まで上げてもらっているから、ちゃんと活躍はしているんだけどね。


 やっぱり、殴ったり蹴ったり炎吐いたり、派手に戦うところも見たいんだよなぁ。


「『召喚サモン! 感知ディテクションドラゴン』!」

「ディテガアアア!」


 せめて、二体のドラゴンを常時召喚し続けて、戦闘以外の場面で活躍してもらおうと、僕は小さなディテドラを肩の上に乗せた。


※―※―※


 二階、三階と上がっていく度に、僕らに明確な変化が訪れた。


「また長くなりました!」

「ハッ! あたいもだよ!」


 僕とエルアさんが闘気を扱える時間が、どんどん伸びていったのだ。


 最初は数秒だったのが、A級モンスターたちと何度も戦っている内に、十秒、二十秒、三十秒と、一分、二分と、面白いように伸びていく。


 まだまだ弱い僕だけど、これで少しはマシになったかな?

 出来るだけみんなの足を引っ張らないようにしたいし、ドラゴンの見せ場を作る前に、術者がやられちゃいけないもんね!


※―※―※


 六階を半分ほど攻略した頃のことだった。


「ラクガ!」

「ディテガ!」

「! みんな、動かないで下さい!」


 ラクドラとディテドラが同時に警告した。


 この先に、罠があると。


「回避出来そう?」

「ラクガ……」

「ディテガ……」


 首を振る二体。

 どうやら、難しそうだ。この先、長い区間が全部罠になっていて、飛び越えたりも出来ないみたいだ。


 う~ん、どうしよう?

 彼女たちも、解除は出来ないんだよね。


 すると、顔を近付けて、何か話し合っていたラクドラたちが、僕を同時に見た。


「ラクガ!」

「ディテガ!」

「え? こっち? 右の壁?」


 二体が指し示すのは、何の変哲もない石壁の一点。


 そこを押すと。


「「「「!」」」」


 壁の一部がせり上がり、長方形の出入口が出来た。


 中には、別の通路が見える。


「ラクドラちゃんとディテドラちゃん、すごいわ!」

「ラクガ♪」

「ディテガ♪」


 二体が目を瞑り鼻の下を擦る。


 新たな通路を進んでしばらくすると、元の通路へと道が繋がった。

 

※―※―※


「たあああああ!」

「おらああああ!」


 最上階の九階に着くまでに、僕とエルアさんは、ウルムルさんと同じく、最大五分間まで継続して闘気を身にまとうことが出来るようになった。


 戦力アップした僕らは、いよいよボス部屋の重い扉を開ける。


 でも。


「え!?」

「なんで……?」


 僕らが目にしたのは、予想外の光景だった。

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