表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/15

1.プロローグ

「リュウ。てめぇをこの勇者パーティーから追放する」


 突然の宣告が、薄暗いダンジョンに響く。


 慌てて僕は、勇者でありこのパーティーのリーダーでもあるアキラさん(闇沼やみぬまあきら)に聞き返した。


「な、なんでですか? 僕、何か悪いことしましたか!?」

「あ? 分かんねぇのか? てめぇがクソみてぇにレベルが低いのみならず、トカゲしか召喚出来ない無能だからに決まってんだろうが!」

「そ、それは誤解です! 確かに僕はレベルが低いですが、何度も言うように、トカゲじゃなくてドラゴンです! 世界一強くて格好良いモンスターです!」


 必死に訴える僕とは対照的に、アキラさんの目はまるで汚物でも見るかのようだ。


「なぁ、てめぇら。聞いたことあるか? 〝ドラゴン〟なんつーモンスターを?」

「ガハハハッ! 少なくともこのタイガは、聞いた事がないな」

「クックック……ワタシもです。何とも珍妙な名前ですね」


 タンク役の戦士タイガさん(鬼頭城きずじょう大牙たいが)はその巨体を揺らし、弓使いのトモユキさん(遠白氷とおはくひょう智之ともゆき)は、眼鏡の位置をクイッと直す。


「マイカはどうだ?」

「私も知らなかったわ。ただ、モンスターではないかもしれないけど、リュウ君が言うんだから――」

「だとよ! てめぇ以外誰も知らねぇじゃねぇか!」


 賢者のマイカさん(和泉沢いずみさわ舞唯花まいか)の発言を、アキラさんが遮った。


 僕は「でも! 本当なんです!」と、いつものように左上を見上げるが、そこで気付く。


 そうだ。ついさっき、アキラさんに「目障りだ。そいつを消せ」と言われたから、今はドラゴンはいないんだった。


 僕は、いつもパーティーを支えてくれていた虹色のドラゴンの姿を思い出す。


「それに、ドラゴンはただ強いだけじゃないんです! 何回も説明しましたが、彼女――ラックドラゴンは、荷物持ちはもちろん、索敵も出来て、事前に罠も発見出来るんです!」

「荷物持ちなんて、誰でも出来るって言ってんだろうが。それに、索敵や罠の発見なんて犬一匹で事足りる」

「でもドラゴンがいたおかげで、敵のモンスターたちはみんな怖がって動きが鈍っていたじゃないですか!」

「は? ちょっと図体がでかいだけのトカゲにビビるわけねぇだろうが」

「じゃ、じゃあ、ラックドラゴンがいなくなっても良いんですか? 彼女のおかげで、パーティー全体の幸運値が上がっていたんですよ?」

「ギャハハハハ!」

「ガハハハッ!」

「クックック」

 

 僕の問いに、彼らは笑い出した。

 思わず唖然とする。


「言うに事欠いて、トカゲが幸運値だぁ?」

「ガハハハッ! 何度聞いても笑えるな、お前の冗談!」

「クックック……どうやら貴方の脳味噌は予想以上に腐っているらしいですね」


 散々好き放題言った後、アキラさんは胸を張ってドヤ顔をする。


「俺様は勇者だ。俺様が幸運なのは当たり前だろうが。俺様がいれば敵も罠もすぐ見つけられるし、このパーティーは常に幸運なんだよ!」


 なんだよ……

 なんだよそれ!?


 確かに、異世界召喚されてからの一年間で一気にレベル50を超えたみんなと比べて、僕自身は半年前に10になった後は全然変わらなくて弱いし何も出来ないから、足手まといと言われても仕方がない。


【基本ステータス】

 LV 10

 名前 リュウ

 年齢 15歳

 性別 男

 種族 人間

 職業 ドラゴン召喚士

 称号 特に無し


【スキル】

 召喚<LV 1>


【耐性】

 特に無し


 でも、ドラゴンは違う!

 ドラゴンは、史上最強!

 格好良くて、気高くて!


 小学校の頃からずっと、僕が憧れている存在なんだ!

 

 その存在を馬鹿にするだなんて……!

 

 絶対に許せない……!


「訂正して下さい……!」

「あ?」

「ドラゴンはすごいんです! なんで分かってくれないんですか!?」

「うぜーんだよ、離れろ」

「がはっ!」


 掴み掛かる僕を、アキラさんは殴り飛ばした。


「リュウ君!」


 駆け寄ろうとしたマイカさんを、アキラさんが鋭く制する。


「おっと、助けようとするのは無しだ。さもないと――殺しちまうぞ?」

「!」


 いつの間にかアキラさんは、起き上がろうとする僕に聖剣を突き付けていた。


「コイツはここに置いていく」

「何考えてんのよ!? 最下層なんかに一人置いていかれたら――」

「モンスターどもにやられちまうかもな」

「だったら――」

「それ以上喋るな。余計なことは一切するな。その瞬間、モンスターじゃなくて俺が殺す」

「!」


 その目は本気だった。

 どこまでも暗く、冷たい目。


「………………」

「それで良い。最初からそうしとけよ」


 押し黙ったマイカさんを見て、アキラさんは楽しそうに口角を上げる。


「じゃあな。役立たずのトカゲ召喚士。それにしても、ただでかいだけのトカゲを最強のモンスターだとか、本当に愉快なクソガキだぜ! ギャハハハハ!」

「ガハハハッ! 今度はちゃんと使える奴を仲間にしよう! こんなカスじゃなくてな!」

「クックック……道化としては及第点でしたよ。冒険者としてはゴミ以下でしたが」


 笑い声が遠ざかっていく。


 僕は、怒りに任せて立ち上がった。


「くそッ……!」


 魔王討伐のために、背中を預け合う仲間だと思ってたのに。


「くそッ……!」


 ドラゴンのことを知らないみたいだし、それならしょうがないかなと思って、信じてもらえなくてもずっと我慢して来たのに。


「くそッ……!」


 「余計なことは一切するな」「邪魔だから、後衛で大人しくじっとさせてろ」って言うから、ドラゴンを直接戦闘に参加させることは無かったのに。


「ちくしょうッ……!」


 ドラゴンは、本当は最強なのに……!

 本当は、すごく格好良いのに……!


「……ちく……しょうッ……!」


 気付くと、頬を伝う雫が地面を濡らしていた。


 こうして僕は、勇者パーティーから追放された。

【お願い】


お読み頂きましてありがとうございます!


ほんの少しでも、「面白そうかも!」「応援してあげよう!」と思って頂けましたら、ブックマークとページ下部↓の☆☆☆☆☆を押して、評価して頂けましたら嬉しいです!


執筆の大きなモチベーションとなりますので、是非ともご協力頂けましたら幸いです!


何卒宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ