表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしの大切なおとうと  作者: 杏樹まじゅ
【第二章.灰色の命日】
13/85

【十三.彼氏・二】

作:アンジュ・まじゅ

絵:越乃かん

 六月八日。土曜日。南大沢に帰ると、午後三時半ごろになっていた。わたし、十六歳。かいちゃんの命日。

 ぽつぽつと雨が降ってきた。京王線の特急を降りると、生ぬるい風が雨のにおいを運んできた。給料日が近かったけど、何も食べてなくて、お腹がぺこぺこに減った。駅前にはキッチンカーが並んでるけど、大抵高い。駅前の、黄色いMのマークのハンバーガーチェーンに入ることした。同じクラスで比較的仲の良い舘野紗綾がクルーをしていて、彼女のレジに当たった。


「はーい、いらっしゃい、なぎー。何頼むー?」

「うーんとねぇ」


 いちばん安いハンバーガーとお水だけ頼んだ。最近、お腹が減ってお腹が減ってたまらない。お陰で太っちゃったらしくて、ぽっこりとお腹が出てしまって妙に目立つのが嫌だ。


「なぎちゃん?」


 注文を待っていると急に呼ばれたので、後ろを振り返る。超びっくりした、りっくんが居るんだもん。


「よければ、いっしょに食べない?」

「え、森田くん?」


 紗綾が目ざとく反応する。


「注文いい?」

「う、うん、いいけど……」


 紗綾はどぎまぎとオーダーを取る。

 りっくんは、期間限定のボリューム満点のハンバーガーのセット。やっぱり、スポーツ部の男の子は違うなあ……


「お待たせいたしましたー……って、ちょっとちょっとなぎー」


 紗綾が小声で手招きする。


「なんで森田くんがあんたと食べるのよ」

「あ、いってなかったね、カレシなの。付き合ってるの、わたしたち」


 えー!

 悲鳴にも落胆にも聞こえる声で紗綾が口を押さえる。

 そんな彼女は放っておいて、ふたりで店内に歩みを進める。この店はいつも満席だ。二人がけの狭い座席を待たずに確保出来たのは奇跡的だと言っていい。


「ねえ、なぎちゃんって、どこに住んでるの?」


 りっくんの予想外の言葉にびっくりする。


「ここだよ。地元なの、わたし」

「え、でも昨日もその前も、一緒に駅に入ってったじゃん?」

「ああ……」


 めんどくさい。りっくんには悪いけど。……でも、どう説明しようかな。迷ったけれど、思ったままに答えてみた。


「わたし、もうひとつ家があるの」

「なにそれ、パパ活とか?」

「はは。……もしそうだったら、どうする?」

「それはないよ」


 りっくんは持ち前の天真爛漫な笑顔で歯を見せた。


「俺、嘘ついてるの見破るの得意だから」


 得意げに、ふふん、と笑う。……でもね、奇遇だわ。わたしもなんだよ。おばさんのおかげで嘘を見抜くのが大得意。冷静を装ってるみたいだけど、わたしにはわかっちゃうの。


 りっくん。きみ……今、焦ったでしょ?

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ