召喚っ!タマなし将軍 ~ウワサの悪霊を呼び出すイケニエにされました~
史実?に基づいてホラーを書いてみました。
部活の夏合宿に参加させられたものの、補欠の僕は、荷物持ちなど損な役回りばかりさせられた。夕食も入浴も済ませて随分と疲れたので和室の片隅でお茶を飲みながら、静かに休んでいると。
「ねぇ、知ってる?この辺ってタマなし将軍のお化けがでるんだって」
和室の中央でだべっているカースト上位の男女達から声が聞こえる。
「アレだろ。鎌倉幕府の2代目、源頼家の悪霊だっけ?」
「そそそ、タマタマ引きちぎられて死んだ将軍」
「痛そうだから、マジ勘弁」
男達はドン引きしている。
「タマタマ引きちぎられたら、男って死ぬの?」
「死ぬだろ。潰されても、引きちぎられても、痛すぎて……やめろ俺のタマタマつかむな」
女子にセクハラされるのってどんな気分なんだろ。
「男子って、股間つかまれると、マジ弱いわよねぇ」
「急所だ、あたりまえだろ」
「まぁいいわ。あとで遊んでみよっと」
「隣の2人用個室も、1部屋予約してあるから、順番に使おうね」
カースト上位の男女達3組は、かわりばんこに2人用個室を使う予定らしい。
男用中部屋、女用中部屋、プレイ用小部屋……といったところだろう。
まぁ、僕には男用中部屋以外に用はないんだけれども。
「でさっ、話戻すんだけどぉ~、タマなし将軍って、『俺のイチモツは、どこだ~』って、引きちぎられて無くなったアレを探してるらしいのよ。それでね……男子が夜に股間を丸出しにするのは、危ないんだって」
「危ない?どうして」
「タマなし将軍に股間のモノを引きちぎられるから、パンツに収納しておきなさいってこと」
「こっわ、マジかよ」
「今夜、一発ヤルのやめとこっかな……」
「私達だって死なれたら困るし、コレ無くなったら困るわ」
「だから、俺の股間を掴むな」
中央でイチャイチャ、イチャイチャしているカースト上位の男と目があう。
「なんだよ、チー牛」
「なんでもないよ」
チー牛、つまりチーズ牛丼喰ってそうなオタク顔。僕はそんな風に呼ばれていた。
「あっ、そうだ彼女無しのお前、2人用個室いけよ。んで、股間丸出しで寝てみろって」
「はぁ?どうして僕が」
「タマなし将軍がいるかいないか、調べたいじゃん」
「なにそれ、マジウケる~♪」
「イヤだよ」
「なんだよ、怖いのか?いるかいないかの悪霊だぞ」
「チー牛は、生まれて死ぬまで使う事ねーじゃん。一生童貞だろ」
「ばかやろ、シッコするとき使うじゃねーか」
「大丈夫ぅ~♪ 私達、女には無いしぃ~」
「ねぇ、おもしろそーじゃん。クリアした勇者に、チー牛なんて呼べないよね」
「だなっ」
嫌いなアダ名『チー牛』から解放されるチャンスかもしれない。
信用はできないけど。
「わかったよ。やるから、明日から僕をチー牛って呼ぶなよ」
「オッケー。イケニエ決定。じゃぁ、隣の部屋で裸で寝とけよ」
「私達は、悪霊を呼び出す儀式を大部屋でするわ」
……なんだろ、いつも僕を陥れるチームワークが抜群なんだよなコイツラ。
「よし、じゃぁ、2人部屋へいくぞチー牛!」
「わかったよ」
僕は、自分の荷物を持って、2人部屋へ移動した。
「どうするよ?間に受けて本気でやるか?それとも無視して、服着て寝ててもいいんだぜ」
「……やる。チー牛よばわりされるのは嫌だからさ」
「そうか?じゃぁ、アイツ等に揚げ足取られないように、脱いだお前の服もっていくぞ。なんかいる物あったら俺を呼べよ」
「わかったよ」
僕は全て脱いだ服を彼にわたした。
「まぁ、いざとなっら、バスタオル腰にまいてでも出て来いよ、じゃーな」
そうして、僕は2人分の布団にもぐる。ちょっと暑い。男女ふたり用の大きさだし……大の字になって寝て、布団をどけた。解放された股間が涼しくて気持ちいい。
「別に、悪霊なんて出ないだろう」
清涼感に負けた僕は、お腹にだけ布団をかけて、股間丸出しで眠ってしまった。
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深夜、午前2時くらいだろうか。股間を掴まれる感触で、目が覚めた。
「俺のイチモツは、どこだ~」
若いサムライが、僕の股間を掴んでいた。
「イチモツはここかぁ~?」
「ひぃいい、ち、ちがいます。これは新品未使用の粗品です」
「……たしかにの。久々の贄だが。これでは、ちと……我がぶら下げるのには恥よのう」
僕の股間が幽霊にディスられた。
「と、いうことで、お帰り下さい」
「ふむ。そういうワケにもいかんのじゃ。我も、そろそろ成仏を考えておる」
「じゃぁ、どうすれば。引きちぎるのは無しの方向で」
「よし、ヌシの股間にとりついて、鍛えてやろうぞ」
そうして、僕の股間に源頼家将軍の霊が取りついたのだった。
「よろしい、出陣じゃ」
「な、なにを……やめて」
僕の股間から、竿とタマタマが消える。
「ちょ、どこいった。無いぞ、無い」
「安心せい。後ほど返すでな」
男の本体ともいえる部位がなくなったのだ。
不安で不安で、布団に入りながら、タマタマと相棒がいなくなった股間を気にかけていること20分。
「ふぅ。終わったぞ」
股間のモノが空を飛んで戻ってきて股間に取りついた。いつもの位置だ。ポケットモンスターが英語で男性器の隠語であるなら『ポケモンよ、私は帰って来たぁ~』と叫びたい気分だ。うん、イチモツはアトミックバズーカーみたく立派なモノじゃないんだけど。
「えと?なにしてきたの?」
「隣の部屋に若い娘がいたのでな。2人程ナニしてきたのだ」
「は?避妊は?」
「するわけなかろう。種付けせねば成仏できぬではないか」
「そういう供養なのか」
「うむ……小さいと入れやすいのぅ」
「……そうですか」
なにコレ、股間のファンネルみたいになってる。
「ヌシも、スッキリしているであろう」
「そういえば……」
ムラムラ感はなかった。そうして眠気が襲ってくる。いつもの賢者モードか。
「これから、成仏するまで、よろしく頼むぞ」
そんな声が股間から聞こえて、僕は眠りに落ちた。
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朝になると、カギが開いて扉が開く音で目が覚めた。
「おはよ~さん。服もってきたぞ~?で、幽霊は出たか。っておい、せめて布団で隠せよ。丸出しじゃねーかっ」
「あ、おはよ」
言われた通り、股間を布団で隠し、受け取った下着を布団の中でもそもそと着た。
「よかったじゃねーか、悪霊に引きちぎられてなくてよ」
「……まぁね」
そんな話をしていると。
「「助けてくれ~」」
男2人が僕の部屋にドカドカと入って来る。どうしたんだ?
女2人も入ってきた。2人部屋に5人は窮屈だよな。
「「もぅ、寝てる間に、中で出すなんてマジ信じられない。危ない日なんだよ」」
……昨日、この2人を相手にしたのか。そうですか。
「わかるもんなんだ」
「たれてきてカピカピになるからな……」
「ふぅん」
「お前も、早く童貞捨てろよ」
「ありがとう。まずは相手探さないとねぇ」
喧嘩する2カップルのとなりで、僕達は静かに話をしていた。
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おかげさまで夏合宿から帰った僕は、「チー牛」と呼ばれなくなった。一応、約束は守ってくれたから嬉しかった。
ただ、あれから毎晩毎晩、寝ている間、僕の股間は消えてなくなる。
「ふぅ、今日のエモノも中々じゃったわい。ヌシのイチモツも一皮ムケて、なかなか立派になってきたのぅ」
「あぁ、はい」
いつも酷使されるのが原因で、ムケてしまった。ひとつ上の男になれたのは嬉しい。でも、ヒリヒリするまで使い込むのは勘弁してほしいかなぁ。大きさも成長したけど。
「もう、夏も終わりよのう。あと10人で成仏できる予定じゃ」
「え?種付け1000人だっけ?もう?」
「毎晩20~30人程、植えておったのでな」
「そんなに、出ないよ」
「孕ませる必要最低限の量を注入しているのじゃ。タイミングも見計らっての」
「そんな器用なことしてたんだね」
「うむ、そして、お主とは、今夜でお別れなのじゃ」
「そっか、成仏できるんだね」
「マラ観音様の御導きでなぁ。千年近く彷徨っておったが、ようやく成仏できそうじゃ」
「よかった、よかった」
「では、達者でな」
次の日、源頼家将軍の霊は股間からいなくなり、皮がムケて立派になったイチモツを僕に残していってくれた。
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そして半年後、ニュースは妊娠関係の情報が飛び交っていた。
「御懐妊!○○陛下に孫が……」
「御懐妊!○○親王に孫が……」
「アイドルの〇〇さん妊娠……」
「財閥令嬢ナッツ姫、妊娠……」
………全て父親は不明。
学校へ出かけようと手に掛けた玄関の扉が、勝手に開いて、僕は黒服の男達に囲まれた。
「さて、君の遺伝子情報を、詳しく調べる必要がある」
捕まった僕は、黒い車に押し込められたのだった。
(おしまい)
「身に覚えがないけど、責任とれ」な、ホラー
出来ちゃった婚とか授かり婚って、英語でショットガン・ウェディングって言いますね。娘を孕ませた男に父親がショットガンを突き付けて「わかってんだろーな」って言うからだそうです。
種付け1000人だから、1000丁の銃から放たれる弾丸の中、彼は生き残れるのでしょうか。怖いですね、恐ろしいですね。
ウワサの悪霊、タマなし将軍は、やっぱり迷惑な存在ですね。え?少子化対策ですか?そーですか。