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魔王の日常  作者: НАЯЦ
22/28

第12話 地底からの来訪者 後編

お待たせしました。

どうぞ、お楽しみ下さい。

ペラ……


ライリは魔導書のページをめくった。読んでいる本の表題は『「大地」属性の魔法の発展と進化 第三編』。表題通り、『大地』属性の魔法について書かれているのだが、全十二編まである、やたらと長ったらしい本である。その上、文の書き方も遠回しであったり抽象的で、『なにかブワーッとした感覚』などと言う表現まで出てくる。しかし、ライリはそのページを飽きることなく捲っていく。『発展と進化』と言うからには、著者が何らかの『発展と進化』を見い出したのだろう、その中に現在ライリが抱える問題の解決策があると考えたのだった。


「……ふむ。第三編は『ドバーッと何かが溢れだし、アビャビャと言う音と共にメロンチョとした感覚を味わった』が一番面白い表現だったな。意味は分からんが」


ライリは独りごち、読み終わった『第三編』を棚に戻すべく立ち上がった。一冊当たり600ページはある本を、1時間で読破していく。読み飛ばしているわけではなく、きちんと――もっとも、特異な表現は除いてだが――文の意味は把握していた。『第三編』を戻し、『第四編』を取る。


パサッ……


「ん?」


『第四編』と『第五編』の合間から何かが落ちた。取り上げてみると、古くなって黄ばんだ紙の束。紙の端に穴が2つ開けられ、赤い紐でじられていた。


「……読んでみるか」


机に戻り、紙の束を開く。得体の知れないものなので、慎重に。


ペラ……


『魔術の混合における実験の過程、結果及び考察』


捲った次の紙には大きくこう書かれていた。


「<動機> 私は、唯一つの属性における魔術の進歩に興味が無くなった。そんなものは歳を取った、頭の堅い連中にやらせておけばいい。『現在』に囚われぬ『未来』を目指した魔術を研究しようと思った次第である」


目を輝かせたライリの、手が早くなる。


「これ、だな。誰の書いた物か知らんが、使わせて貰おう」


ライリは満足そうに笑った。


† † †


ゴゴゴゴゴ……


「来た!ドール、チサト、用意はいいかっ」


ライリ、ドール、チサトは魔王城前の平原にいた。ラムは魔方陣を使っての支援をしている。今回はドールとチサトが『アースニードル』の魔法を唱える。ライリは『秘策』を使うために『アースニードル』の詠唱には参加しない。


『目標、来ます!3、2、1、今です!』


「「『この星に生まれし元素よ、土の槍を生み出し敵を貫け』」」


「……!『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』!」


ドールとチサトが『アースニードル』を。一瞬遅れてライリが『パイルドライバー』の魔法を唱える。すると。


バシュッ……ドゴンッ!!


地面から空気が吹き出し、大きな土の柱が出来上がった。その頂上には。

「うぉっ?!なんじゃこりゃぁ!このっ、降ろせっ」


柱の上にいるのは、巨大な茶色い魚にも似た生物。頭は大きく、尾に行くにつれて細くなる。厚い唇ような物の上に左右に一本ずつの長い髭。長いと言うより広いヒレのようなものもある。


「ライリ様、あれは……?」

「分からん。だが、逃げる前に捕まえるぞ!チサトっ!」

「はいっ!」


身をうねらせて柱の上から飛び降りた魚のような生物に向かって飛び立つチサト。


「ちょっと失礼します……よ!」

「ぬぉ?!」


チサトは尾を掴むと引っ張り上げる。


「ライリ様!どうしましょう?」

「あそこの大きい樹まで持っていけるか?」

「大丈夫です、いきます!」


魚と比べればチサトはもとより、ライリすらもごく小さく見えてしまう。しかし、チサトはその巨体を易々と運んで行く。大きな樹の下に来ると、ライリが魚の尻尾にツタのツタの一端をぐるぐると巻き付け、他端を太い枝に巻き付け、吊り下げた。


「貴様ら、何をするっ!ワシはこの地の『地中神ちちゅうしん』だぞっ」

「『地中神』だと……?バカを言うな。『地中神』は元来地の奥底にいて、我々の魔法の影響がない場所にいるはずだが?」


『地中神』と自ら名乗った魚がジタバタしながら言うのを一蹴いっしゅうするライリ。だが、『地中神』は尚も口を開く。


「ワシには、大地を活性化させる力がある。それには『地震を起こす』副作用があるのだ。ここ周辺の大地の『力』のめぐりが良くなく、なかなか改良できなかったから何度も通った」

「『力』の廻りが良くなかった……?」

『それには、心当たりがあります』


いぶかしげな声を聞いたラムが言う。


『最近、魔力の回復薬の原料として使われる『マグの実』の収穫量がいちじるしく減少しているそうです。マグの実は土壌の影響を受けやすいのです』

「なるほど……」

「そんな訳で、ワシはこの近辺を何度も通ったのだ。ワシとしては地震をなるべく起こしたくは無かったが、大地の調子が悪いのは我慢ならなかったのだ」「そうか……。わざわざ捕らえたりしてすまなかった。これからもこの大地を頼む」


そう言うと、ライリは『地中神』を吊し上げていたツタを切り裂く。すると。


ザブン!


水があるわけでもないのに水に飛び込んだような音がした。魚のような顔が覗いて、一言。


「大地を大切にしてやってくれ。他所よその世界じゃ地面にゴミを埋めるらしいが、そんな事は元来してはならない事なのだ。では、な」


そう言うと、大地を泳ぐ神は帰っていった。

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