第2話 魔王の気まぐれ
「魔王様、これが今回の収入です」
「うむ、見せて貰おう」
魔王―ライリは、小さなピクシーが持ってきた羊皮紙を受け取り、封を取る。
眺めること暫し。ピクシーはライリの正面で床に足をつけて待つ。因みに、ライリの城に居るピクシーは皆、メイド服のようなデザインの服を着ている。それも、各個ピクシーの好みによって1つづつアクセントになるアクセサリーが添付けられている。これも、ライリのささやかなこだわりだった。
「ふむ……」
「いかがでしょう」
「少しは、良いものを装備していたようだな。結局、無駄だったが」
「それは魔王様が瞬殺してしまうからでは…」
ピクシーがボソッと言う。
「まぁ、そんなところだな」
ライリがニヤッと笑う。
「それでは、失礼致します」
ピクシーはライリの部屋から退出しようとする。
「待て」
「は、はいっ」
ライリの突然の声に、ピクシーが跳ね、動きが止まる。
「お前の名前は」
「ち、チサトです…」
「ふむ…チサト、か…。珍しい名前だな。今の所属は?」
「ピクシー隊、諜報部です…」
「ふむ…。おい、ラム!ラムはいるか!」
ライリは何かを考え、『ラム』と呼んだ。
「ただいま」
スッとピクシーの隣に現れたのは、整った顔立ちをした、女性らしい体つきをし、背中に翼をつけた『ハーピー』と呼ばれる種類の魔物。ラムはこの城の人事を任されている。
「ラム、このピクシー『チサト』を私専属のピクシーにしてくれ」
「はぁ…かしこまりました、ピクシー隊には報告しておきます」
またいつもの気まぐれか、と思ったラムはすぐに承諾した。どうせ、抗議など聞きはしない。ピクシー隊には余剰要員がいるはずだから、それくらい何とかなると思った。
「うむ、頼む」
ラムが消えると、戸惑いを隠せないチサトが狼狽え始める。
「えと、あの……どうしてこのような事を…」
「理由か?そんなものは何時でも簡単だ」
一呼吸おいて。
「ただの気まぐれだよ」
こうして、またライリの気まぐれによって、魔王の側近が増えたのだった。
魔王の気まぐれな性格を書きたかったので、こんな話を。
今回の一件でのピクシーは、魔王の大変なお気に入りになります。
それは、また別のはなし。
次からちまちまと、側近達を出していきます。
乞う、ご期待!