EX.5 魔王設定決定戦 Act4 バスク・ドール編
今回のEXシリーズはこれで完結します。
勝負の行方は……!
どうぞ、おたのしみ下さい。
気が付けば、ロッチボールは無くなっていた。先程の爆発で故障してしまったのだろうか。チサトはいつも使っている物とは違う形の双剣を手にしていた。右手に持っているのは、全体的に角張った黒い剣。左手には、全体的に丸みを帯びた白い剣。新生・双剣『白』『黒』と言ったところだろうか。ドールは観察をやめると、魔法を詠唱する。
「『この星に生まれし元素よ、対を為す雷球を生み出し稲妻を呼べ』スタティック・サンダー!」
緑色に光る球が生まれ、チサトを左右から挟むように飛んでいく。そして、
バチッ!!
短く雷の音が聞こえる。しかし、チサトは何事も無かったかのように双剣を構え直す。何らかの対処をしてくる事が念頭にあったドールは驚く事もなく、握った右手の親指と人差し指をピンと立てた。人差し指が狙う先には、チサト。
バシュバシュバシュバシュッ!!
何本もの風の矢がチサトを狙う。それを弾き返しつつ接近してくるチサト。
「『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』!」
チサトが剣を振る瞬間に『パイルドライバー』を叩き付ける。ガギンッと言う金属質な音ともに双剣を吹き飛ばす。すぐにチサトは『ハイドロ・プレス』の魔法を使う。その水の球が突き出される瞬間に合わせてもう一度『パイルドライバー』の魔法を発動、小柄なチサトの体を吹き飛ばした。
ゴゥ……パチッ……バチバチッ……
チサトの頭上には巨大な蒼い炎球。それを、此方に向かって投げ付けてきた。目の前が真っ青な爆風によって隠され、熱波と放出されるエネルギーによって風が生まれた。ドールは着弾点から少し離れた所に立っていた。
(当たれば大被害だが……当たらなければ何と言う事は無いんだ!)
「『この星に生まれし元素よ、風の矢となり敵を切り裂け』ストームアロー!」
ドールは今なお燃える蒼い炎に向かって、魔力を多目に使った『ストームアロー』を放つ。放たれた風の矢は炎を掻き消し、チサトに当たる。風によって吹き飛ばされたチサトに向かって『ウォーターランス』を撃つ。しかし、水の槍は突如進む向きを変え、炸裂して消え去った。
(長く時間を掛けるつもりは無い。取って置きの魔法で決める!)
「『この星に生まれし元素よ、天と水の力を以て、風の牙を持つ水の王の姿を現せ』総てを呑み込め、リヴァイアサン!!」
ドールは何も無い空中で脚を思い切り振った。脚によって切り裂かれた空は風を生み出し、その風を包み込むように水が集まる。そして。
グォォォォォォォ!!!!
巨大な唸り声と共に、巨体を持った鯨のような、それでいて鋭さを顕すシャープな体つきをした水の王が召喚される。風の牙を持った水の王は、チサトを呑み込まんと襲い掛かる。しかし。
パパパパパパパンッ!!!!
何かが破裂する音が連続して聞こえた。
グ…ギッ……ォォォォ……
弱々しい唸り声を発するリヴァイアサン。そして。
バッシャァァァァ!
水を切り裂き、中から飛び出して来たのはチサト。その手には黄色く輝く刀身を持つ、細長い剣。最後に剣が触れた水は、パァン!と大きな音を立てて破裂する。
「くっ……!」
「ハァァァァァァッ!!」
ドールの漏らす小さな声と、チサトの絶叫。ドールは一瞬で剣を召喚。チサトの攻撃を防ごうとする。
ガギッ……バンッ!
ドールの持っていた剣が、チサトの剣と触れてすぐに爆発した。剣を棄てて飛び退ろうとする。
パンッ!
しかし、チサトが振った剣は、ドールの近くの空気をも爆発させた。爆発によって吹き飛ばされ、壁に強く体を打ち付けるドール。
(ぐっ……は…………くそ、体が動かない……チサトが旗を取りに……まだ負けるわけには……)
必死に体を動かそうとするが、その思いとは裏腹に体は言うことを聞かない。その時、何かが床に転がり落ちた。見れば、深い紫色をした小さな粒。着ているローブに縫い付けられた飾りボタン。その中に仕込んでおいた、切り札。魔力を回復させる薬を、瓶3本分凝縮させた、ライリ特製の秘薬。それを、そっと手にとる。
(僕に……力を……!!!!)
一気に飲み込む。すると、身体中に力がみなぎり始めた。
「僕は……まだ負けていない!『我が内に秘められし魔術師の魂よ、楽園に封じられし天剣を呼び出せ』!召喚、天剣『エデン』!!」
ドールは立ち上がる。その手には、白く輝く剣『エデン』が握られていた。この剣は、常に何らかの魔力を注ぎ込まないと形を維持する事ができない。その代わりに、常に抜群の切れ味と『天』属性の魔法が発動する。チサトが驚いてこちらを見る。手にした黄色く輝く剣が更に強く輝くのが見えた。両者が同時に近づき始める。
ガッ……バンッ!
二振りの剣がぶつかる。ドールの『エデン』がチサトの剣に掛けられた魔法を切り裂き、チサトの剣に掛けられた魔法が『エデン』の纏う魔力を爆発させる。弾かれた剣を再び振り下ろす。爆ぜる音と共に両者が弾かれ、僅かに距離が空く。再び距離を詰めあい、剣と剣がぶつかり合う。
――右、左、上段、下段、突き、正面、正面、正面、正面、正面……!!
幾度と無く打ち合わされた剣は全く綻びる事無く輝き続ける。
ガッ……ドンッ!
数え切れない程起きた爆発。さらに数が1つ増え、2人の距離が再び空く。
「『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』!パイルドライバー!!」
『エデン』から発動された『パイルドライバー』は、再度ぶつかり合おうとしたチサトの剣によって切り裂かれ、爆発する。しかし、『エデン』はまだ弾かれていない。チサトの剣に掛けられた魔法が弱まった一瞬を突いて、剣を弾き飛ばす。その衝撃で吹っ飛んだチサトは、戦い始める前に作った防御壁に体を打ち付けた。そのまま、動かなくなるチサト。ドールは、ゆっくりと近付いていく。剣を壁に立て掛け、チサトの体をそっと抱えようとした、その時。
「まだです……まだ、決着は……私は、全力を出し切っては、いません……!!」
そう言って、ドールの腕から抜け出し、宙に浮かぶ。ドールはすぐに消え掛かっていた剣を取り、魔力を送り込む。チサトの胸元に付けられた紅いブローチから紅い光が溢れた。
「増幅機か……容量半端無いんだよなぁ、アレって……」
ドールがぼやくと、光がチサトの手元に集束し始めた。紅い光が棒状になり、チサトはしっかりと光を握っている。
「……まさか、魔剣『レーヴァテイン』を使えるとは……」
魔力の放つ紅の光が剣となる、『最強』のランクに入る魔法。チサトが使った魔法はまさにそれだった。
「行きますよ、ドールさん」
「あぁ……来いっ!」
ガッ……ギィィィン!!
『天剣』と『魔剣』が激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。鍔迫り合いをする気は無いドールはすぐに剣を引き戻し、右から、左から、上から、下から斬撃を繰り出す。しかし、それは全てチサトに防がれ、今度はチサトに攻められる。身を捻って回転の力を加えた斬撃は、魔剣の威力を更に引き上げてドールを襲う。高威力の斬撃を敢えて受け止め、ドールは魔法を詠唱する。
「『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』!!」
『パイルドライバー』の魔法を剣から発生させ、チサトの剣を吹き飛ばそうとする。しかし、魔剣は微動だにしない。
(万事休す……!)
ドールは一瞬、剣に加える力を緩め、チサトの体勢を崩しにかかる。果たして、肩透かしを喰らったチサトはふらつく。その隙に右から剣を叩き込むドール。
ガギンッ!
チサトの魔剣は逆手に握られ、攻撃をしっかり防いでいた。そして、そのまま振りきられる魔剣。
バリィィィィン!!
何かが砕ける音が響く。ドールの天剣は、粉々に砕け散っていた。その場にドサリと膝をつくドール。魔力を使い果たし、天剣『エデン』の維持が出来なくなったのだった。
「ハァ、ハァ……僕の負けだ。魔力を使い果たして動けそうにないよ、チサト」
チサトは魔剣を消し、ドールを壁に寄り掛からせる。
そして、チサトは防御壁を壊し――
旗を取った。
……と言うわけで、魔王・ライリは女性と言う設定になりました。とは言っても、一人称が『私』になるだけですが(笑)
以下、新登場の大技についての解説らしき物です。興味が無い方は飛ばしてください。
『リヴァイアサン』の魔法は『水』属性と『天』属性の両方を合わせた魔法です。この魔法はドールのオリジナルなので、今のところ使えるのはドールただ一人です。
元ネタはO先生の漫画です。眼帯をズラすと性格が変わる彼です。
天剣『エデン』は作中でも説明が出ていますが、『常に何らかの魔力を注ぎ込まないと形を維持できない剣で、常に魔力による強化と「天」属性の魔法が放てる』と言うものです。この世界最強の魔導師|(人間に限る)がせいぜい5分召喚していられるかと言った魔力を消耗する剣です。ドールは大体10分耐えられます。
立て掛けるシーンがありますが、それはドールが通常の半分の魔力を注ぎ続けていたから消えなかったのです。ドールの凄いところです。
魔剣『レーヴァテイン』は、元々杖であるとか様々な解釈のされる武器ではありますが、この作中では『炎の剣』と言う解釈を元にして、『紅い光の剣』としていませ。『剣』と言う『型』に力を押し込むのをやめ、『光』と言うエネルギー体のままで扱う事で絶大な威力を引き出します。この技を扱うには、技自体に必要な魔力だけでなく、『光の剣』と言う形を保つ為の強大な魔力とコントロールが必要となります。チサトは『増幅機』を使うことで魔力とコントロールを得ました。
また、『剣』と言う明確な形を取らないため、光剣『エデン』のように『武器』ではなく、『魔法』という扱いを受けます。
うっはぁ、長くなったorz
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




