EX.4 魔王設定決定戦 Act3 バスク・ドール編
大変長らくお待たせしました。
時間がかかった分に見合った内容……になってたらいいなぁ・ω・;
バスクとラムが戦い始めた頃。ドールは魔法で召喚した翼を上手く操って跳躍の距離を伸ばし、塔を登っていた。今いるこの空間は無風なので、翼の力だけで動く事が出来ないドールは自らの足で螺旋階段の手すりから跳躍し、翼を動かす事で上手く風を掴んで飛距離を伸ばし、上の手すりに着地、再び跳躍……を繰り返していた。本来、ドールは魔力を使って空を飛べるのだが……。
(チサトと戦う前に魔力を消費するわけにはいかないからね)
魔力を使わずに跳んでいたのだった。
(ん……?)
跳びつつ下を見ると、何やら飛んでくる者が。
「来たね……『我が内に宿りし魔導師の魂よ、水の槍を生み出し敵に降り注げ』ウォータースピア!」
ドールの詠唱が終わると、空中に大量の水の槍が生まれる。そして、
ヒュヒュン!
風切り音を残して槍が落下していく。チサトはそれを回避したらしく、凄いスピードでドールに向かってきた。
(っ……!)
チサトが突進してくるのをギリギリで回避する。魔力云々言う必要がなくなったので翼は消し、魔力で宙に浮いていた。
「いきなり突進なんかしてきて……」
「ドールさんだって、いきなり水の槍を落とすなんてひどいじゃないですか」
「ふふ……まだまだ、これからさ!『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』パイルドライバー!」
ドールは手元に平らな風の面を作り、チサトの居る方向に向かって叩きつけるように腕を振った。
ヒュォン!
何か大きな物が飛んでいくような音がし、不可視の風の面がチサトに襲い掛かる。
バリィィン!!
チサトは矢のような形をした炎を3発撃ち、そのうちの2発で風の面を破壊、残りの1発でドールを狙ってきた。
「っ……!『ゼリー・ウォーター』!」
一瞬にしてドールの周囲を水の膜が覆い、チサトの放った炎の矢を消し去った。そして、目の前にある水の膜に向かって詠唱する。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、水の槍を伸ばし敵を貫け』ウォーターランス!」
水の膜から一直線に鋭い水の槍が伸びていく。残った水の膜を全て槍に換えて放ったその魔法はかなりの破壊力を持つ。だが、ドールの手元に残った水が一向に飛んでいかない。最悪避けられたとしても、水は全て無くなるはずだった。
(まさかっ!)
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、その魔力を以て水を炸裂させろ』バブルエクスプロード!」
ドールの手元にあった水から弾けていき……
パァン!!
一際大きく弾けると、全て消え去った。
(危なかった……まさか水の槍を逆流させてくるとは……)
チサトはおそらく、『水』属性の魔法『リバース・ウォーター』を使ったのだろうとドールは読んだ。水の流れを変える、『水』属性の魔法に対して効果の高い反射魔法として使われる事が多い魔法だ。そうこうしている内にチサトはドールの目の前を猛スピードで通りすぎ、塔の上部目掛けて飛んでいった。ドールはすぐに追いかけ始める。
「『この星に生まれし元素よ、対を為す雷球を生み出し稲妻を呼べ』スタティック・サンダー」
ドールは空を翔びながら詠唱する。4つのロッチボールの内2つに魔力を送り込み、残り2つで無詠唱の『天』魔法『エアロブラスト』を発動、魔力を送り込んだロッチボールを高速で射出する。『エアロブラスト』によって起こされた突風で吹き飛ばされた2つのロッチボールは紫電を走らせながら飛んでいき、チサトを追い抜く。そして、眩い光と共にロッチボールから2本の稲妻がチサトに向かって輝いた。
(……おいおいちょっと待ってよ……どうしてあの技が当たって平気なんだ……?)
チサトは何事も無かったかのように上空へ向かって飛んでいく。それを必死に追い掛け、先程雷を発生させたロッチボールに追い付いてロッチボールを回収。すぐさま別の魔法を詠唱しようとした、その時。
「危ないじゃないですか、雷なんか撃って……当たったら死んでますよ、私」
背後からチサトの声が聞こえた。耳元で囁くように発せられた声は、忽ちドールの背中に冷や汗をかかせる。
「……どうやって回避したんだい?」
「教えられませんよ、そんな事。で、私にばかり気を取られていて良いんですか?」
「なっ……!ぐっ!」
チサトはそう言うとドールの頭を殴り、パッと離れる。
「しまっ……!」
いつの間にか服が黒焦げになったチサトがドールの懐に潜り込み手を広げた。そこに集まる水の塊。それをドールの腹に叩き付けた。
「ッ………ハ!!」
ドールの腹に直撃した水の塊は一気に弾け、強い衝撃となってドールを吹き飛ばす。塔に向かって飛ばされたドールは、塔にぶつかる前に何とか体勢を立て直して階段に着地する。
(今のは……。『シャドウ・パーティー』を使ってきたか、チサト)
ドールは階段の手すりを乗り越え、再び翔び始める。その時、輝く何かが下に向かって飛んでいった。
(なんだ、今のは……。まぁ、僕を狙ってこない辺り、大丈夫だろう)
そう思ったドールはチサト目掛けて翔び続ける。ふと、自分の隣にある塔に目をやると、ある考えが浮かんできた。
「『この星に生まれし元素よ、岩の弾丸となって敵を貫け』ロックブラスト」
詠唱を終えたドールは一瞬、塔の階段に触れる。そして、チサトのいる位置を狙って魔力を解放する。上空の方で何かが塔から飛びだし、チサトに向かって飛んでいく。チサトの動きは止まり、何かの魔法で防いでいるようだった。その隙にドールはチサトのいるところまで一気に飛び上がった。
(弾丸を『ゼリー・ウォーター』で防いでいたか。足止めになったから十分だね)
脇目で確認して止まらずに突破する。すると、
ガキン!
何か金属質な音と共にドールの下から水の槍が伸びてきた。ドールが驚いて下を見ると、水の槍が直撃したと思われるロッチボール1機が地面に向かって落下していくのが見えた。さらに何本かの水の槍が飛んでくるのが見えたドールは、撃ち落とす為に魔法を詠唱する。
「『この星に生まれし元素よ、風の槌を生み出し敵を押し潰せ』パイルドライバー!」
ドールは前転しながら下方に叩き付けるように腕を振る。勢いよく飛んでいった風の面は水の槍を吹き飛ばし、辺りに輝く水を散らす。だが……
カカカカキン!
いくつもの金属質な音が重なって響く。ロッチボールがもう1機墜ちていくのが見えた。それと一緒に落ちていく、小さい物体。それは、ドールがチサトに向かって放った『ロックブラスト』の弾丸だった。水の槍の中に入れて飛ばすことで、『パイルドライバー』によって弾かれることなくロッチボールに届いたのだろうと考えたドールは、すぐに別の魔法を詠唱する。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、その魔力を以て水を炸裂させろ』バブル・エクスプロード!」
先程『パイルドライバー』で吹き飛ばした水を『バブル・エクスプロード』で炸裂させる。新たに向かってきた水の槍を吹き飛ばした。
「『……よ、巨大な蒼いほ……』」
チサトが上へと昇っていく。すれ違いざまに、何かの詠唱が聞こえた。何の魔法かをすぐに理解したドールは、詠唱を開始。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、水の盾となり我を守れ』ゼリー・ウォーター」
目の前に、ドールを覆うように水の盾が出現する。続けて詠唱。
「『この星に生まれし元素よ、風の渦を作り敵を吹き飛ばせ』エアロブラスト」
この魔法をロッチボールに転送。ロッチボールの内部で再び詠唱され、発動される。ロッチボールの生み出した風の渦はドールを吹き飛ばす。その瞬間、水の盾に巨大な蒼い炎がぶつかる。水と炎の間を一気にすり抜け、さらに詠唱。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、我が手に集まり敵を押し潰す水となれ』ハイドロ・プレス!」
ドールの開いた右手の中に水の塊が集まる。風の勢いで加速されたドールは水の塊を叩き付けるべくチサトに向かっていく。その時、チサトもこちらに向かってくるのが見えた。その右手には自らの手中にあるのと同じ水の塊。
ドッ……パァン!!
両者の突き出した水の塊同士がぶつかり、弾ける。その衝撃で2人は吹き飛ばされ、距離が空いた。上を見れば塔の頂上はもう近い。ここで勝負を決めよう、そう思ったドールはロッチボールを補助機材代わりに高威力の魔法を詠唱する。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、水の蛇となり敵を呑み込め』ハイドロ・スネーク!」
ドールの背後に漂っていたロッチボールから大量の魔力が溢れ出す。その魔力を集中させ、1つの魔法へと変える。そして、チサトが接近してきたその時。
「『魔力解放』!いけぇっ!!」
ドールは集中させた魔力を解き放ち、大量の水を撃ち出す。それは巨大な蛇のような形となってチサトに襲い掛かろうとする。
「………!」
チサトが空中を走る大きな炎の線を操っているのを見たドールはすぐに上へと飛ぶ。その直後、水の蛇と炎の線がぶつかる。
ドォン!!
大きな音と共に、ドールの足元で爆発が起こる。『水の蛇』と言う『型』に押し込まれていた水が蒸発し、『型』の中で圧力が増して耐えきれなくなったことによる水蒸気爆発が起きたのだった。ドールはその爆発から逃げ切れず、勢いに押されて空高く持ち上げられる。そして、塔の頂上に達したその時。
ヴィィィィィ……
転移魔法独特の音が発生した。気が付いてみると、入口から玉座までが長く作られているライリの部屋に似た場所にいた。だが、玉座のあるべき位置には一本の旗が立っていた。
「………。」
「………。」
ドールがふと隣を見ると、丁度チサトもこちらを見ている。しばし見つめあって。
「『我が内に宿りし魔導師の魂よ、我が内に生まれし想像を具現し、我が力が途切れるまで形を保て』!」
「『我が内に秘められた妖精の力よ、我が内に生まれし想像を具現し、我が力が途切れるまで形を保て』!」
2人が同時に詠唱する。そして、旗の立つ台の周辺を、内側にチサトの、外側にドールの生み出した壁が覆い隠した。
「どちらかが倒れるまで、旗は取れないって事ですね」
「そうだね。手加減は、しないよ?」
「望むところです。行きますよ」
2人は左右別々に飛ぶ。不敵に笑い合う2人の間で、火花が散っていた。
まだ続きます。
次で最後になる……予定です!




