第10話 妖精の戦い 解答編
作者の独り言です。
興味ない方は飛ばしてください。
† † †
祝!5000PV、1000ユニーク、第10話、作者加齢!
色々嬉しいです、あぁ涙が。加齢?嬉しくないな……
まぁ、心は永遠に17歳だからいいとしますか(マテ
まだまだこれからも頑張っていきますので、生暖かい目で見てやってください、以上、作者ですた。
チサトは医務室のベッドの上でうっすらと目を開けた。
(あれ……私……)
記憶がない。とにかく嫌な思いをしたところまでは覚えている。が、その先の事は全く覚えていない。思い出そうとしたが、無理だった。
ガチャッ
誰かが部屋に入ってきた。目だけでそちらを見ると、ライリだった。
「あ……ライリ様……」
「おぉ!目が覚めたか。気分が悪かったりしないか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「ならよかった、うん。リンゴ、食べるか?」
はい、と言って勧められるがままに皮が丁寧に剥いてあるリンゴを食べる。机の上にナイフが置いてあるあたり、ライリが剥いたのだろう。近くには何やら液体の入ったボウルがあった。
「いや、驚いたよ。まさかあんなにチサトが強くなったとは。正直、ビビった」
チサトは何の事か分からない、という顔をする。
「……やはり、覚えていないか。あの時、お前は暴走した。まぁ悪いのは観客の連中だがな。しかし、スゴかったぞ?剣やら魔法やらは無詠唱で発動するし、動きはやたらと早いし、槍を召喚する動作を攻撃に使うし」
「え、あの……私、ライリ様と戦ったんですか……?」
「あぁ、戦った。久々に全力を出して戦えたから面白かったぞ」
「なんと言うか……ごめんなさい」
「気にするな。悪いのは観客の連中だと言っただろう?」
「はい……」
うんうん、と言ってチサトの頭を撫でるライリ。
「さて、そろそろ解答編と行こうか?」
「解答編?」
「この話の中で語られていない、真実を語るんだ。例えば、お前が強くなった秘密、とかな」
「それはライリ様が……」
「まぁまぁ。順番にゆっくりと語って行こうじゃないか」
そう言ってフフン、とライリは笑った。
† † †
ドールさんとラムさんから、ライリ様の箱を貰って私の部屋に戻った後、まずはライリ様からの手紙を読んだ。
『親愛なるチサト。
まずは、このような事になってしまったことを謝りたい。魔王である自分の力不足だ、すまない。
だが、こうなったからと言って諦めたくない。と言うより、ただで済ませない。自分の力不足が原因の事に巻き込んでしまってすまないが、是非、力をつけて自分の元に戻ってきて欲しい。
だが、力をつけると言ってもたった1ヶ月では無理があるだろう。だから、2つの魔法器具を用意させて貰った。
まず1つ目。『フラスコの中の世界』。これは、中に入ると現実の1時間が1日に引き延ばされると言うものだ。これを使えば限られた時間の中で沢山の事を出来るだろう。注意点は、一度入ったら24時間……現実の1時間きっかり後でないと外に出ることが出来ない。まぁ、睡眠等も組み合わせて上手くやってくれ。
2つ目は、私の分身を作り出す巻物だ。その封を取ると、私の分身が発生する。喋り声は少々拙いが、その他の能力、知識は私と同じだ。だが、一時間使うと魔力が切れて消えてしまう。紐で封をしていれば魔力が溜められるが、48時間かかる。だから、『フラスコの中』で使うことをオススメする。
こんなことしか出来ないが、是非、頑張ってくれ。
追伸
当分の間は、ドールの補佐をするように。』
私は、ライリ様からの長い手紙を読んで泣いていた。どうして泣いたのか分からないが、嬉しかったのか、安心したか、或は両方か。
とにかく仕事はしなくてはいけないので、ドールさんの執務室に向かった。
ドールさんは、魔王城と、その周辺、魔王城に属する人の周囲で起きた全ての事を管理している。あちこちの部署からくる情報を整理し、必要なら補充や補完を手配し、また問題と思うところは調査を要求したり。とにかく忙しい。私なんかが行ってもかえって迷惑じゃないかとも思ったが、凄く歓迎された。なにせ報告書の量が多い。提出されるのは紙ではなく、魔法で文章を打ち込む『魔文』が入った魔法石|(魔力のこもった石だ)だから、机の上には置いておけない。整理するにも数が多くて時間がかかる。整理に時間がかかればその分処理が遅れる。処理が遅れればその間に報告書はどんどん増え……とまぁこんな風にどんどん積まれて、いつの間にか報告書にまみれた部屋になってしまったんだとか。私に課せられた任務は、この報告書の整理だった。
整理は気合いでこなしつつ、ドールさんに魔法について教えて貰った。互いに大量の仕事を抱える身なので、口頭で教わり、理解した。と言っても、魔法の本当に基礎の部分……例えば、『妖精魔法』と『元素魔法』の違いだ……だけを教わり、実際の魔法は勤務終了後に自分の部屋で『フラスコの中の世界』の中に入って勉強し、習得していった。元から多少の『妖精魔法』は使えたから効果を上げればよかった。だが、『元素魔法』は中々上手くいかず、結局一番簡単な魔法|(小さい火を飛ばすぐらい)と、あまり高度な操作を必要としない『付加』の操作しか完成しなかった。ただ、それだけで勝てるとは思わなかった私はライリ様の分身に相談した。その結果、『武器の召喚』と『シャドウパートナー』の完成に繋がった。
そんな事をしているうちに、月日は過ぎて、大会当日になった。私は……色々あったけど……無事、ライリ様の近衛人として、復帰できた。
† † †
「なるほどな……さすが我が分身と言ったところか。物体に魔力を注ぎ込んで操作させるなんてな」
「ライリ様も物体に自立行動がさせられるんですか?」
「ああ、出来る。と言っても、召喚した武器に直接魔力を注ぎ込んで行動させるタイプだ。なにせ早さがウリの魔王なんでね」
ライリはそう言ってフッと笑った。そして、あっ、と何かを思い出したような顔をする。
「お前は暴走したと言っただろう?あれの原因が分かった」
「え、何が原因だったんですか?」
「まぁ待て、もうすぐドールが来るはずだ」
ガチャッ
「失礼します。ライリ様、お待たせしました。チサト、身体の具合は?」
「おぅ、こっちだ」
「大丈夫です、ありがとうございます」
ひとしきりの挨拶。ドールの手には真っ赤な液体が入った小瓶が握られている。
「さて……チサトが暴走した件だが……。あれは、度重なるストレスやらが原因で起きたものだ。暴走したのは、お前の魔力だ」
「私の、魔力……」
「だが、明らかにお前の魔力を越えた力が使われていた」
「私が、私の力を越えた?」
そんなバカな、とチサトは思った。潜在能力と言うものが仮に存在したとして、それを全て解放しても使える魔法の『属性』が増えこそすれ、『魔力』が増えることは無いと魔導書に書いてあったし、ドールも同じことを言っていた。だが、自身の力を越えた力が使われていた。では、それはなにか。
「では、それは何か。ドールと強力してお前から吸い出した魔力を研究したんだ」
「その結果、ある仮定にたどり着いたんだ。チサト、君は、『増幅機』を持っているんじゃないか?」
ライリの言葉をドールが引き継いだ。『増幅機』とは、使用者の魔力を増幅させる道具である。有名な伝説として、『賢者の石』があるが実際に作られたものは確認されていない。
「例えば、その胸の紅いブローチ」
チサトは、ふと自分の胸についた、真っ赤なブローチを見た。ピクシーは誰でも何かしらの装飾を服に着けている。数が多いだけに自己主張も大変なので、服のデザインが附けられた装飾品を目立たせるように作られている。チサトの場合は、真っ赤なルビーに似た石を使ったブローチを胸に着けていた。それは、チサトの両親に貰った物だと言う。
「ふむ……よし。試してみようじゃないか。ドール、小瓶を。チサトはブローチを貸してくれ」
ライリが言うと、ドールは真っ赤な液体の入った小瓶を取り出した。チサトはブローチを外し、ライリに渡す。ライリはブローチをベッドの脇の小さな丸机の上に置く。そして……
パシャッ!
ブローチの上に紅い液体を掛ける。すると、見る見る内に液体はブローチの中に吸い込まれていった。何が起こったのか分からずキョトンとするチサト。ふむ、と納得したように頷くライリ。興味深そうに観察するドール。
「これは……チサトの両親が渡したこれは、とてつもない容量を誇る、魔導機クラスの増幅機だな」
「そんなものを私が持っていたなんて……」
「本来、増幅機は魔力を放出する事しかできない。だが、これは貯蓄、放出の出来る銀行のような物だ。おそらく、お前は知らず知らずの内に少しずつこの増幅機に魔力を貯めていたのだろう。それが『暴走』した時に引き出され、使われたんだろうな。これを着けている限り、チサトは無限の魔力を持っていることに等しいな」
そう言いながらブローチをチサトに渡す。それを感慨深げに受け取り、元の場所に着けた。
「『暴走』についてはこれで終わりだな。あとは……あの『正体云々』と言ったエンプーサか。ヤツは、魔王になり損ねて淫魔になったヤツだ。どこぞのバカな魔導士どもが『魔王にふさわしい力を持った魔物を』とか言うふざけた理念の元に実験をした結果、生まれたんだ。あぁ、その魔導士どもは葬った。魔王を造りだそう、など言ってるクズはこの世にいらない」
ライリは心底嫌そうに話すので、チサトは色々聞くのをやめた。やはり、訊いてはいけないこともあるのだろうから。
「……よし、これで解答編は終わりだな。魔法の構造やらは、作者にでも聞いてくれ。チサト、明日からまた頼むぞ」
そう言って、ライリは颯爽と医務室から出ていく。それと共に、ドールも席を立つ。今日はしっかり休みなさい、と言って頭を撫で、出ていった。
「明日からまライリ様にお仕え出来る……。うん、休んでおこう」
そう言って、布団に入った。
余談だが、チサトの部屋には沢山の手紙が届いていた。謝罪の手紙、ファンレター、弟子になりたいと言う申し込み……中にはチサトに倒されたオークからの熱烈な手紙もあった。その手紙に、チサトは全て同じ言葉を返した。
『ありがとう、これからも私を応援してください』
チサトは、穏やかでより幸せな生活を取り戻した。
妖精の戦い、完結です。
以下、解説です。チサトの増幅機についてです。
チサトは増幅機込みでライリ並みの魔力を持っています。
魔力と言うのは、常に生産され、余った分は何らかの形で消費されます(からだが動く度に消費)。その消費される余りを貯め続けるのが、チサトの増幅機で、容量不明なある意味『賢者の石』に近いものです。
以上、作者の解説でした。
そのうち、作中の魔法についても解説します。