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魔王の日常  作者: НАЯЦ
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第1話 魔王ライリ、登場

勢いで書いてみました。

寸足らずな所も多々あるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

「ヒマだ……」

ボソッと一言。

深紅の絨毯が敷かれた、だだっ広い部屋の奥に置いてある、禍々しさを放つようなデザインの椅子に、声の主はいた。

名前はライリ。昔はもっと長かったが、別の呼び方で呼ばれるようになってから…そんなものは忘れ去った。かつて―もう2000年以上昔に―愛した、ただ1人の人物。その人物が呼んだ自身の名前。その名前だけを残し、過去は全て捨て去った。

その時、扉が開く。

「魔王様、失礼致します」

一体の魔物―二足歩行する猪、『オーク』と呼ばれる種類―が部屋に入ってくる。

「どうした」

『魔王様』と呼ばれたライリは椅子から立ち上がって答える。

「先程、『勇者の一団』とか名乗る連中が城の中に侵入し、城の中で暴れております」

「ふむ……数は?」

「全部で50体ほど。全て人間種で、武器は様々、防具もきちんと着けています」

「やれやれ…我々が何をしたと言うのだ…」

「いかがいたしましょう?」

「そうだな……そいつらを全員、この部屋に転送しろ。魔法を使うのは面倒だろうから、魔方陣を使った罠を張るように指示しろ」

「はっ、かしこまりました。失礼致します」

オークは一礼をし、部屋から出ていく。

「ドール、いるか」

「はっ、お側に」

ライリが何処へともなく声をかけると、背の高い、黒地の上に白で複雑な紋様が描かれたローブを纏った男が現れた。目を閉じ、片膝と拳を床につけて命令を待つ格好を取る。その整った顔立ちからは恐怖などではなく、ライリへの尊敬と自身が溢れていた。

「うむ。この部屋を『閉鎖空間』にしてくれ。侵入者を殲滅する。ついでに、コップ一杯の水をくれると助かる」

「かしこまりました、お任せ下さい」

ドールと呼ばれた男はまず左手をパチンと鳴らす。すぐにライリの前にコップ一杯の水が現れる。それを一気に飲むと、椅子の傍の小さな丸机に置いた。その間にドールは右手をパチンと鳴らし、『閉鎖空間』を形成し、ライリの部屋に定着させる。

「完了です、魔王様」

その声を聞いたライリは腰に差した剣を抜き、先程置いたコップに向かって音速で剣を振った。


パリン!


コップが砕け散る音が響く。だが、粉々になったコップはすぐに元の形に戻った。これが、『閉鎖空間』。発動された時点で存在する、『閉鎖空間』内の無生物の形状を保存し、一切の変化を許さなくする。ライリは、戦闘する際には必ずこの空間を展開する。もちろん、部屋の装飾を破壊したくないからだ。

「よし、そろそろだな……。ドール、お前は下がれ。ご苦労だった」

「はっ、ありがたきお言葉」

「あぁ、それと」

「なんでしょう」

「『魔王』と呼ぶのはやめてくれ。『魔王』と言われるのはどうにも好きじゃない」

「かしこまりました、ライリ様」

ドールは微かに笑ってそう言うと、姿を消した。

自らの近くに置く『側近』クラスの者には『魔王様』ではなく『ライリ様』と呼ばせる。ライリなりのこだわりだった。

「さて、そろそろか」


ゥ゛ビィィィィン


奇妙な音と共に、大量の人間が部屋に出現した。見事に罠にかかり、この部屋に飛ばされたのだろう。

「よくぞいらっしゃった、愚かなる人間共。貴様らが『勇者の一団』とやらか」

「その通りだ。ここで魔王を倒し、世界に平和をもたらすのが我々だ!」

「愚かな……我々が何をした?貴様らは『魔王を倒した』と言う名声を手に入れ、少しでも崇められようと言うのだろう?そんな腹の内、見え透いている」

「黙れ!我々は貴様とは違う!ここで朽ち果てろ、魔王!!」

人間の1人が叫び、突撃してくる。それに呼応したかのように他の人間も向かってくる。

「やれやれ……。双剣『いざなぎ』、『いざなみ』我に力を貸せ」

ライリは小さく呟く。すぐにその右手に白い剣『いざなみ』、左手に黒い剣『いざなぎ』が現れる。どちらも順手に持ち、拳を構えるように構える。


一閃。


50もの人間の間を、白と黒の閃光が駆け抜けた。人間には、何が起こったのか分からない。何せ、ライリは目の前で構えを取ったままなのだから。そのライリの姿が、ゆらり…と揺らめき、掻き消えた。


「貴様ら、どこを見ている?貴様らの標的は、ここだ」


ライリは静かに声を掛ける。人間の背後から。振り返り、ライリの姿を見れたのは数人だった。


ドサドサッドサッ…


殆んどの人間が腕や脚から血を噴き出しながら倒れていく。声は出ない。というより、出せない。ライリの光を遥かに超えた速度の攻撃は、人間の柔な体を易々と切り裂き、脳に送られる激痛を表す信号によって意識を飛ばした。

残ったのは、僅かに5人。槍を持つものが2人。剣を持つのが1人。斧を持つのが1人。短剣を2本持つのが、1人。

「…で、どうするね?貴様らでは勝目はあるまい」

ゆっくりとした、ライリの言葉。5人の人間は身動きが取れない。

「う、うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」斧を持った人間が叫びながら突撃してくる。それに続いて、他の4人も。

「勇気があるのは良いことだが……無謀な勇気は、『蛮勇』と言うのだよ。覚えて置くことだ」

ライリの言葉を覚えているものは、いないだろう。すでに、気を失っているのだから。


† † †


これは、ライリと言う名の魔王の物語。

こんな出来事も、ライリにとっては単なる日常の出来事。

ライリの穏やかな日常の物語が、紡がれる。

いかがだったでしょうか?

魔王、ライリの登場シーンだったので、カッコいい所を書いてみました。

後書きから読む派の人は、楽しみにしてください。


なお、作者は受験生でかつ気まぐれな人間なので、更新は不定期です。申し訳ありません。


それでは、また次話でお会いしましょう。

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