1 僕
また、アラームの音楽を変え忘れていた。
朝6時半、スマホから僕の歌が流れる。
去年までは、それだけでちょっとわくわくしたのに。すぐに布団から出られたのに。
今は、そんな音聞きたくもない。
アラームを止めようと思って手を伸ばしたら、スマホが手の甲に当たって床に転がった。
床から僕の歌声が流れ続ける。
早く止めたい、でも体が思うように動かない。
仕方なく僕は両耳を枕で塞いで、頭から布団を被った。
早くアラームが止まってくれないかな、と思いながら。
でも、アラームはなかなか止まらなかったし、止まった後も歌声はしっかりと僕の頭の中で流れ続けていた。
結局、僕は7時に母にたたき起こされて、食欲も時間もなかったので朝ご飯を食べずに、高校に向かった。
僕は現在16歳、本来なら高校二年生であったはずだ。そのはずだったのに、、。
僕は今、一年生の教室にいる。
要するに 「留年」 だ。
僕はこれから二度目の一年生生活を送ることになる。
いや、一・五度目というほうが正しいかもな。
今朝電車に乗ってたとき、ふと、僕なんかが高校に行ったって意味ないのにな、って考えてた。
友達も彼女も作れるわけがない。高校に行こうが行けまいがどうせ普通の生活を送れるわけがない。
第一、微塵も行きたいなんて思わない。
だって、
僕はもう二度と声が出せないのだから。