俺の住むこのアパートにはごみの回収所がない
玄関のドアを開ける。
出勤ついでにごみを出し行くのが俺の習慣なので、右手に鞄、左手に袋という状態だ。正直、戸が開けにくいが、もう慣れた気がする。
外に出て鍵をかけていると、隣の七号室の戸が開いた。
「おはようございます」
そういって相手に顔を向ける。
「・・・⁉」
誰だ?昨日のあの月村洸ではない。髪が短くなっているし、心なしか、背が小さくなったように思うのは俺だけだろうか。言うならば、部活の後輩の元気な男子的なイメージだ。
「あの、どちら様で」
「ああ、はじめまして。月村です。この度、隣に引っ越してきました」
知っているけどな。だって、昨日会ったよな。忘れているのか、ふざけているのか、別人なのか。
一応、スルーしておく。
「今、ごみ捨てようと思っているんですけど、どこに回収所があるか分からなくて。教えてもらえますか」
「は、はい」
「じゃあ、行きますか」
だんだんとごみを捨てに行く話にまとまった。
横目で隣を歩く洸さんを見る。
…とても陽気だ。やはり昨日の冷たさは何だったのだろう。
まず、この人は昨日と同一人物なのか。…なんとも言えない。
「どうしたんですか。ずっと僕の方を見ていますね」
急に声をかけられて驚いた。
「いや、隣人って珍しいから、です」
我ながら何言っているのか。
「このアパート、ボロですからね、入居者いませんよね、さすがに」
なんと、会話がつながった。
「ここ二、三年まったくなくて…」
「そうそう、今日の朝気が付いたんですけれど、水道管が取れかけているみたいで」
うん、何の話だ。
「ここが回収所です」
そう教えると、お礼を言われ、俺と洸さんはごみを捨てた。
「僕、初めてこの地域に来たので、何もわからなくて。でも、初対面なのにこんなに優しい誠さんのおかげで楽しくやって行けそうです。ありがとうございます」
いや、そう改まって言われても…。
って、何照れてんだ、俺!
「…ありがとうございます。というか、俺たち、昨日の夜、会ったじゃないですか。初対面ではないと思いますが」
「えっ」
洸さんの顔がゆがんだ。
「あ、人違いだったらすいませんが…」
「あんた、何者だ」
問題、感想がいただければ、私は何メートル飛ぶでしょう?
感想をクダサイ!お願いします!
今回も読んでくださり、ありがとうございます。