表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
piano  作者: 永島大二朗
62/143

嵐の予感(八)

「マスター、デジカメありますか?」

 不意に声を掛けられて、増田は何だか判らなかった。しかし、祐次が右手の人差し指で、シャッターを押す仕草をしていたので、カメラを所望しているのだと判った。

 新メニュー作成の時に使用しているデジカメが、店の奥にあったのを思い出す。

「ありますよ。ちょっと待って下さい」

 そう言って奥へ行くと、デジカメを持って来て、祐次に渡す。祐次はそれを、真由美に渡した。

「じゃぁ、これで、店の前にある花壇を、撮ってきて下さい」

 そう言うと、コーヒーをもう一杯お代わりする。


 外はさっきまでの雨が止んで、水溜りを車が跳ねながら走っている。花壇の花は、今頃水滴を輝かせながら、太陽に向かって、のんびりとあくびをしているだろう。


 しかし真由美は、何の目的で言われたのか、判らない。それでも、そのデジカメを持って外へ出ると、しゃがんで花壇の花を撮影した。

 Slowtimeの前には、レンガで出来た花壇があって、四季折々の花が咲いている。増田は、意外とマメな性格なのだ。


 その様子を見て、祐次は奥のピアノの所へ行くと、直ぐに戻ってきた。そして増田に言う。

「ちょっとピアノ、お借りします」

「はい。どうぞ」

 言われなくてもSlowtimeのピアノは、何時でも、誰でもウエルカムなのだ。それは、ピアノ好きなオーナーの方針でもある。

「後で元に戻しますので、ご安心下さい」

「えっ?」

 何かピアノに細工をしたのだろうかと増田は思った。

 あのピアノは誰が弾いても良いが、大切な物なのだ。そこは判って貰わないと困る。

 一瞬で、何をしたのだろう。それを聞こうとした。

「撮ってきました」

 カウベルを鳴らして真由美が戻ってきた。増田は視線を祐次から真由美に戻す。

 祐次は、真由美からデジカメを受け取ると、不慣れな操作であったが、それを覗き込んだ。増田も覗き込む。


「貴方はやっぱり、プロの芸術家ではありませんね」

「はぁ?」

 次々とボタンを押して確認をする祐次が、真由美に言った。

「こんな画像では売れません。素人じゃないんですから、もっと、まともなのを、お願いします」

 そんな要求、真由美には、言い掛かりに思える。

「いきなり写真を撮って来いと言って、それはないんじゃないですか? それに私、写真なんて、撮ったことありません」

 祐次はデジカメを放り出す。

「そうですか。それは大変でしたね」

 確かに真由美は、写真を撮るより撮られることの方が多かった。最近は少なくなっていたが。

 しかし祐次は、真由美の言っていることを、単なる言い訳として受け取った。


「ちょっと、あちらに座って頂けませんか?」

 祐次は窓際の『一番奥の席』を指差した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ