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piano  作者: 永島大二朗
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Slowtime(九)

 祐次は、今年初めての有給を行使して、ウィーンにやって来た。

 春とは言え、雪の残るこの時期は、観光客も少ない。周りを見渡しても、澄み切った青空があるだけで、日本語には、お目に掻かれない。

 日本語だけでドイツ語圏を歩く。結構大変。しかし、予め住所をドイツ語にして紙に書いてきたので、空港から市内まで、タクシーで行くことにした。大事なのは、目的地に着くことだ。


 ぼんやりとタクシーに乗っていた祐次は、運転手が振り向いたので我に返る。タクシーが止まったのは裏通りの角、人影もまばらな路地だった。

 テレビや雑誌で見たことのある様な古い町並みが、窓の外に続いている。


 タクシーを降りた祐次は、路地をコトコトと走り去るタクシーが、角を曲がって見えなくなるまで見送った。別に、そうすることが日本流の礼儀という訳ではないが、周囲三百六十度を見回して、そこに立ち尽くす、理由にはなった。

 日陰に残る雪を見て、祐次は両手を合わせて顔に持って来ると、ハーっと息を吹き掛ける。そして、大きく深呼吸をして、冷たい空気を肺の奥まで詰め込んだ。祐次はそれで冷静になれた。


 左右を確認して路地を渡ると、角にある店の前に立つ。看板は、『CLOSE』になっていたが、勇気を振り絞ってドアを開ける。

「Guten Tag. Kann ich Ihnen helfen?」

 Das Ausland in aller Wahrheit dort. Yuji sas, wahrend sie sagten, "Yes Yes" auf dem Schalter.

「Die Reihenfolge bitte」

「KO-HI-」

 Die Aussprache war schlecht. Noch ein.

「Tea please」

「Es hat verstanden.」

 Anscheinend scheint es gelaufen zu sein. Es fuhlte sich erleichtert.

 Aber die Kellnerin fing an, uber ein langes Wort zu reden.

 Yuji unterbrach ihm panicking.

「Sorry.Japanese version please.」

「Bestimmt.」

 Jene, die verstehen, das japanische Sprache ersetzt wurde.


「お待たせしました。ご注文は紅茶ですか?」

 日本語の判る、青い目の外国人が祐次の所にやってきた。その瞬間、後ろのテーブル席から「くすっ」という、小さな笑い声が聞こえた。

「はい」と祐次が答えると、その店員は、大きく息を吸ったので、祐次は嫌な予感がした。

「本日の紅茶は、セイロン島で山田さんが丹精込めて育てた苗木と、田中さんが選び抜いた苗木を掛け合わせ、最高品質の紅茶を作り上げたという伝説を聞きながら、佐藤さんが実生から大事に育てた品よし、味良し、香り良しと三拍子揃った茶葉だけを厳選してブレンドされた他にはない味わいと良く似たティーパック入り紅茶と、中国は福建省で加藤さんがウーロン茶にするはずが、うっかりものの竹内さんは発酵させてしまい、やむなく吉田さんによって紅茶になりました。という感じの味がするティーパック入りの紅茶です。どちらになさいますか?」

 店員は一気に言うと、にっこりと微笑んで祐次を見た。祐次は答える。

「じゃぁ、セイロン島で山田さんが丹精込めて育てた苗木と、田中さんが選び抜いた苗木を掛け合わせ、最高品質の紅茶を作り上げたという伝説を聞きながら、佐藤さんが実生から大事に育てた品よし、味良し、香り良しと三拍子揃った茶葉だけを厳選してブレンドされた他にはない味わいと良く似たティーパック入り紅茶でお願いします」

 店員は、少し眉毛を動かして、祐次を見た。しかし、平然とした顔で軽く頭を下げると、祐次に確認をする。

「かしこまりました。ご注文復唱させて頂きます。セイロン島で山田さんが丹精込めて育てた苗木と、田中さんが選び抜いた苗木を掛け合わせ、最高品質の紅茶を作り上げたという伝説を聞きながら、佐藤さんが実生から大事に育てた品よし、味良し、香り良しと三拍子揃った茶葉だけを厳選してブレンドされた他にはない味わいと良く似たティーパック入り紅茶ですね」

「あ、やっぱりコーヒーにして下さい」

「かしこまりました」

 祐次は、日本のSlowtimeと同じメニューだったので、安心した。


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