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piano  作者: 永島大二朗
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2004年9月26日 春香の日記

今日秘密の部屋に入れてもらった。この日記もそこで書いている。

この部屋は凄い。宝の山だ。祐次さんのカメラとレンズが大量に置いてある。

冗談で売ったら怒る? って聞いたら、殺すって言われた。

私はまだカメラより大事にされていないらしい。


ショック! ショーック!


でも、当然よね。お情けで住まわせて貰っているだけだし、苦労して買った物を、居候の私が売ったら、そりゃぁ殺したくもなるよね。

悪いこと聞いちゃったなぁ……

しかもその大事な部屋に、私の物を入れるスペースまで

作ってくれたのに……


私にはこんな高価で大事な物はない。何もないよ。

でもスペースを作ってくれた。本当にありがとう。

それなのに、私は本当に馬鹿だ。

日記を読んだら殺すなんて言ってしまった。

祐次さんは笑っていた。

手で拳銃を作って撃ち合った。それはそれで楽しかった。

でも冷静に考えてみると、こんな日記読まれたからって、

私は何も失う物はない。

それを祐次さんの宝物と同じにしちゃいけない。


私が「嘘は嫌い」だなんて言ったもんだから、

祐次さんは嘘を付かない。

私が「お酒が嫌い」と言ったらお酒も飲まないし、

あの人はそういう人。やさしい。とてもやさしい。

その人に「殺す」なんて言った。出来るはずがない。


もし、あの人が私の日記を読んだら、

私は約束通り、あの人を殺さなければならない。

嘘が嫌いと言った私を気遣って、嘘を付かない人を、

私は殺さなければならない。

嫌だ。そんなの嫌だ。

どうしよう。



きっとあの人はやさしいから「嘘」と言えば許してくれる。

許してくれたとしても嫌だ。



でも、私は祐次さんを殺せない。

なんて馬鹿なことを言ってしまったんだろう。

ごめんなさい。許して。

ああ、でもここに書いてもあの人には読まれない。

読んでもらえない。

あの人はそういう人だ。判っていたはずなのに……


私が読んで聞かせればいいのでは?

いや、だめだ。そんな恥ずかしいことは出来ない。うーん。



そうだ! 子供が出来たら、子供に読ませよう。

キャハハ! 私天才! さり気なく子供の目に届く所に置いといて、私は留守にすれば良いのよ! そしたら子供が「これなーに?」と言って祐次さんの所に持っていく。

あの人は子供好きそうだから、きっと子供の言うことなら

聞くはずだ。

うん! 我ながら名案!

そうしよう。決定。この日記は子供に読んでもらう。

そうしたら私も嘘をついたことにならないし、

祐次さんも子供が読み聞かせたのなら、

読んだことにはならない。

スゴイ! ヤッターー!


チョット待って。子供? 祐次さんの子供?

キャー! 私達、まだ結婚はおろか、一緒に寝てもいないのに!

キャーキャー! ど、ど、どうしよう! 恥ずかしい!

何て飛躍した考えなのっ! 私ったら、なんてこと考えてるの!


ど、ど、どうしよう。子供なんて贅沢言わない。

誰かこの日記を見たら、あの人に伝えて欲しい!






あの人のカメラを売ったら、私は本当に殺されるのだろうか。

ちょっと売ってみたい。

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