変身4
ある小説や、映画でよく耳にする言葉がある。家族なんだから当たり前でしょ?って言っている母親らしき女性がぎゅーっと。自分の子供を抱きしめているシーンを見かける。
家族とは何だろう?
私はただの血のつながりのようにしか思えない。
人なんだからこの人が嫌いという本心はたとえ家族だろうと持っている。そう、結局は家族とは他人なのだ。ただ血のつながっているだけの他人。家族だから守るとかいうのが本当なら。虐待で子供たちが死んだり傷つくことが起こるわけがない。
でも.........
あれから数日がたったことだった。一週間ぶり?だろうか幸崎さんが登校してきた。席が近いこともあって、僕は「おはよう」と声をかけた。すると一瞬驚いたような顔をした幸崎さんだったが.......。
「おはよう。........アッ、そーだ。私が歴女なの黙っていてね?」挨拶は返してくれたものの、念を押すようにそう言った。そう来るとは微塵も思っていなかった僕は気圧されたように「は、はい」と答えた。
幸崎さんが席に着くのを見届けると、僕は昨日すっかり忘れていた今日までの課題に目を通し、シャーペンを握って書き始めると、最初は少なかった人が少しずつ増えてきて一気ににぎやかになった。それと同時ぐらいにやり忘れた課題が終わり、シャーペンを放り出すと、伸びをすると前に座っていた幸崎さんのカバンが目に入った。学校指定のカバンに付けられていたのは、小さなキーホルダーだった。レジンのようなもので作られたのかキラキラと輝いていた。ーーーーー海みたいだと思った。小さいのに異様に存在感があって戸惑った。もちろんいい意味で。
「それ.........................................。」
僕は自分の意思とは関係ないように口が動いた。
自分に話しかけられていることに一拍遅れて気が付いた彼女は、カバンについていたそれを手に取って言った。
「ん?これ?お兄ちゃんにもらったの。誕生日プレゼントだってね。といっても、昨年度のやつなんだけど....。」
「そうなんだ。......いいお兄ちゃんなんだね。」
「いや、そんなことないよ。」
謙遜のように聞こえたが、冗談に聞こえず、またどこか沈んでいるような気がしたのは、僕の気のせいだろうか?
疑問に感じながらも、僕は笑って「そっか」としかいうことができなかった。