出会い3
続き書きました。今回は、文学好きには、面白く仕上がっているのではないかと思っています。
家に帰ると、母に友達できたん?新しいクラスどうやった?と質問攻めを受けた…。心配性の母は、小6の時から、友達に関することを聞いてくるようになった。友達をつくれない僕が悪いんだけどね。自嘲気味になって鼻で笑うように小さな声でつぶやいた。そして、母に
「うん。まぁそこそこ。」と言い適当に流しておいた。あっ、部活することになったのを報告し忘れていた。階段の真ん中ぐらいのとこから、キッチンに聞こえるように、大きな声で叫んだ。
「僕。本部に入ることになったから。明日少し遅くなる。入部届の保護者印にハンコよろしく。」
「えー!そうなの?あーあの凪輝が、部活に…。」ブツブツ言っている母を無視して僕は、自分の部屋へと急いだ。
電気をつけ、鞄をほうり投げると、机に座り早速 本を開く。すると周りの音が消えた。
━━1時間程たっただろう。面白すぎて時間を忘れていた。こんなに夢中になれるのができたのは、3年ぶりだ。
ザックリ内容を説明すると、
(主人公のグレゴールが朝目を覚ますと毒虫になっていた。物語はその強烈な内容化から始まるグレゴールとその家族の物語だ。その後グレゴールは自分の部屋でひっそりと生活することになった。彼の世話をするのは妹で、彼女は食べ物を差し入れたり、また部屋の掃除をした。グレゴールの食べ物に対する嗜好はまったく変わってしまっており、いまでは新鮮な食べ物を口にする気にはなれず、腐りかけた野菜やチーズに食欲が湧くのだった。
そのうちグレゴールは部屋の壁や天井を這い回る習慣を身に付け、これに気が付いたグレーテは、這い回るのに邪魔になる家具類を彼の部屋からどけてやろうと考える。グレーテは母親と協力して家具類を運び出しはじめ、グレゴールも当初は気を使って身を潜めているが、しかし彼女たちの会話を聞いてふと、自分が人間だった頃の痕跡を取り除いてしまってもよいものかという思いを抱く。グレゴールが自分の意思を伝えようと、壁際にかかっていた雑誌の切り抜きにへばりつくと、その姿を見た母親は気を失ってしまう。ちょうどその頃、新しく勤めに就いていた父親が帰宅する。事態を悪く見た父親はグレゴールにリンゴを投げつけ、それによって彼は深い傷を負いあまり動けなくなってしまった。
父親の投げたリンゴはグレゴールの背にめり込んだままとなり、彼はその傷に1ヶ月もの間苦しめられた。その間に一家は切り詰めた生活をし、母も妹も勤め口を見つけて働いていた。また家の一部屋が3人の紳士に貸し出される。
ある日、居間にいた紳士の一人がグレーテが弾くヴァイオリンの音を聞きつけ、気まぐれからこちらに来て演奏するように言う。一方グレゴールは彼女の演奏を聴き、自室から出てきてしまう。グレゴールの姿に気づいた父親は慌てて紳士たちを彼らの部屋に戻らせようとするが、紳士たちは怒り、即刻この家を引き払い、またこれまでの下宿代も払わないと宣言する。
失望する家族たちの中で、グレーテは「もうグレゴールを見捨てるべきだ」と言い出し、父もそれに同意する。グレゴールは家族への愛情を思い返しながらそのまま息絶える。
翌日、グレゴールはすっかり片付けられる。そして娘のグレーテは長い間の苦労にも関わらず、いつの間にか美しく成長していた。両親は、そろそろ娘の婿を探してやらなければと考える。)
なんともまぁ残酷だった。何がかというと、家族のグレゴールに対する態度だ。毒虫になって毛嫌いするのも、わからなくはないが、グレゴールの気持ちを考えていると、それをよしとすることもできない。
僕は、複雑な気持ちを抱えたまま、床についた。
次の日。僕は、図書室へと急いだ。二人はもう来ているだろうか。
さっきまでガヤガヤしていた廊下は図書室が近づくに連れて静かになっていく。
図書室へ入るともう二人はもうそろっていた。仁王立ちした薫さんがいた。
「変身 読んできたよね?」
もしここで「読んできてません。」といったら、僕は鷲野先生のように、平手打ちを食らうだろうか。………女子って怖い…。というか、薫さんのイメージと違うんだよなぁ…。薫さんはもっと純粋で可愛いと思ってたんだが…。
「なんか余計なこと考えてない?凪輝くん?」
「ちゃんと読んできましたよ!…むっちゃくちゃ面白かったです。」
薫さんはエスパーか?そう思いながら、薫さんの言葉を遮るようにして返答した。
「そうか。じゃぁ、座って感想を言い合おう。」という鷲野先生。
なんだかいつもニコニコしているのに雰囲気が急に引き締まったような感じがする。なんだか、この人は絶対で、この人の言っていることは全て正しいとも思えてくる。それくらい、この先生は空気を操るのがうまい。
驚かされるのは、ここだけではなかった。
━━「.......まず、凪輝。お前の感想を言ってみろ。疑問でも良いぞ。」
「.....はい。まず、この物語は、家族の在り方について書こうと思ったのではないでしょうか?」
「どういうこと?家族がテーマなのはわかるんだけど、在り方ってどういう意味?」
「えっとですね......。薫さん。この話は、もやもやする?部分が多いんですよ。例えば、一番謎なグレゴールが毒虫になってしまったこと。なぜ毒虫になってしまったかは読者の僕たちには計り知れないでしょう。ですが、これだけは言えるんです。カフカが僕たちに何か訴えようとしたということです。僕たちというのは、読者のことです。」
「それが、家族の在り方ということだな。」
「はい。でも、それが具体的に何か。というのは僕にはわかりません。」
「なるほどな。........凪輝お前面白いな。続けて、薫も言ってみ。」
「はーい。私も、始まり方が面白いと思った。誰も、そんな突拍子な始まり方をするなんて誰も考えない。それほど、カフカという人物が物語を通じて、何かを伝えようとしていたのかもしれないと、思った。」
「フぅ~ン。いい感想やな。........二人ともいいところに目を付けた。んじゃ、私も二人が分からないと言ったその何かを推測しよう。」
空気が変わったことを肌で感じながら、僕は、鷲野先生の話に耳を傾けた。
面白かったでしょうか?
次回は、鷲野先生がやってくれますよ!