出会い
1話目です頑張ります。
僕は僕を呼ぶ声で遠い夢から現実へと引き戻された。春を告げるうぐいすの鳴く声がする。ゆっくりと目を開けると、視界いっぱいに男の顔が映る。寝ぼけた頭が知らせてくれたのは、今日が始業式ということと、クラスメイトの名前を思い出せないということだった。僕のぼーっとした様子に呆れたのか、男が、仕切りの声をかけてきた。
「おい。西原~。先生が来るぞ!」
ほんと誰だっけ?まぁいっか。誰であろうと僕には関係ないし、日常生活に支障もない。
「了解」とだけ答えておいた。いつの間にか新しいクラスにウキウキした様子のクラスメイトがいた。
ガラガラという音が聞こえた。するとさっきまで、ザワザワしていたのに、突然波のような静けさが広がった。教室に入ってきた男のせいである。おそらくうちの担任だ。
いかにも、女子がきゃぴきゃぴ言いそうな人の良さと、なかなかに整っている見た目。これがいわゆるイケメンというやつかと納得してしまうほどだった。まるで、ホストみたいである。陽キャの世界だけで生きてきた人のようだ。見た目で決めつけてはいけないが僕の苦手なタイプ…かもしれない。
「私の名前は、鷲野 海人です。今回私の母校である、この中学校で仕事ができることがうれしいです。一年間よろしくお願いします。あっ、ちなみに私は既婚者です。つい最近、妻が妊娠しまして、抜けるときがあるかもしれないので伝えておきます。」
最後の既婚者どうとかいうのはどうでもいいが、頼れそうな先生であることがわかる。僕は、ほーっと息をついた。
僕は新学期が嫌いだ。なぜなら、いちいち自己紹介をしなければいけないからだ。放っておいてほしい。どうせ僕は、友達を1人も作る気がないのに。でも、目立たないように生きていくには、するしかないのだ。順番が回ってきた。いつも同じ自己紹介を繰り返す。
「僕の名前は、西原 凪輝です。……好きな物も得意な物も特にないです。…よろしくお願いします。」と小さな声で発表する。だいたいの先生は、大きな声で言え!聞こえないだろ!というが、誰も僕の自己紹介に興味なんかないんだからいちいち大きな声じゃなくて良いだろう。やっと、自己紹介地獄から、解放され安堵する。あとは、聞き流すだけだ。聞き流すだけだがだいたいのクラスメートは、「みんなと仲良くなりたいのでたくさんはなしかけてくれるとうれしいです。よろしくお願いします。」というがそんなに仲良くなりたいんだったら自分から話しかけてくればいいのに…。って思っちゃうんだよな。
僕ってときどき思うけど荒んでいるなぁ…。
そんなことを考えながら聞いていたが、一人だけ聞き流せなかった。
あっ、あの子同じクラスだったんだ。あの子というと、峰川 薫 学校のマドンナとかどうとか噂で聞いた子だ。確かに人間に興味のない僕でも、かわいらしいと思うほどだ。くりっとした目に、黒のストレートヘア。微笑みがまぶしかった。まぁ僕みたいなのが一生関わることのない人である。
と思っていた矢先のことだった。
「ヲタクの私たちが乙女ゲームの世界に転生するとどうなるのか」もよろしくお願いします。