家族~幸崎姫~2
職員室の近くまで来てようやく私は足を止めた。普段運動しない反動が大きくうずくまって息を整える。やけに静かで涼しげな職員室前の廊下。その静けさがどうも心が落ち着かない。
今日は暑かったから冷房でも入れているのかも。
ようやく少し落ち着いてきた私はこれからどうしようかと悩む。
図書室に帰るのがなんとなく気まずい。しかし荷物も、なんなら上履きまでおいてきたため帰るに帰れない。
とりあえず、そのあたりぶらぶらしてから図書室へ向かおうとを気だるい体を無理やり動かした。
たまに通る後輩がどうしたのかという顔でこちらを見てくるが話しかけてくる人はいない。なんだか自分がみじめな気がしていたたまれず、自分の汚れて黒くなった靴下を見ながら足を動かす。
気が付くと3つあるうちの一番奥の棟の理科室まで来ていた。そこは図書室と同じく吹奏楽部ぐらいしか放課後は通らないところなのでとても静かだった。
ちょうどいい。ここで一休みしようと廊下の端のほうに腰を下ろす。
馬鹿な自分にあきれ、後悔しても後悔しきれない。
ぼーっとしていたせいか近づいてくる人に気が付かなかった。
「姫さん???」
恐る恐るといったように優しく心地の良い声がした。
「岸田先生.........。」
私たちの学年の学年主任兼理科の先生であるだった。
少し曲がった背骨と眼鏡をかけていて、眼鏡命なんていう独特の白衣を羽織っている。その手にはDNAの模型キーホルダーのついた理科室のカギを持っていた。
「とりあえず、中入ろうか。」
「.......はい。」