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突然の異変2
その日の放課後、僕はめんどくさい係の仕事によって、部活開始から約30分も過ぎてから、部室である図書室へとむかっていた。
学校一薄暗い廊下の窓から見えるこの学校自慢の桜の木は新緑の葉が生ぬるい風に吹かれゆらゆらと揺れている。そのとても明るい緑色を見ていると不思議なことにこころが落ち着く。
図書室の前まで来て、そのドアを開けようとした瞬間だった。
ガラガラ
扉があいた。もちろん僕が開けたのではない。そこから一人の少女が飛び出してきた。思わず、後ろに飛びのくと彼女はこちらを見ようともせず走っていった。上履きも履かずに。上履きが靴箱に入れられたままだった。走り去った彼女の後ろ姿をみながら思った。
幸崎さんだったなぁ。今の。
いつも笑顔の彼女の瞳が潤み、その頬には大粒の涙があった。
彼女が出てきたその図書室を覗くと、そこにはぼうぜんとした様子でこちらを見る薫さんと、ホストのような笑みが顔から消えた鷲野先生がいた。