体験入部2
薫さんが、一年生たちに部活の活動について丁寧に説明した。その間、僕と幸崎さんはというと.......
「これどのくらいまでやるの???????」
「鷲野先生が探偵ゲーム考えてくれていなかったら、ヤバかったね。」
「西原くん。そういうことじゃなくてさ。何で、鷲野先生がいないからって私が全部作んなきゃいけないの!?」
そう鷲野先生が作ったのはトリックだけで、文章を打って作るのは僕たちなのだ。政府の取り組みによって、小、中学生にタブレットが配付されている。それを使っているのだ。
自分用というかっこいい響きに、中学1年生はもちろん3年生も多くの人が活用している。まぁゲームをしたり、悪い面でも多くの人が利用している。教育委員会のほうも色々と、対策をしているようだが、全てを防げていないことが現状だ。
「あと、ちょっとだしやっちゃわないと。........幸崎さん半分やるからおいておいて。」
「西原君。ありがとう。本気で終わらす!!」
そういって二人は再び、タブレットの画面に向き合った。
5分が過ぎたところだろうか。幸崎さんができた!!と声を上げたのに気が付いた僕は、コピーしに行くよと、タブレットを片手に、立ち上がって、コピー機のある職員室へ廊下を走らない程度に、ずんずんと進んでいった。遅れたら薫さんが怖い。
脳裏に出てきたのは、可愛い女の子、というより般若だ。
い、急ごう...............。
図書室の真下に職員室があっていくのは、簡単だがこの時間帯だと、会議をしている可能性も否定できずとてつもなく、入りにくい。職員室のドアの前に立った僕は、覚悟を決めドアに手をかけた。そして、ゆっくりと開けようとすると、ドアが勝手に開いた...。
「えっ??」
僕は驚き、とっさに後ろに下がった。中から一人の男子が出てきた。つけている眼鏡のせいか真面目に見える。彼は僕の名札を見たのか「すいません。」と敬語で返してきた。「い、いえ。」
なんだか、威圧感があり、その敬語に一切、敬意は感じられなかった。また、その人は一年生のようで、僕より背が低かった。
そして、不思議なことにその後輩から目が離せなかった。
技術のちょっとおちゃめな高齢の男性先生にコピーをしてもらった紙を大量に抱えた僕は、図書室へと急いだ。
窓からは春特有の暖かい日差しが差し込む。その暖かさが胸に届くようで、気分がとてもいい。晴れていくようだった。
図書室の扉を開けると、早く来いと言わんばかりの表情をした薫さんがいた。
やばいかもしれない。
そんな焦りすらも、楽しんでしまっている僕はその変化に気が付かないふりをした。
繰り返すことが怖いから。