出会い~薫サイド~
私の学校自慢の桜が校門のあたりで風に揺れて雨のように花びらを降らしていた。そこを横切ると、駐輪場へと行き、自分の自転車を止める位置を思い出しつつ、自転車をとめ、ヘルメットをとった。そして軽く息をつく。
いよいよ三年生だ。私は、本部の部長として、今現在私だけの本部を復活させなければならない!
と使命感に燃えていた。靴箱でクラスを確認してから、三年一組の教室に入った。
教室に入ると、一番最初に登校できたと思っていたが先客がいたようだ。一人の男子生徒が始業式にも関わらず、小さな寝息を立てて眠っていた。近づいて顔を覗くときれいな顔のパーツをしていた。えーっと確か、西原......な..凪輝....だったと思う。2年の2学期ぐらいに転校してきた子で、同じクラスではなかったけれど、この田舎の学校に転校してくること自体が珍しく、話題になっていたが目がほとんど隠れる長い前髪なのと話しにくい雰囲気で、誰も話しかけようとしなかったらしい。
そして、部活にも所属していない......
イコール、本部に勧誘できる。
今考えると、どうかしているとは思う。けどそんときはそのことしか考えていなかった。
それから、驚くことに、担任は義理のいとこの鷲野先生だった。クラスの女子にイケメ~ンと騒がれていたが私はこの人腹黒ですよ?と心の中で思うにとどまった。目が合った。これからよろしく。と口パクでいうと海ちゃんは顔をしかめた。
そして、西原君が自己紹介していた。
「僕の名前は、西原凪輝です。……好きな物も得意な物も特にないです。…よろしくお願いします。」
────────この人。元々陽キャかな。勘だけど、空気が読めすぎている気がした。存在感があるし、ノリを知っている人間だ。
陰キャはどちらかと言うと、周りが見えなくなったり、完全に空気になることが多い。
この人がなんで、わざわざ陰キャというものを演じているのかが知りたい。
最初は適当に本部に誘おうと思っていたが、単純に興味がわいた。なんで、陽キャで成功していそうな人が陰キャに成り下がったのか。無理に聞くつもりはないけれど、仲良くなれそうな気がする。
「西原君だよね?」
何かが始まるそんな微かな確信が私の中にあった。