しんばる
「はい、ミュージックちゃんねるの柴田です。チャンネル登録お願いします。今日は久しぶりのコラボ企画ということで、シンバル評論家の新張叩男さんをお呼びして知られざるシンバルの魅力に迫っていきたいと思います。それでは、新張さんよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「新張さん、さっそくお聞きしていきたいと思うんですけど、そもそもそもシンバルっていつから使われてるんですか?」
「シンバルは古くは13世紀頃、説によってはそれより古くから西洋社会において演奏に用いられていたそうです。しかしトルコやアルメニア等の中近東地域が発祥であるという説もあります。実際に現存するシンバルメーカーはトルコ創業の会社が非常に多いです。」
「なるほど。で、これはちょっと素朴な疑問なんですけど、オーケストラ等で演奏する際ってシンバルの出番って下手すると2、3回だったりしますよね。まあ、これは怒らないでほしいんですけど正直僕たちでもできるんじゃないか、とか思ってしまう時があるんですけど、その辺は実際の所どうでしょうか。」
「ええ、いい質問ですね。これは。」
「おお!そうですか!いただきました、いい質問ですね。」
「これに関しては19世紀後半まではプロとアマチュアの境界線は非常に曖昧であったと言わざるえないと思います。」
「ほー、なるほど。それでは20世紀からその状況が変化してきたと?」
「はい、具体的には1904年ですね、ドイツのシンバル奏者 ウィリアム・シンバルがベルリン交響楽団在籍時に録音したブラームスの交響曲98番で見せたクォーターハーフ奏法が転機となりました。このレコード今廃盤になっているんですが、一聴しただけでそれ以前のシンバル奏者との違いが分かると思います。」
「クォーターハーフ奏法?とはどんな奏法なんでしょうか。」
「クォーターハーフ奏法というのは演奏時の腕の角度が45度になる奏法のことです。それまでは手の角度が45度であったり首の角度が45度であったりした奏者はいたのですが、腕の角度が45度というのは前代未聞でした。これはウィリアムの生まれつき角度に恵まれた体つきだからなせた技です。ウィリアム・シンバルはシンバルに革命を起こしました。今までクラシックの一楽器にすぎなかったシンバルの地位を押し上げ、歴史上初のシンバルヒーローとなったのです。」
「なるほど、そうするとこの辺りからヨーロッパの方で黎明期のシンバルシーンが形成されていくわけですね。」
「はい。しかし初期のシンバルシーンにおいてはウィリアム・シンバルの後追い奏者が少し注目されたもののフォローワーの域を出ませんでした。デニス・ライアン・シンバルカルテット、ドリームシンバルトリオ、どれも魅力的なレコードを出していますがスマッシュヒットにはいたりませんでした。そうした膠着状態のシンバル界に彗星のごとく現れた男がいます。それはヨーロッパではなくアメリカ生まれの青年でした。」
「ボブ・シンバルですね。」
「そうです。彼はシンバル一枚で各地のライブハウスを周りながら実力をつけ、1939年ラジオ局の大物プロデューサーに目をつけられレコードデビューすることになります。ファーストアルバム、「シンバルイズベスト」はシンバルだけではなくポップスの歴史上の大事件でした。シンバルだけで構成された楽曲、ヨーロッパサウンドにはない土臭い音色で奏でられる典型的なアメリカンシンバルサウンド、世界大戦に向かう世界に対して疑問の声を投げかける様な悲しみを帯びたシンバルさばき、どこをとっても名盤と言える様な文句のつけようのないレコードです。」
「しかしボブ・シンバルは人気絶頂の1941年に23歳の若さで他界してしまいます。演奏中に自分のシンバルに挟まれて亡くなるという、痛ましい事故でした。新張さん、まあこれはら彼らしいといっちゃ彼らしいんですかね?」
「噂によると、生前彼はシンバルの強度を高めるためにプレス工場で自分の体を人間プレス機に改造してもらっていたそうです。これは都市伝説の様な話ですが彼のどこまでもシンバルを追求するアティチュードからすれば、さもありなんと言うか、そんな話ですね。」
「なるほどー。まだまだ新張さんにはボブ・シンバル秘話をお聞きしたい所なんですが、ここで時代は少し飛んで1950年代ですね。シンバルの歴史にとっては外すことのできないプレーヤーがいるということで、お聞きしていきたいんですけど、新張さんお願いします!」
「はい、そのプレーヤーの名前はジョン・ケージと言います。」
「ジョン・ケージ!ジョン・ケージってあのジョン・ケージですか?あの人って現代音楽の人ですよね?シンバルもやられてたんですか?」
「正確にはエアシンバルですね。」
「エアシンバル?」
「ええ、今までシンバルというのはウィリアム・シンバル、ボブ・シンバル含めて体で演奏するのが主流でした。しかし彼は違いました。心でシンバルを叩くことに成功したのです。」
「?・・え、ちょっとどういうことか良くわからないんですけど。」
「ええ、まあ言葉だけでは良く分からないと思いますので演奏を聞いてください。ジョン・ケージで「4分33秒」です。」
〜4分33秒の沈黙〜
「いかがですか?」
「・・・・新張さん、ジョン・ケージの4分33秒は凄い有名な曲なんで僕も知ってますよ。あのー、要するに4分33秒の沈黙の中に客席の咳払いだとか服の擦れる音も含まれていて、それも音楽なんだということですよね。でも、この曲ってシンバルの音入ってますか?」
「入ってます。ジョン・ケージの心のシンバルの音が入ってます。耳では聞こえないと思いますが、心で聞けばちゃんと聞こえます。」
「本当ですか?それってジョン・ケージも言ってるんですか?」
「雑誌等の媒体では言ってません。しかしこれは彼の非常に繊細な心の中の問題ですから。彼は常日頃から心で発言してます。「俺、シンバル叩いてるよ。」と。私はなんどもそれを心で耳にしました。」
「・・・・えー、お時間になりましたので残念ながら新張さんにお話を聞けるのはここまでとなってしまいました。本日のゲストはシンバル評論家の新張叩男さんでした。ありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
「次回はトライアングル評論家の三角圭さんがゲストです。またねー。」




