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06-01 旅は、途中

06-01 旅は、途中 『ヒミツキチ』の中 午後の光の中。



「勇者は、死ななーい♪

 勇者は、勇者は、死ななーい♪

 勇者は、死ななーい♪

 勇者が死ぬのは許せなーい♪」


 ルラが唄う声が『ヒミツキチ』に響く。

 後ろ指さされそうな、歌かな?


 旅に出た時みたいな、魔法使いみたいな恰好のルラと、

 神官みたいな法衣で、ルラと鼻歌でリズムを取るヲリヱと、

 冒険小学生みたいな自分と、

 そして、妖精やら小竜やら、曰く言い難い友だち達を連れて、すっかり学校ぽくなった『ヒミツキチ』を駆けていく。


「コンヤ星ヲ見ニイコウ」

 ヲリヱが唐突に言ったので、今夜は天体観測をすることした自分達。

「タマには良い子でいるんだね♪」

「いつも良い子でしょ、ヲリエは」

「そだね、そだね」

「テレマスノデスネ」

 その準備のために『ヒミツキチ』の屋上へ。


 …

 ……

 ………


 幼馴染の三人で始めた旅の途中のこと。

 階段を登りきると、そこは海のただ中、細い首筋で海風をないでいく、


 潮風の匂い

 風がなぐ海の匂い

 遠くから吹いてきた風の匂い、

 けど、自分の知らない季節の匂い


 慣れ親しんだ『ヒミツキチ』の屋上は、

 頬をなぐ風の力強さと、解放された空と強い風の勢い。


 既視感と違和感と納得感。

 当たり前の、日の傾きかけた天上を見上げた


 …

 なんだろ?

 なにかの疑問が自分の中にまだある感じ。


「……

 青い空には、白い月が一つだけ。

 定星は、いつもの定位置、宵の明星も何とか見えてる」

「うん、そうだねコヨミちゃん」

「ウンウン」


 自分につられて、連れて歩く、みんなが同じ空を見上げている。

「それでいいけど

 三つある月のうち、一つしか見えない。

 月それぞれで公転周期も違うのかな?」

「お月さま達はお仕事あるけど、真月さまは自然公転を尊重して動いていて、砕月さまはお仕事優先で、遊月さまは目の前のこと優先だからね」

「うん?

 また、あたしの知らない事だね。

 お月さまの仕事って何だろう?」

「オ仕事ガンバルノデス?」


「お月さまのお仕事は世界の調律だよ」

「うーん?」

「ウーン♪」

「うーん、とね。

 じーぴーえすな観測とかで、時間をズレとか観測してるの、お月さま達。

 他のお空にいる子達みんなで、この星を見て、この世界に接合しに出て来ちゃった異世界を、みんなで確保、収容、保護して、この世界やみんなに迷惑をかけないようにSCPしていくによね。

 それで、お月さま達の暇つぶしの、お仕事はね。

 遊月さんこと、ハーフリングさんの月ヴェスタは、星空や空を巡って材料集めて、

 砕月さんこと、ドワーフさんの月ウルカヌスは、異世界を入れる箱をつくって、

 真月さんこと、エルフさんの月ディアナは、異世界を入れて綺麗に化粧して、

 この世界に異世界を、送り出だしてくの」

「なんのため、そんなこと、してるの?」

「この世界と異世界のためだよ。

 異世界なんて、ちゃんとしてないと、何処にも無くなるか、世界から無くなっちゃうんだよ。

 出来たまま、ほっとかれた異世界が接続すると、世界との軋轢が出ることもあるから、冒険者さんや怪物さんや天使さんや妖精みんなで、いろいろ頑張っているのでした。

 手に負えない異世界は、天使さんのところの送って、この世界には、まだ存在しないようにしてるけどね」


 異世界って何なんだろう? ルラのいつも妙な説明への自分の感想としては、

「うわー、

 まだまだ、私の知らないことで、いっぱいだね。

 異世界を作るって、どんな世界観なんだろ、この世界。

 あたしの子どもの理解力と、私のあやしい現代知識だと、今の自分には理解できないのかな」

「あんいんすとーる?」

「って、そもそも異世界って、なんであるんだろ?」


「異世界の存在する理由は『人の、どうしようもない願い』のためだよ」


 みんなとのと、いつもの、何げない話で、世界の真実が解かれていくそれは、

 私の子どもの時にも会った感覚だった。


 …

 ……

 ………


「コヨミチャン、ドウカシタノデス?」

「今日は、知りたがり屋さんなコヨミちゃん」

「今日は、お昼寝長くて、ゆっくり出来ちゃったからかな、考えが整理できて色々考えちゃってるの」

「コヨミちゃん、考えると負けること多いよね」

「それは、うん、知ってる」

「知りたがりなコヨミちゃん達のために、僕達で臨時で臨海で限界な学校をしようしよう、ヲリヱちゃん号令」

「ハイナ♪

 キリーツ、レイ、チャクセーキ♪」


 ヲリヱの学級委員長号令で呼びかけると、みんなが何処からか椅子や黒板を持ってきて、行儀よく椅子についていく。

 今夜の予定では、自分が教壇側に立って、星空を教材に青空教室だったけど、逆の立場になったらしい。

 何も知らない自分が、転生者の気分で知ったかぶりして、大人ぶってたんだから、今はせいぜい恥をかこう。


「ではでは、あらためてコヨミちゃん、異世界語りの教室、まわる学校へ、よおこそ」

「ありがとルラ。

 じゃ、まずは…どれから聞こう。

 改めて考えれば、自分、知らないことばっかりだ」

 そう言って、自分の疑問をいくつかだしていく。

 魔王とか、魔法とか、魔術とか、魔物とか、魔がつくものばっかりだけど

 みんながそれらに色々と意見? 戯言? 虚言? 思った事を言って、教師妖精ヰるかなヱが黒板に書く出していく。


 そんなことを、夕食を屋上でキャンプすることまで決めて、その準備を始めるころまでつづけた。

 今は、ルラを教師に居残り勉強、補習授業も日本語で。


 …

 ……

 ………


「じゃ、ルラ、まずはあっちで見えてる『定星』って何なのかな?

 傾きかけた太陽を、追いかける三日月型の大小二つ星と、先に進んだ星が二つ、一つは水平線に沈んでるけど。

 私の世界の、定位置にある星って、人工衛星か北極星とかしか無かったし、

 月とも惑星とも違う動きだよね、あの四つの星」

「定星は、天動説でも説明できる動きで、空の軌道にある星なんだよ。

 地動説的には、太陽を中心に、この星ふくめて六芒星に回転してるだけ、魔法陣みたく。

 コヨミちゃんだったら、リングワールドに空いた穴と言えば解るかな?」

「返って、解りずらいけど、この星と同じ公転の輪道上に、六角形だから、他に五つ?

 あっ、太陽の向う側にもあるのかな」

「そだよ」

「太陽中心に、0°30°60°だから2時間ずつの当間隔で…。

 距離は、大き細く見える外側の二つのほうが近くて、この星と太陽と同じ距離。

 小さく太く見える内側の二つのほうが、三角計算で√3の1.73倍の距離。

 太陽の向うがわの、SF用語だと反地球? それが太陽の倍の距離。

 一等星以上のマイナス等級、一番星な金星ぽいのよりは暗くて。

 見えてるのは太陽を鼓を向けて三日月型、

 空色っぽく見えるのは、海があるから?」

「そだよそだよ」

「けど。

 うーん?

 じゃあ、それは、なんのためかな?

 ここまで等間隔なのは、自然に出来るようなものじゃないよね、人為的な物だよね。

 重力や小惑星溜まりにしては、定位置すぎるし、複数あるのが自然確率的に変だし」

「あれは、この星を魔法で分けたものだよ。

 定星フォーゴットは、百年前ぐらい古い世界の星。

 定星ミレミアムは、千年先ぐらい未来な世界の星。

 定星イースタとウエスタは、方向性分岐世界な星。

 定星リバイアスは、それ以外の可能性の世界な星。

 で、コヨミちゃん、わかった?」

「うん、全く全然わかんないよ? ルラ」 

「あ、やっぱり。

 それは、あとでね。でもコヨミちゃんなら解るんじゃないかな? ちと覚悟をしておけ、だから、それは、今は心の棚の目の前に置いておいてねコヨミちゃん」


 疑問は深くなるばかり、でも、もっと面白くなってきたかな。


 …

 ……

 ………


「まだまだ自分の精進が足りてないのよね。

 まぁ、足りないものを冒険の進んだ先で、どうにかするのは毎度のことだから、なんとかするとして。

 次に、なんで天の川…この星系の銀河系が十字を描いてるのかな?

 私の世界だと、銀河系を中から見てるから、川状一列にあったんだけど、なんで十字なの?

 天の川銀河にアンダロメダ銀河とかが突っ込んだのかな?

 って、うちの時代から何億年後の話だそれ」

「かたいっぽのは普通に銀河、もういっぽのは異世界、星ゆく旅をするほうの異世界だね。

 近くの星も、やっぱこの銀河にあるから、ぶつからないよう交通整理のため、あんな風に並んでるの」

「? 異世界って、種類があるの?」

「6種類ほどかな? この世界で見つかってるのは5種類、それも、また今度ねコヨミちゃん」

「うーん

 今夜見る、たくさんの星にある、星を旅するという異世界、

 異世界は作らないと無いというし、なら、なんでこれほど異世界があるんだろ?」

「こんなに、いっぱいいっぱいな異世界を作っちゃたのmやっぱし魔王なんだけ…」

「あの子って、いったい何やらかしたんだろ?」


「あー、

 あの子のやらかしはねー、

 魔王は良い子なんだけどねー、

 でも、

 勇者が、ブッ倒して良い子だからねー」

「急に物騒かな?

 ルラそれ前後の話つながってる?」


「あの子はサンタさんにプレゼント貰えるくらい、良い子なんだけどねー。

 けど魔物の王様で、この世界の最高責任者だから、悪い事の全部の総責任者だからねー、

 だから世界全ての悪役もできる魔物なんだけど」

「偉い人が責任取るのは偉いとおもうけど、悪役の役割って、ロールプレイングゲームかな?」

 私が勇者役とかで。


「魔王は、異世界の敵で、世界の天敵、世界なんか滅ぼせちゃう大量破壊兵器でねー」

「それは、本当に物騒だね。

 そんな子、相手しても自分、絶対勝てないよねルラ」

 って、あたしなんでワクワクしてるんだろ?


「魔王は、世界を滅ぼしちゃったこともあるしねー」

「あるんだー。

 うん?

 なら、この世界は、なんで今あるんだろ?」

「魔王が、直した、直しちゃいました」

「直したんなら、

 それでいいと思うけど?」

 自分がここで生きてるんだし。


「けど、それでねー。

 この世界は『魔王の、魔王による、魔王のため』の世界になっちゃっているからね、

 この世界を、誰の物でもない、何でもない、ありふれた世界にするためにねコヨミちゃん、

 魔王を倒す必要があるんだよ」



 そうして、今、この世界の秘密が、自分の目の前で解かれていきます。

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