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01-06 勇者ごっこ

01-06 勇者ごっこ 剣の王国 『ヒミツキチ』の門の前 午後の光の中



 自分達は『ヒミツキチ』の探検を終えて、今は鬼ごっこな隠れん坊の真っ最中。

 ここに泊まる準備は出来ていて、夕日は傾いていて、玄関の奥まで陽の光が差し込んでる。

 このままだと、夕日が『ヒミツキチ』正面の目印の木の丘から落ちそうかな?

 今の自分が当てにならない異世界だけど「まあ、いっか」と慣れてきている自分がいる。

 

 そして、

「注意事項。

 範囲は『ヒミツキチ』の中だけ。

 時間制限は、この時間だから、日が落ちるまで。

 ちっちゃくて飛べる君達は、公正なる鬼ごっこのために、高さ制限1.5メートル。

 で、良いかな?」

 −キィ−

 と、ミニ竜キヲンが、共鳴音で返事をして、

 ヲリヱとルラと幼児スモック妖精ヰるかなヱが、ハイハイと手を上げる。

 まあ、今の自分の気分も幼稚園児だしね。

「妨害行為もあり、協力プレイも可、道具や地形の利用は当然可。

 緊急時は大声で救援を呼ぶ、救援はみんなでするけど、大人に助けを呼ぶ子は、遅れた最後の子がなる、それより、みんなケガしないよう注意する。

 以上、鬼ごっこ精神にもとづき、正々堂々鬼ごっこすること」

「ウン♪」

「らじゃった、おっけー」

 −キィ−

 キヲンもヰるかなヱも必死に頷いている。

「あっ、コヨミちゃん。

 優勝のアカツキには、何かお願いを聞くのはどうだろうかと、意見ぐし〜ん」

「うーん、それだと、

 ヲリヱやルラに、変な事お願いされそうで自分が怖くあるけど…

 ヲリヱのお菓子を、これ以上は賞品に出来ないか。

 では、みんなで出来る事なら勝った人のお願いを、み〜んなで一つ叶えるとしようか?

 みんなも、それで良い?

 …。

 みんなのその反応だと、良いみたいだね。

 それじゃ

 ジャーン♪

 ケーン♪

 ポン♪」


 で、

 自分が、チョキ負けた。


 ………

 ……

 …


 玄関横の石像に手をついて、目を被い数を大声で読み上げる。


「ひとーつ」

 自分が10数えたら、鬼ごっこの始まり、鬼役の追跡開始。


「ふたーつ」

 みんなの逃げ出す様子が、目をつぶっていても感じる。


「みーつ」

 ヲリヱとルラは真っ直ぐに王さまの部屋に向かうみたい。


「よーつ」

 キヲンとヰるかなヱは玄関の左右の部屋かな?

 存在感を感じる。


「いつーつ」

 王さまの部屋は、三角帽ピエロ妖精ヰるかなヱが出したもので飾り付けて子ども部屋にした。

 王座には、ヲリヱのクマのぬいぐるみの『ファーファ』が鎮座している。


「むーつ」

 玄関の左右には衝立で見えなかったけど部屋があった。

 門番か衛兵の待機宿舎かな、住居の跡みたいのがあったから寝泊りには困らないですみそう。

 宿舎からも玄関の扉上の出られた、バルコニーか物見やぐらなのかな。


「ななーつ」

 ヲリヱは真っ直ぐに中央階段を目指してる。

 この階段で、じゃんけん双六したら、やたら時間がかかった。

 直ぐに、二段飛ばし、三段飛ばしになった。


「やーつ」

 ルラは玄関ホールで止まった。

 正面勝負がお望みらしい、よし受けて立とう。


「ここのつ」

 今日は『ヒミツキチ』で寝泊り、明日の朝には出発。

 携帯食は、まだあるけど、ヲリヱのお弁当が明日の分で終わり。 


「とー」

 さあ追跡開始、

 まずは左右の衛兵宿舎の二人の子から。


 ………

 ……

 …


 キヲンは手こずったけどファアプレーで逃げくれたのでタッチ出来た、危なかった。

 唐笠風呂敷泥棒ほっかむり妖精ヰるかなヱは、その小ささを生かしてバルコニーの手すりに隠れてたけど妙な存在感を感じて直ぐタッチ出来た、これなら迷子妖精にならないかな。

「二人とも、上にヲリヱがいるから行ってあげてね、お願い。

 自分はホールで、ルラと対決するから

 時間かかるかもしれないしね」


 ルラは玄関ホール中央で、無駄に仁王立ちしている…。

 魔法使いな謎衣装を風もないのに羽ばたかせて…。

「ふっふっふ、とうとう、この時が来たようだね、コヨミちゃん」

 恰好つけてるようでいて、何にもカッコよくなかったりするルラ。

「鬼ごっこで、真っ向勝負なんて、バカだよねルラ」

「バカちゃうねん、この勝負に勝って、コヨミちゃんには勇者を目指してもらうのであった、まる」

「それで自分が勝ったらどうするの? またはヲリエが勝ったなら?」

「?

 うーん、コヨミちゃんの勇者の旅は、ここで終わるのあった? 残念無念、断念観念、でも、面白かったから、それなで、よしよし」

 あっ、その程度なんだ?

「そう?

 それなら。

 …

 ルラ、良いわよ。

 ルラの言う、その勇者が魔王を倒す旅に出ても。

 あたしもヲリヱも、ルラとの旅を一緒にしたかったし。

 けど、一度は家に帰って、お父さん達に許可も貰ってからだよ。

 家属に勝手に無理だから、いつ旅に出られるか分かんないよ、ルラ」

「それ、ほうとぅに、ただしく、れありぃ?」

「それは、ホント、本当」

「じゃあホンキで逃げる、勝って旅の約束を確約させるのだ」

「それは自分の信用問題として、負けられないかな」

 ルラが、嬉しそうに階段に向けて駆けていく。


 この『ヒミツキチ』と、あたし達の屋敷は、森を抜ければ小一時間ほどで行き来できる距離。

 また、ここに来ることも出来るけど。


「行きて帰りし物語。

 私こと『若宮 こよみ』の役目は、この子達が家に帰るまでかな?

 勇者になるかとか、その後の事は〜全然わからん。

 けど、面白かったしね、まっ、いっか」

 そんな勝手な自己満足を呟いてる自分。


「これが、なんかの物語だと、分類としては『異世界転生』の『ハイファンタジー』になるのかな?

 あっ、ルラが歌う変な歌も、替え歌混じりだし、私がした昔ばなしも『二次創作』だし必須かな?

 これからのことはわからないから、記憶予告から保険で『残酷な描写あり』も必要?

 そうならないように頑張るけど、どうなるかな?

 でも…

 まぁ、

 この世界が、私が見た夢まぼろしだったとしても、まだ目ざめてなんかやらないんだから、

 この鬼ごっこは終わるまでは、絶対にね」

 もし、目覚めたとしても、二度寝しないで、憶えてること全部を書き写して、忘れないでいてやるんだ。

 そして小説にして、アップロードしたら、異世界転生した子達が読むかもね。

 そんなこと考えながらの鬼ごっこ。


 その時、後ろの玄関から、その少年の影が射した。


 ………

 ……

 …


 振返って、玄関の外に誰何する。


「誰かいますか?

 ここの人ですか?

 そうでしたら勝手に入ってました。

 謝罪が必要なら、自分が責任者です。

 みんなを呼んで、掃除して出て行きます」


 …。

 あっ、

 日本語で呼びかけちゃったぜいって。

 さっきまでルラ達と話してたからね、

 …気を付けてたはずなんだけどなー。

 さて、

 こっちの言葉で呼びかけ直さないとね。


 その時、

 玄関の外のから声が聞こえた。

 午後の遅い時間の長くなった人影の先からの声は。

「は?

 言葉がわかるぞ?

 やっぱ、ここ日本じゃねえのか?」

 そう話す、大人になるまえの少年の声。


 自分は『ヒミツキチ』の中から呼びかけている。

 入口が、この子に塞がれても衛兵宿舎からベランダに出れば、みんなを逃がせないかと考えて。


 その少年は私ぐらいの中高生だろうけど。

 疲れきった顔、汚れた私服、ボロボロのスニーカー、枯れ木の棒を杖にした少年。

「ははは、何で、俺、三日も森の中さ迷ってんだよ。

 変な連中から逃げ回ってたけど、あれ捜索隊だったんじゃねえのか?

 あー。

 アホらし、けど、助かったんだ〜、やっと家に帰れる」


 この少年に、なんて声かけよう。

 絶対に、目に見えてるトラブルだ。

 けど、この程度の試練は超えないと。

 私、やっかい事は放っとくこと出来ないし、

 あたしの貴族種としての教示がゆるせないから

 何より、ルラ達に勇者になるって約束したんだしね。


 よし。


「きみ何処の高校、私は滋賀県の湖西のって、知らないか、そんな田舎高校。

 あっ、そもそも、こんな恰好で言っても説得力がないかな。

 私は異世界転生者の『若宮 こよみ』

 この国の名は『ファレステジア』

 異世界へ、ようこそ。

 困り事なら、この勇者? その志望? の、このコヨミが、一緒に困ってあげるから」

 …。

 満面の笑みで言っきった自分と、完全に停止した目の前の少年。

 微妙な間。

 冷や汗を背中に隠しながら完璧な作り笑いを維持する自分。

 

「何、言ってんだ、このガキ」

 まあ、はずしちゃったかな?

 自分ながら、そう思うし。


 そして、こっちに近づいて来る少年。

「何、言ってんだよ、おまえ…」

 雰囲気が変わったかな、ちょっと危ないかも自分。

 少年は、自分の目も前にもう来ている。


「何を、言ってんだよ、おまえ…、ここ日本なんだろ」

 あー、敵対行動じゃないから、自分のパーソナルエリアに入れちゃったなー。


「あんなバカでかい木の森があっても、夜中の空がトチ狂ってても、あんなゴブリンやエルフみたいな恰好したやつがいても。

 ここは日本なんだろうが、たのむから、そう言ってくれよ!」

 少年は、そう言って膝をついて泣き出した。


「うんうん、ちゃんと一緒に困ってあげるから、きみが帰れる方法も一緒に探すからね」

 泣いてる少年の頭を抱きしめながら自分の話を良い聞かせる。


 ………

 ……

 …


 ルラが奥から近づいて来る気配を感じたので、少年のあやしながら話しかける。

「ルラ、ごめん。

 また、ちょっと、またトラブル。

 この少年を、元の世界に帰したいんだけど」


「コヨミちゃんどいて、そいつ殺せない!」


 ルラが、今まで聞いた事のない声をあげる。

 その声には確かな、そして絶対の殺意があった。



 そして、自分達は『世界の危機』との戦いをはじめます。

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