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01-04 遺跡の情景

01-04 遺跡の情景 剣の王国 大きな木の下で 朝焼けの遺跡を見おろして。



 朝の始まりの気配、巨大樹の下

 自分の傍ら、聞こえる寝息が4っつ。


 幼馴染達の二人と自分と、途中で出会った小竜と妖精つれての旅の途中。

 はじめての自分達だけの夜明けは、まだ暗くて、

 朝焼けは始まってもいない。

 …けど。


「目が覚めて、昨日の事が夢じゃなくて良かったと、そう思う私がいたりもする…。

 …けど。

 異世界転生からの精神分裂症は継続中だし、昨日も喋ってた日本語も、かなーり怪しかったした。

『私:異世界の若宮こよみ』と『あたし:この世界のコヨミ』とで、記憶が完全に分かれてるし、混同する様子もなし

 …混乱しなくて良いけど。

 判断意識は、精神年齢のせいで『私』の部分が多いけど、『あたし』の趣味嗜好に強く引っ張られてる気がする。

 それよりも『ま、いっか』とか『わからん』とか、物事に対する、この強い納得感、悟ったみたいな心境はなんだろう、

 …洗脳とか、されてるのだろうか?

 とっさの判断が鈍ることはなく、疑問のまま先に進めなくなることないのはいいんだけどね。

 まあ、正常じゃない心情、まともでない状態、それに絶えず意識しとかないとね。

 こういった独り言の癖は、ここまで酷くなかったと思うし…、たぶん?

 いや、自分が日本語を喋りたがっているだけかも、あたしが理解するため? 

『自分』としての経験が積めば、これも意識統合されるのだろうか?

 まあ、わからん」

 っと、パジャマのまま、勢いよく起き上がり、明け始めた空を見上げる。


 草とオゾンな朝の匂い

 けど、まだ季節の解らない匂い

 早朝の肌寒さ、風のない、透明な空気感。


「夜明け前の月は見えてない。

 空に月は三つもない、一つもない。

 金星や水星とかの明けの明星は見えない、

 …

 けど、

 この世界特有の

 明けの定星が二つある。

 太陽に対して、等しい間隔で必ずあるマイナス等級大小二つの定星、別名:明けのトキ星。

 宵の時星と合わせて四つある、こっちの世界の目立つ星。


 やっぱり異世界?

 わからん。

けど、

 早起きして見た朝焼けは、やっぱ感動するものよね」

 視認できる綺麗な色合いで良かった、良かった。

 

「さて昨日の夜、目指していたこの木、屋久島の杉みたいに、ホントに大きな巨大樹。

 私、屋久杉は見た事は無いけはずだけど。

 この木なんの木の気になる木♪

 を、縦に伸ばしたみたいな木。

 うん、みんなの寝る場所になってくれてありがとね。

 けど、こんな巨木もあるし重力軽い? それとも酸素濃度が濃い?

 いや、比重感覚や、朝露の水滴とかの表面張力形状がにズレ感じないし、それ無いの?

 水銀比のほうだっけ? 綺麗な水玉だしね、見た目が綺麗なのは、本能的には安全のはずだ。

 ここの植物も似たようなの雑草あったし、自然なものなんだろう、たぶん、きっと。

 どこにでも生えてる西洋タンポポでもあれば、いろいろ考察できたけど名前も調べてない雑草さんも多いからね。

 …

 それは、おいといて、 

 で、異世界に転生した自分の姿は?」


 ホントに、色々、精神分裂してる、自分。

 正しいこと優先で、自分のことも蔑ろな感じする。

 これはこれ、あれはあれ、と新鮮で楽しから良いけど、問題はあり。



 ヲリヱの水鏡の盾兜を木にかけて鏡にし、自分の顔を確認する。

「うわぁ、やっぱり自分、お子様だったかー。

 あたしの10歳の記憶と、顔の比率や雰囲気で、お子様お子様してる。

 黒い瞳、黒髪のオカッパでパッツン前髪、刈り上げうなじ。

 …母さん髪切り過ぎだよ、恰好良くサムライテールにしようと思ってたのに〜。

 あとで男の子みたいなベリショにしようかな。

 髪のキューティクルすごいな。

 っで、

 キラキラの瞳孔に、真珠の白目。

 うーん、

 流石に、お貴族のお子様、

 栄養豊富で育ち方も良好、

 ほんとイキが良いことで。

 均整のとれた整った顔立ち、顎も細め、

 肌は私より白い色、顎も鼻も眉も尖り気味だし、

 日本人よりじゃないのは茶色味が少ないからかな?

 アニメ顔じゃないのが自分的に良し。

 生物学無視した目の大きさじゃないし、イモリじみたのっぺり感もなし。

 さて、

 自分を知らなければね、いつか自分に対決した時とか? に、負けちゃうかもだしね。

 なにを自分が想定してるかはなんて、小説やアニメやゲームの幻想知識なんだろうけど、現実に少しでも近づけないと、

 では、

 いーっと、歯をむき出いのいーって顔っして、歯並び確認、水晶の歯。

 べーっと、あっかんベーって顔っして、柔らかほっぺで、まぶた裏も舌も綺麗。

 ぶーっと、ぶた鼻ぶーって顔っして、鼻も唇も健康でぷりぷり、無茶苦茶生きよし。

 にこっと、あたしのにこにこ笑顔、うん、あたしだあたし、あらためて見るあたしの顔。

 いやっと、眉をよせてイヤ顔、私より眉が細くて優しい感じがするのかな、手入れ楽そう。

 じとっと、突っ込みジト目、こっちほうが年相応に見えるのは…あたしが、そんな性格?

 うぉっと、死んだ目、やたら活きの良い死んだ目、眼筋表情筋自在に動くぞ。

 ウフンっと、お色気流し目、うわぁ。わざとなのに、あざとくなってない。

 うん? 顔が赤くなってく。

 ガオーー!っと、私の咆哮! もっと真っ赤になるー、顔が熱いぞ」

 百面相とかして色々自分を確認をする、「あたし」は「私」を子供にしたところあって可愛い、まあ、私の弟みたく口を開かなければ。


「う〜ん、割と自然なモブな子ちゃん?

 日べンの巫女ちゃん? 花子ちゃん? 金太郎子ちゃん?

 でも、可愛いい、可愛いい、自分可愛いい。

 さて…。

 自分の匂いは、…自分で勝手に慣れちゃうから、どうしようもないかな?

 涙や、汗、唾液、それぞれを肌に擦りつけてっと、

 それぞれ変な匂い?

 だけど、うん、なんか、嫌悪感がない良い匂いしかしてないかな、今は。

 体調悪かったり、へんなもの食べたりすると、自分でも変な匂いするはず、たぶん、きっと。


 次、

 あー、ア〜♪

 声も、私の声より、高い声に聞こえる、声帯まだ細いしね。

 高いけど聞き取りやすいソプラノ声。

 私のは、部員相手の怒鳴り声が多かったからね、音量は私より少ないね。

 あと、自分の声だからか、他人には低めに聞こえるのかな?

 自分の共鳴を聞き分ける絶対音感はないけれど、声? 耳? 脳? どれが感性基準だろ?

 ら〜、ラ〜 Ra〜♪

 うん、咽の奥の色も綺麗。

 けど、日本語発音に難ありかな?

 顎や声帯が日本語に鍛えらきれてない発音」


 大木の裏で寝ている子達を気にして発声確認。

 みんな起きるかな?

 いや、これで起きる子なら、朝が起こすのが楽になるんだけど。

 時計の子と秒単位で対決するのが好きだし。


 満足するまで鏡を睨み、今度は何歩か下がって全身を眺める。

 うーん、何処にでもいそうな子なんだけど、バランスがやたらいい子、すっごく自然な感じがする。

 今の自分に違和感がない、眼力が強い私だったけど、それもなし。

 うん、

 可愛いぞ自分。

 そして、自分のシンプルな子供パジャマを脱いで、

 自分を鏡に映す。


「子供な身体だけど均整とれてるね。

 気持ち手足長めで、柔らかな感じ、肩尖りぎみ、腰の位置も高い、やっぱり日本人離れ。

 身体も柔軟、良く動くこと動くこと。

 つま先立ち、バレエ立ち、片足立ち、バランス良し、体幹良し、すごく良し。

 あとは、その道の構えからの座り、立ち、回り…だったかな、教えもらった動きは。

 うん、私に出来た事は、ひと通り問題なし。

 バク転っ、…のつもりが、バク中になったことも問題なし。

 で、

 素っ裸かに見える全身白タイツ少女が、今の自分。

 …。

 パジャマ脱いだら、この姿だった。

 なんて下着をくれた母さん。

 そして、なぜ着たあたし。

 ビスチェかレオタードみたいのもあるし妖精服みたいのかな?

 ここの風習なのかも…。

 手の指や足の指まで完全シルクコート、地肌見えるところは、顔から上だけ。

 日焼け対策・虫対策?

 あと首まわりや、あちこちが硬い紙みたいな硬質パーツになってる。

 なんなんだろ?

 ファンタジー的なものに見えない事もないけど、絹製のプラグスーツみたいにも見えるし…」


 そして、寝る前に脱いでた服は、ほぼ無意識に綺麗に畳んである。

 その上で、猫竜キヲンが丸まってて、その上に、お眠り妖精ヰるかなヱがナイトキャップとパジャマで寝ている…いつ着替えてた、と、いうかその服どこから出した?

 妖精すること気にしても仕方ないかな……。


 ………

 ……

 …


 そうこうしてるうちに、ふつうに昇ってくる朝日を見て一言。

「よかった。

 まともな朝日に見える」


 太陽は、記憶のとおりの一つだけだった。

 指先で計った大きさも爪先大で、動く速度も前と同じかな?

 24時間で360°の起動だから、自己認識と脈拍で計って、そうズレはない…と、思いたい。

 …私の感は、割と当てにならんし…。

 太陽も複数ないし、色も変な偏光してないして見えない、形も極地偏光の四角じゃないし変なところがないと思いたい。

 あたしの記憶でも、これぐらいだったよね、きっと。

 生命発生距離みたいな、SF話を部活でした身としては、まあ一安心しよう、無理矢理にでも。

 自分の記憶と照らし合わせても、同じ色調で変異してるから、目でとらえる波長も同じか近似値だろう、

 火星とかだったら青や紫の小さめの太陽になるそうだと、宇宙科学者やSF作家さん言ってた気がするし、しらんけど。

 あとは、夕日を見てから検証しないとね。

 それは、その時に、気が向けば、するとしてして。


「今の、自分の、この場所の、ここからの遺跡の風景は?

 っと、シーズンオフのスキー場の頂上から見下ろしている感じかな。

 緑が凄い、遺跡までは下り、長い窪地の底にそって遺跡がある。

 低い谷間が、この場所から始まっていて、それが遠くまで続いてる、かなり遠くまで真っ直ぐに」


 夜目も利いたけど、目の良い子だね、自分は。

 さて、朝焼けの光の中の遺跡の全景は。


「こりゃホントに遺跡だわ。

 ストーンヘンジに囲まれてる、まんまな前方後円墳だもん。

 やっぱ、誰か偉人さんのお墓なのかな?

 緑に埋もれてるけど、記念公園のような整理された雰囲気。

 遺跡自体の入口は、前方の先にある門みたいなあれかな。

 その前は公園みたい、噴水はないけど周囲に人工池がある広場。

 ちょっと離れたとことに建物みたのがいくつか、公園の事務所みたい。 

 それをぐるっと囲むストーンヘンジな丸い輪の橋、水道橋でもなさそう。

 門のずっと先には柱みたいなものが2本、あれが遺跡全体の入口になるのかな。

 遺跡探索の方法は…、

 って、

 なに、

 ルラ?

 おはよう、ちゃんと起きれたんだ」


 何やら起き抜け状態を全開に、寝ながらのヲリヱもを連れてルラが来た

 なんで、ここまで無警戒に寝らるんだろ、自分も?


「コヨミちゃん、朝のお楽しみ中にゴメンゴメン。

 ヲリヱちゃん起きそうだから、朝ごはんにしようしよう。

 そしてコヨミちゃん、おはようおはよう」

 ルラが呼びに来たので朝食にする。

「ヲリヱも、みんなも、おはよう」



 下着姿のまま、自分の鞄から焼き菓子みたいな携帯食出して、パッキン、コリコリとかじる。

 フルーツバーみたいのもシャクシャク。

 あたしのお弁当は昨日、ゴブリンさん達と、みんなで食べてしまったし。


 メイド妖精のヰるかなヱが、自分達のお茶の給仕を、甲斐甲斐しくしている。

 私が知ってるドローンより、無音のホバリング…。

 既にヲリヱに馴染んでるし…。

 ティーセットなんて持ってきてなかってよね?

 うん、お茶も美味しい、けど何の茶葉だろ?

 猫竜なキヲンが伸びしてるしね、刀みたいな一角生えてるけど。

 ヲリヱも下着のまま、朝食用のお弁当を一所懸命に食べている、…口小さいな。

 ルラは、なんか透明なゴムまりみたいなのをモグモグしている、スライム? 食べてる?


「ねぇルラ、

 この子達、キヲンとヰるかなヱの食事、何用意すればいいの?」

「無くてもいいよ、スライムでもいいよ、何でも食べるよ、ガジラちゃんみたく、ペンギンの村の」

「ガジラちゃん?」

 ルラが差し出したティーセットの皿とカップを…、

 パッキンパッキン、コリコリコリと美味しそうに食べるキヲンとヰるかなヱ。 

「ペンギンの村のって、

 妖精や竜の食べるモノ知らないけど、それはないんじゃないかな。

 自分達のと同じもの用意するから奇行や異食は止めてね。

 なんでも美味しく食べる良い子わかったからね、

 美味しく作れたら美味しいと言って欲しいし、

 なにより、ヲリヱが真似したら困る」

 それは、ほんとに。


「で、この子、

 ヰるかなヱって、どんな子、どんな妖精なの?

 知ってる子なんでしょ」

「こんな妖精、今はメイド妖精。

 勇者のオプション、または、ビット。

 ライフも回復してくれる妖精」

「よくゲームでもあるけど、ライフって?」

「ライフラインとか、人生とか、何とかカンとか世界とか」

「なんか壮大ね」

「で、コヨミちゃんの要請に応えてくれる妖精。

 そして、キヲンは、理由に対決する竜なんだよ」

「駄洒落なのかな?

 言葉遊びで遊んでない、みんな?」

「まずは、お言葉で遊んでからだしね、異文化コミュニケは、それよりも、も」


「ではでは、ではでは、

 キヲンとヰるかなヱは、コヨミちゃんが勇者になるための旅に出発するから、お供するように、これから、ずっと、きっと、かならず、めいびー、気が付けば」

 ウンウンと、頷くキヲンとヰるかなヱ。

「そんなんでいいのかな?

 とか、それで、いいの?

 …じゃなく

 仲間にしますか? しませんか? の ハイ イイエ ぽい?」

 と、言ったら、ヲリヱが、みんなを巻き込んで他皆を巻き込んで、抱き着いてきた。

「はい、もう、それでいい気がしてきた」

 魔物と竜と妖精と、それにヲりヱ連れてるだから、ゲームの主人公みたいだしね。



 ヰるかなヱが目前でホバリングしながら、メイド服のスカートを掴んで丁寧に挨拶をする。

「カテーシーな敬礼だね。

 うん、ヰるかなヱ、今後ともよろしく、自分達やヲリヱの友達にね。

 でも、昨夜の砲弾突撃なんだったの?」

 ヰるかなヱがペコペコ頭を下げる。

「ルラに呼ばれた気がしたから、嬉しくて跳んで来ちゃった、て…、ほんとに迷惑になってしまってたのか…。

 自分もゴメンね、いきなり盾でぶつかちゃって、痛かったよね。

 あっ、大丈夫なの?

 て、口に出さずに会話してるねヰるかなヱ。

 テレパシーかな」

「目♪ を♪ 合わせて見つめるだけ〜で♪」

「未確認飛行物体って、そうなるのかな? この子飛んでるし」


 妖精のヰるかなヱ。

 名前みたく、いるかいないか不明なところがある妖精の一個体。

 この子だと言うのは、直観的にわかる妖精だけど、

 姿形、服装、大きさ、音や匂いも変わり続ける妖精。

 今も周りに合わせて、ごく自然な感じで。

 この世界の常識として、妖精だから気にしても仕方ないのだろうけど、

 自分の記憶が宛てならないのは、この子が迷子になった時とか心配かな?


 ………

 ……

 …


 朝食と洗顔も終わって遺跡探索の準備をする。

「明るいところで見る、自分の持ち物は、と。

 鞘無しの剣が一本と、学生鞄みたいなショルダーバックだけ」


「今日は、コヨミちゃんが、コヨミちゃんによる、コヨミちゃんの持ち物の解説の開設だね」

 また、ルラに、丸投げされたので、説明口調を継続します。


「この旅にと、父さん達から預かった装備。

 あたしには違和感なかったけど。

 家に昔から、貴族の家の壁の装飾品みたいに、飾られていた剣とその装備。

 けど」


 持っていた剣を正眼に構えて…。

「この剣って、

 見た目だけなら、普通に『どうのつるぎ』だよね。

 剣道の竹刀くらいの長さの。

 磨いた10円玉みたいな色で、

 歴史館にある古代の青銅の剣を長くしたような形。

 握りもグローバル包丁みたいに柄まで金属製。

 握りは細め、自分の手でも握りやすい。

 って、

 刃が無い?

 刃のあるところが何もなくて、線みたいな隙間だけがある、

 剣の中央にも隙間線がある。

 刃引きの剣どころか刃なしの剣。

 これで殴ったら痛そうだけど切れなそうにはない剣。

 銅の剣は初期装備だと思うけど…けど10円玉色…綺麗だけど」

「命名:ドウかしてるつるぎ、または、真っ二つな剣」

「うん?

 あっそうか、この空いた線って切れ目だ。

 剣を上から縦横に割ったような、強度大丈夫かな?

 いや、ふり回しても、地面刺しても、ゴブリンさんブッ叩いても大丈夫だったし…。

 見た目以上に頑丈剣かな?」

「切れる剣なんて持ち歩いてると、銃刀法違反だよコヨミちゃん、お土産の木刀じゃないし、

 護身用とか言ったら捕まっちゃうかもかも。

 お仕事ための実用だったら状況酌量あり、なし?」

「私、お爺ちゃんの裏山での藪こぎ用にナタとか使ってるけど、この剣使えるのよね?」

「その鉈より切れ味十分だと思うけど、その剣で僕でも切ればわかるかも?」

「物騒かな」

 まぁ、綺麗でカッコいいし良いかな。


「で、ショルダーバックは革製? なのかな?

 学生鞄とアタッシュケース合わさったような感じ?

 左右の丸い金属盤、レンズ状の大きな錠前飾りと、腰に固定するベルト付けた感じかな。

 軽いけど丈夫、上品な恰好良さ、蓋も開けやすくて、しっかり閉まる。

 うん、問題なし。

 中身は…、

 まず、あたしの小物といった私物と、父さんから手紙。

 それと、携帯食用の弁当箱、

 水筒、

 トーチに火打石、

 ロープとか入れてるケースに小型ナイフ、

 ゴミ入れ。

 全部を小奇麗に畳む事で出来ていて

 …だぶんこれって、

 テーブルトークRPGで、おなじみの冒険者セット?」

「コヨミちゃんテーブルトークなRPGすんの? すんの! すんの!!」

「部活の皆としたことあるよ。

 突発で即日マスターやらされた。

 キャンペーンも夏休み合宿で終わらせた。

 追加シナリオも冬休みにやった。

 同じシナリオ新入部員がマスターやって、

 ゴールデンウィーク中プレイヤーやった。

 う〜ん。

 お父さん達は、あたしを冒険者にでもしたいのだろうか?

 剣の使い方は、剣に聞けとかいわれたけど…、

 旅には過不足ないけれど、貴族子女の装備じゃないような…。

 まぁ、わからん」

「命名:麻布十番の冒険者セット」

 見た目は高級品なんだよね、見た目は。


「疑問は目に前に置いといて、そろそろ服着ようよコヨミちゃん。

 ヲリヱちゃんがマネすると風邪をひいちゃう、恋もしちゃう」

「うん?

 そうね。

 さて、あたしの家こと、お貴族さまのお衣裳はと、

 …

 白のドレスシャツに襟のリボン。

 背中バッテンの吊りスカートに、

 平底黒靴、

 …

 これ、どこその良いとこの小学生さんだ。

 いや、あちこちファンタジーぽいとこあるけど。

 学生服と軍服の親和性あるけど、これは無いんじゃないだろうか、お母さん。

 でも、やたら上等そうな生地の裏には目立たない厚紙みたいの充ててあるのよね。

 ひざ丈スカートのプリーツは乱さないですみそう、強度的に。

 この可愛い靴も、野原も歩いてきたのに何も問題なかったし。

 全部白黒パンダカラーだから何かの迷彩になるのかも?

 冠婚葬祭やドレスコード必要なところ問題なさそう。

 それならいっそ、暗殺者向き衣装なのかな?」

 高級感のある肌触りの服を、ひとつひとつ自分に説明しながら着けていく。


「コヨミちゃん楽しそうだね、はい、これ鞄」

「ありがとルラ。

 鞄は腰の位置に後ろに回してコルセット状のベルトでしっかり固定。

 うん、肩や脚も自由に動く、鞄も装甲も身体の動きに干渉しないし、なんか凄いね」

「命名:童貞を殺す冒険者の服」

「ハイウエストスカート風。

 さて剣は、どう装備しようかな?

 鞄に横に引っかけると、いろいろ邪魔そうだし」

「コヨミちゃんが、その剣の子、持たなくていいけど。

 鞄の飾りに、尻尾みたいにくっ付けるたほうがいいかな、横のでもいいけど」

「あっホントだ、くっ付いて動く、磁石かな?

 そして、まあ貴族のお子さんっぽくは見えない自分。

 それより、鞄に傘を刺して登校する、お子様みたく見えそう」


「コヨミちゃんへ、残りはコレ」

「フード付きの黒いケープを羽織って準備完了。

 防寒と雨具にも使う外套。

 こっちも装甲らしきものがある。

 折り畳めるヘルメットみたいな構造してる。

 フード被ると黒白の赤ずきんちゃん」

「命名:玄の防空頭巾。

 で、

 楽しかった、

 コヨミちゃん」

「うん、楽しかった。

 こういった良い持ち物は、やっぱり良いね」

 GMとして設定好きだった私には、かなり満足出来た。

 リプレイにするときの臨場感もあるし。


 ………

 ……

 …


「さあ、みんな出発しようか」

「では、しゅぱ〜つ」

「マッテ、マッテ」

「うん?」

 ヲリヱが「遺跡まで、駆けっこしようよ」と、提案すしてきた。

 なら、色々と準備だね。


「じゃあゴールは、あそこにある門みたいな二本の柱のところ。

 ちっちゃくて飛べる君達はどうしよう?

 フェアで平等な駆けっこ難しいそうだけど」

 −キィ−

 ウサギ竜なキヲンと、芋色ジャージ妖精のヰるかなヱが腕章掴んで返事する。

「審判役で、いいの?

 じゃ、注意事項。

 みんなコケないように注意して、妨害行為はなし、協力プレイも不可、仲間外れの子が可哀そうだからね。

 道具や地形の利用は可、緊急時の救援は、みんなでする。

 以上、

 駆けっこ精神にもとづき、正々堂々駆けっこすること」

「さらに勝利者のご褒美にはネーミングライツとして、あれの命名権を与えるモノとしちゃおう」

 ルラが、くだんの遺跡に指をさして、いつものように唐突に言い出す、

 のは予定外の予定どおりとして。

「うん?

 まあ、仲間うちの通称だからいいのかな?

 それで良いかな、みんな」

 と、聞くと、みんなが真剣に返事する。

 遊びは本気になると、より楽しい。


「キヲンとヰるかなヱは、先に行って、このロープでゴールの準備が出来たら合図してね。

 審判として公正な判断を」

 −キィ−

 翼の生えたカメ竜と…ブルマな妖精が、ロープを持って、クルクルと飛んで行く。

「二人とも仲が良いね」

「そだよ、そだよ」

「ウンウン」


「あの二人もう着いたみたい、合図どうするんだろ?」

「キ〜ヲ〜ン〜、ふぁいやぼー♪」

 ルラが叫ぶとヒュルヒュルと火の玉が上がり、パァン!という音とともに、青くすみわたった空に花火が炸裂した。

 今日は良い天気になりそうだ。


「これじゃ運動会だよね。

 ほら、ヲリヱ、ルラ、合図が鳴ったよ。

 スタート、スタート」

「ワーィ♪」

「ひぁうぃごー、ヰるかなヱー音楽ぷりーず」 

 遠くから軽快な音楽が響く、ほんとにすごく運動会だ。


 ヲリヱは、トタトタと山の斜面を横そって、行ったり来たりと一生懸命、トロッコ列車のスイッチバックみたい。

 ルラは、足にホバーがついたみたく緑のなか進んでる、けど、飛んだり跳ねたり無駄にテクニカルなコースをやってる。

 自分は、上から見たコース取りはすんでるし、いくつかはロープでショートカット出来そう。


 よし自分勝ったな。


 で、ゴールは三人同着だった。


 ヲリヱが盾兜をソリにして、

 ルラが謎衣装を、バルーンに膨らませ回転してラストスパートをしたからだ。

「ワーーーーォ」

「ろーんりーんぐすとーん♪ は、とまらなーい♪」

「それは駆けっこなのかなー」


 ゴールを通り過ぎてくヲリヱとルラを、慌てて追いかける自分とキヲンと救護班妖精のヰるかなヱ。

「オーーワーーォ」

「めっがっまっわーーたの♪ いま」

 全員、草まみれ土まみれ。

 楽しかったからいいか。


 ………

 ……

 …


「あはははは、面ろかった、ヲリヱちゃんソリかして、ソリ面ろそ」

「後にする、動かない、汚れ取れない」

 ハンカチと水筒の水で、みんなの汚れを落としていく。

「みんなで、一緒で、同着で、一等賞で、だから命名権どないしましょ?」

「みんなで決める?」

「なら僕が決める」

 ルラが手を上げて、あたしに目配せした。

「じゃあ、自分も」

 と、自分が手を上げると、ヲリヱが慌てて手を上あげてピョンピョンと立候補する。

「どうぞどうぞ」

 と、ルラが言ったので、

「じゃあ、自分とヲリヱで案を出すから、ルラが判定して」

「あーん、コヨミちゃんお約束やってくれない」

「いじわるしない、仲間外れしない、ヲリヱは、どんな名を付けたい?」

「ヒミツキチ」

「日本語で憶えちゃってたかー、ま、それでいっか」 

「ヒミツキチ〜」

「命名:ヒミツキチとする」

「ヒミツキチー♪」


 ………

 ……

 …


 ゴールからは、遺跡まで滑走路みたく真っ直ぐ、

 途中ストーンヘンジな環状石の下とおるけど。

「ではでは、命名したからには『ヒミツキチ』探索隊の隊長はヲリヱちゃ〜ん。

 で、サブリーダーは、副部長のコヨミちゃん」

「これも部活あつかい?」

「で、キヲンが悪漢番長」

 −キィ−

「ヰるかなヱが生き物の係」

 三角巾割烹着妖精ヰるかなヱ。

「ヰるかなヱ、それ給食の係だよ。

 ルラは何するの?」

「ふっふっふっ、この僕こそが、この探索隊一番の、ひらのシタッパーっなのだ。

 なにしろ魔王四天王のなかで、僕こそが最弱のつらよこせよ」

「なぜ誇らしげかな?」

 けど。

「よしルラ、そのいと尊き役を全うせよ、シタッパーっルラ」

「ヨキニハカラエ?」

「はは〜、ありがたきしあわせ〜♪」

「でも、魔王四天王って、何やってるの?}

 たぶん遊びだろうけど、どんな遊びか知っておかないとね、いっしょに遊べない。

「僕達、魔王四天王は、人の願いを打ち砕くものなのだー」

「なんか、ぶっそうね」

「まさに魔王四天王でしょ」

「でも、自分やヲリヱのお願いは聞いてね」

「はは〜、コヨミちゃん達のお願いだったろ、無抵抗に絶対服従なのだ~」

「そこまでしなくていよ、ルラ」

 うん、これでよし。


「じゃぁ行こっか、どこから行こう? ヲリヱ隊長」

「マッスグ」

「ごぅごぉごー♪」

「最初に前方後円墳みたいのからね。

 遺跡の入口みたいな前方部分はこっち向いてる、ファンタジー的ダンジョンの門らしきあれかな。

 みんなで、一番面白そうなところから行こう」


 ………

 ……

 …


 歩いてすぐ、ゴールにしてた柱に違和感に気づく。

「うん?

 ゴールにしてた柱って、近くで見ると人の石像だったんだ、兵馬俑みたいのかな?

 もっと大きいけど。

 天空の城の映画に出てた、朽ちたロボットさんみたい」

「門番さんだね。APな、あーまーどとるーぱーさいず?」

「じゃ、後になっちゃったけど、

 みんなで、ここに遊びに来ました、おじゃまします」

 と、一礼。

「じゃまするけど、帰らないしまーす」

「シマスー」

 −キィ−

 みんなも門番さんに一礼。


 ………

 ……

 …


 何もない広場を、ヲリヱを真ん中に、みんなで横並びになって。

 遺跡に向けて、途中で石の橋を潜って、歌いながら進んでいく。

 鼓笛隊妖精なヰるかなヱからは、マーチの音楽が響いている。


 遺跡から離れた場所には、上から見えてた半分土に埋まった低い建物と、石の舞台なものがいくつか。

 ほんとに滑走路みたく何もない広場。

「じーめん75歩き〜、

 パーパーパパパパーパーパーパー、パパッパパー♪

 あつい心を強い意志で包んだ人間ではない僕達」

「異種族さんだよねって、よくそんな古い刑事ドラマ知ってるね。

 そのネタの提供は、あの青根愛子ちゃん?」

「そだよ」

「あの子けっこう年上の子?」

「あの子、今時の子だけど昭和珀年祭がマイブームなう。

 レトロでフューチャーな新し古いくて、よくわかんないけど面白いんな

 昭和って、ド汚なくて、ドギつくて、ドしがたく、ドっしようもなかったんだけど、

 そういうのって恐いもの見たさでドッきドッきして、よくわかんないけど面白いんだって。

 業が深いよね」

 …

 やっぱり、うちの部員みたいな子かも?


 ………

 ……

 …


 草や土の下の地面は一枚岩かな、継ぎ目やひび割れなんかは見当たらない。

 石畳やレンガやコンクリート、ましてアスファルトではない、石灰岩というか貝殻の表面みたいな感じ。


 途中のストーンヘンジな環状石の橋は、下を潜る時にちょっとドキドキ。

「上に乗って走って回ろう」

「面白そうだけど危ないからダメ、どこから上がれるかは、わからないど」


 近づいてくる遺跡、

 その外観は、入り口のある前方はもっと直方体の神殿みたいな建物で、後円の山はもっと球形、コケと土と植物で覆われてる。

 見えてる部分の建物の材質は、大理石か貝殻の裏みたくツルっとした感じ。


「ルラは、あの遺跡の謂れとかこと、何か知ってる?」

「うん、ヲリヱちゃんの『ヒミツキチ』だよ」

「ヒミツキチ♪」

「それは、自分も知ってる」



 そして、自分達は『ヒミツキチ』に到着します。

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