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01-03 竜と妖精

01-03 竜と妖精 剣の王国 森の中の原っぱをぬけて 遺跡の目印の木に向かって 夜を歩く。



「ヲリヱも準備良い?

 じゃあ、とっとと歩こうね。

 頭の上の君も一緒に。

 あたし、ゴブリンさんの仕事、邪魔するの嫌だよ」


 うん?

 …あっそうか、自分達にとってゴブリンさんは敵でもないんだ。

 ゲームとかと違うし。


 夜の草原を、自分達は歩く、ルラが言ってた木にへ向けて。

 月は一つ落ちて、二つはまだ低い空にあって、二つ以上の月は見えていない。


 さっきより暗い草原は、草の間に夜光虫みたいな、光の粒子が見えた。

 強い風が吹くと、風にのって、光の粒達が、空に舞って行く。

 光珠、ケセラン・パサランかウイル・オ・ウィプス達の光。

 普通のあたしの風景。

 だけど、私としては不思議なに異世界の風景。

 …綺麗で良いけど。 


「後から付いて来る子は居ないよね。

 なら、さっきの続きしよう、歩きながらでもいいよね。

 でも、ルラやヲリエを相手に自己紹介って、なんか変な感じ。

 自分より、自分のことをよっぽど知ってる相手に、自分のこと話すの…、

 まあ、私とあたしの事は自分でも良く解かってないし、その足しにもなるのかな?」


「ヲ〜〜」

 パチパチパチ♪

 ルラとヲリヱが、またハイテンションで盛り上がっている。

「なんでも良いのかな?」

 うん、なんでも良いよね。


「さて、何から紹介をば、いたしましょう」

「ィエ〜〜ィ」

 パチパチパチパチパチ♪

 更に高いテンションで盛り上がっている。

 ルラとヲリヱが頭の上の生き物?のキヲンも。

 ほんと、なんでも良いのんだよね、自分達ならね。


「ファレステジア王国の貴族ストラナッハ家のカキシュの子、コヨミ10歳、家名は継いでない。

 さて、ファレステジア王国とは…、」

 と、

 この子達と私のために、知ってる事での社会の時間:この国のお勉強。


 ………

 ……

 …


 と、言うわけで、あたし達は、父さん達からお使いをお願いされて、その『塔台』に行くのでした」

「すぴ〜♪」

「クウクウ」 



 勉強がてらに、いくつか問題だすと寝たふりした二人は、そのまま本気に寝だしてた。

 ルラもヲリヱも、歩きながら器用に寝ている。

 目印の木は、丘に向けて登り調子なのに。

「おやすみヲリヱ、ルラ」

 −キィ−

 この子達の手を引ながら、夜を歩く。


「あと、起きてる子は、頭の上の君だけかな?

 君の為にも、あたしの自己紹介したんだからね」

 −キィ−

「そう?

 うん、嬉しい。

 その共鳴音、君の鳴き声でもないのかな?」

 と、頭の上の動く物を取って、目の前に確認する。

 手を引いてた二人は、私について歩くし…、はぐれる様なら修正しよう。


 そして、改めて見たこの子は、白色ベレー帽だった、羽毛の毛玉だった。

「うん?

 君、毛玉?

 それとも、お帽子?」

 −キィ−


 と、思ったら毛玉と目が合った、白目の少ない金色に青線の蛇眼、強い好奇心の瞳。

「うん?

 毛玉スライム?

 ケセラン・パサラン?」

 −キィ−


 と、子兎みたいな耳と鼻も出てきたと、それと刀な角も出てきた、

「うん?

 異世界、馴染み一角兎?

 アルミラージ?」

 −キィ−


 と、思ったら一角兎から、細い首と尻尾も出てきた、やたらに尻尾長いな、比重もしっぽよりかな。

「うん?

 一角蛇?

 ケツァルコアトル?」

 −キィ−


 と、思ったら一角蛇から、やたら胴が長くなったあと、鹿みたいな双刀の角が生えた、手足に馬蹄みたいのも出来た。

「うん?

 東洋の龍神さん?

 それとも麒麟さん?」

 −キィ−


 と、思ったら東洋龍から、鳥みたいな翼が出てきた、かぎ爪ついた多段翼、揚力かな? 重量分散して軽くなった気がする。

「うん?

 変な鳥さん?

 それとも始祖鳥?」

 −キィ−


 と、思ったら変な鳥から細い手足が出てきた、指が細くて器用そうだ。

 自分の指をつかんだ小さな指に、確かな力を感じる、

「うん?

 翼竜さん?

 それとも手乗りドラゴンさん?」

 −キィ−


 と、思ったら翼竜から垂直翼とカナード翼とかも出てきた、背びれ腹びれ尻ひれ?

 あれ、重みが無い、というか指ごと待ちあげられそう、

「うん?

 まさかのお魚? 金魚?

 う〜ん、なぞ生き物。

 わからん」

 −キィ−


 と、キヲンは飛んで手を離れると自分の頭の上に戻った、ほど良い重さ。

「うん?

 今は、お帽子なのかな。

 でも君は君、キヲンだよね。

 まぁ、さっきのは自己アピールだよね、形態変形の。

 自分をバカにしてたんじゃないと感じたし。

 今の自分は、こんな子だけど、よろしくねキヲン」

 差し出した指に、キヲンは両手で掴んで握手する、結構強い力で。

 いい子で頼りになる子だと思う、きっと。


「ねぇ、キヲン」

 手で取りなおすと、グダーっと伸びをするケダマ。

 子猫を、こねてるみたい。

 伸びたネコみたいなのを手でなでまくりながら話しかける。

「君に似た子、あたし見た事あるよ。

 竜やドラゴン。

 家のベランダや、空を見てたときにね。

 高い空を、飛行機雲を引いて綺麗に飛んでるとことか。

 夜に星に向かって飛んで行った光の線とかもね。

 うん。

 君、ルラが言ってたけど、自分を守るために来たんだよね、

 自分も守られてあげるけど、この子と、あとあの子も守ってあげてね、君のほうが、あたししより強いんでしょ。

 でも、そのかわり君も守るからね。

 君と二人、どっちも守る競争だよ。

 君に負けて何てあげないんだからね」

 −キィ−

 キヲンが、頷いた。

 腕の中の小さな子、転がしたり倒したりして歩き続ける。


「まだ、空は、夜は、明けないし、目当ての木にも、まだつかないねキヲン」



「じゃ、次は『若宮のこよみちゃん』の自己紹介だね」 

「ルラ、毎度のだけど、

 急に起きて、叫んで、分けの分かんないこと言うと、あたしがびっくりするよ。

 ホントに。

 ヲリヱも、…起きちゃったかな」

「オキタ…

 オキレマシタカナトオモイマス…」


「結構歩いたのに、見えてる木が遠いね。

 …。

 しゃ〜なし、

 私こと『若宮 こよみ』の話をしてしまおう。

 って、言っても、今の私の実感としては、学校で部活してる放課後のような、変な使命感と妙な充実感。

 それと、家で弟とその友達相手してるような、お姉さんお姉ちゃんしてる感じなんだけどね」

「どんな部活に入っているのこよみちゃん、あと弟ちゃんは、どんな子なん?」

 ルラもヲリヱも興味深々、

 って「入っていたの」じゃなく「入っているの」か。

 うん、まぁいっか。


「私が、

 あの、

 いかがわしい諸悪の根源『部長』に、騙し入れられた『伝承文学研究会』と言うのはね。

 …

 琵琶湖の湖東にある田舎高校の、

 すっごい田舎の高校にある、

 廃部寸前の、郷土研と文芸部その他もろもろが統合されて出来てしまった部で、

 資料とか印刷機材が揃っていたから、美術部から弾かれた同人作家と、各種の趣味人が増殖する、由緒妖しいオタク部で、

 毎日帰宅もせずに本気で遊び倒れる帰宅部員な幽霊部員どもを、まっとうな学生生活させようと、

 副部長の私と、親友タモ子と、有志の子達で更生させ続けた結果、我が校の最強の部になった活動内容はというと…?

 …何やってるのだろう?

 あの部長には『昔話とか何とかを、みんなで話し合うクラブ』って、騙されて入ったんだけど…」


「それだから、若宮のこよみちゃんは、説明くどいヲタクな子なんなんね」

「うっさい、ゴメンね、そのとおりよ、あの部長が全部悪い。

 それでも、これでも、高校一年生の乙女よ。

 お祖母ちゃんの、おしゃべりのクセ写ったのよ。

 でも、ありがとね、お祖母ちゃん」


「なら『こよみお姉さん』とか『こよみさん』とか呼んだ方がいい? いい?」

「コヨミオネエサマ?」

「…そう呼ばれると、なんか落ち着かないから『コヨミちゃん』でいいかな。

 ルラって、なんか私の弟のアキラと似てるしね。

 弟にも『コヨミちゃん』呼ばわりだし、まったく姉を敬え、好かれているのはわかるけど。

 …

 一応、言っておくと、学校や、他のみんなには『美人で、気だても、頭もよく、運動も出来る優等生』って、評判なのよ」

「おお、おお♪」

「オオ」

「あと『何かが全てを台無しにしている』とも『怒れる副部長』とも、言われる私ではあるけれど」

「ははは、ははは」

「ワハー」

「まぁ、いっか、エピソードは、いっぱいある。

 そう、だったら」

 っと、

 この子達の好きそうな話を即興で話作る。


 ………

 ……

 …


「そして、来年度の文化祭出展として、あちこち調べ歩いていたら、霊仙三蔵と太元師法に関わる『暗闇にひそむもの』事件に関わる事になるのを、その時の私は、知る由もなかったのであった。

 と「小説家になろう」ごっこは、ここまでかな」

 私の記憶と、これからあるらしい情報を使って話を纏める。

 歩き疲れた様子もなく、ルラとヲリヱとキヲンが感動した目で自分を見ている。

 そんなに気に入ったのかな私の話。

 この後に続く情報では、私の初恋話なるから恥ずかしくて言ないけど。


「って、こんだけ話ていて、見えてる木につかない、遠近法おかしい」

 星空の夜で巨木に向かって歩いてる、そんな幻想的な風景による、現実問題で話をそらしたい自分だけど、同行者達はそうでもないらしい。


「なぜなのだ、壮大な話が始まりそうなとこで一切合切、絶ち切られてしまった」

「バカナ、ハヤスギル」

「ここから先は有料コンテンツで、世知辛いのかなコヨミちゃん?」

 −キィ−

「いや、ここから先は、私がこれからのこと、良くわかってないだけだし」

 実感のない情報だけの話だし、

 …あらすじみたいなものかな?


 しかし、好きなアニメを特報で切られた部員達みたいな反応してるこの子達。

 うーん、どうしよ。

「この後の事は、当事者じゃないと開示不能なリアルインタビュー?」

「ソノ子タチダケノ、ヒミツ?」

「私や部活の子達の、これからの話みたいだしね。

 どんな話になるか、自分でもわからないから部員でもなれば…」

「なら、

 そしたらばな、コヨミちゃんコヨミちゃん、僕『伝承文学研究会』に入る入る、ヲリヱちゃん達もね。

 えっと、どうすれば、入れるんるん?」

「ハイルマス」

 −キィ−

 なんで架空になる話なのに、みんな真剣なのかな?

 まぁ、本気で遊んだほうが楽しいし、そうしようかな。


「うーんと、適当に昔話とか、なんとかを話し合えばいいような?

 そんな部活だったような、そうでもないような。

 まぁ、何でも良かったから、それで良し、私の副部長の権限でね」

 あの部活は、部外者含めて、かなりカオスだったし。

「ではでは、コヨミちゃんなんか、昔、昔な、お話してして」

「オハナシ? オハナシ♪」

 −キィ− 


「また、丸投げかな?

 問題の起点が自分なんだし、しかたないのかな?

 う〜ん、

 じゃあ、定番のあの話もしよう」

「なんの話?」

「ドンナハナシ?」

 −キィ?−


「この話。

 わたくしめこと、若宮コヨミが語るのは、

 毎度〜おなじみ〜『桃太郎』っの、お話しを〜っ、

 てね♪」

「モモタロウ?」

 歩きながら、紙芝居たいに昔話を話し歩く、異世界にいる自分を妙に納得しながら。



「むか〜し、むかし、あるところに、お爺さんとお婆さんが、鬼ヶ島へ行きました」

「おや?

 いきなり鬼ヶ島?

 せっかちな、お爺さん達やね、出出し間違ってないコヨミちゃん?」

「朝早くからの、山への柴刈りから帰ったお爺さんは…」

「続けるんだコヨミちゃん。

 でも、この後どう繋げるのやらコヨミちゃん?」


 ………

 ……

 …


「そして、お爺さんは、山へ柴刈りに、お婆さんは、川へ洗濯に行きました」



「めでたしめでたし」

 パチパチパチパチっと、最後まで話しきった自分に向けて、この子達のみんなが手を叩いている。

 

「どんぶらこ〜、どんぶらこっと、ご清聴ありがとうございました」

「ドンブラコッコ♪」

「お話しの完遂と、心の鬼退治ってな読書感想分を書けそう僕でした、まる」

 −キィ− 

「『桃太郎』の話って、英雄譚や勇者モノや冒険モノのアーキタイプでしょ。

 教訓としては、家に帰るまでが大冒険、

 ちゃんと、みんなで御使い終わらせて家に帰ろうってこと。

 それでは、これからは部員として、副部長の私の言う事聞いて、部活動を楽しむように」

「は〜い、いえっさー、冒険三原則だしね」

「アイマム」

 −キィ−


 まあ、あの部、これで舞台劇したり、同人誌作ったり、ゲーム作ったりもしたけど。

 部外者の部員も、部外活動も、やたら多かかったからね。

 そんなこと思い返していると。



「あっ着いてもたよコヨミちゃん」



 月夜をぬけて、目印の木のそばにたどり着く。

 その木は、大きかった。

 皆への昔話でて見逃してた目印の木を見上げる。

 見上げた木は、大きかった、大木だった、巨大樹だった。

「北米セコイア?

 古代のシダ植物?

 この距離での三角法で200メートル以上あるね」


 十字の星座の中心を指してるみたいな木の天辺。


「この近辺の森の木、みんなそうだよ、コヨミちゃん」

「あたしの記憶でもそうだったね、計ったことないけど…。

 ルラ、この木まで来たんだから、くだんの遺跡はもう見えるの?」

「この木の向うに行けば見え見え〜、丸い山みたいのがそうだよだよ」


 周囲十何メートルからの大木の向う側に周る。

 この木の丘から下った先、大きな峡谷の始まり、谷地の底のほうで、丸と四角の山みたいのが、遺跡らしかった。

 三つの月は二つ沈んで一つだけ、欠けた月で明りは足りない。


「言ってたとおりの、何かの山かな?

 左右対称だから人工物には見えてる。

 幾何学な直線や円形も見え隠れしてるから、きっとそうなんだろう。

 予想より大きな遺跡、まあ暗くてよく解かんないけど学校の体育館ぐらいの大きさかな」 

「ではでは、ひあういご〜」

「チョイ待って。

 もう、いい加減遅い時間、明るい時の遺跡も見たいし、今日はここまで。

 この木の真下だったら、枝とか変な虫とか落ちてこないはずよね。

 夜露もマシでしょ」

 ここからだと山の下りになるから、明るい時の方がまだ安全だとおもう。

「そうだね。

 うんじゃま、そうじゃま、もはやここまで、ここで寝るまで、ここをキャンプ地とする、では、ばたーんきゅーん」

 ルラは、そのまま後ろに倒れて寝支度。

「ス〜ス〜」

 と、ヲリヱの深い寝息。

 ヲリヱは大木の梢を枕に、すでに寝ていた、

 三つ編みを解いて、杖も鞄も法衣も鎧も脱ぎ散らかして、下着のまま。

「いつの間にやら。

 パジャマに着替えるまで持たなかったか、下着は、キャミソールとドロワーズ…母さんが着せたのかな?

 あ、この鎧って自力で直立するんだ。

 あたしの家に飾ってあったのに似てるけど、こんなに小さくはなかったはず…。

 …

 自分は、こっちで準備と後片付けやっとくから、ルラはヲリヱと寝ててね」

 トーチを地面にさして明りをとる。

「ごろごろーとピタ、ヲリヱちゃんに添い寝添い寝、および毛布巻込みこうげきモフモフ、お口のなかハンカチできゅっきゅと、お歯磨き。

 ではでは、コヨミちゃん、なんか寝物語してー『伝承文学研究会』として」

 また、丸投げかなぁ?

 まぁ、ヲリヱも寝てるし、こんな話がいいかな?

 明日のこともあるし。

「だったら『一寸法師』のお話しをするね」

 と、ルラとヲリヱに、向かって優しく語りだす。



「むか〜し、むかし、あるところに、一寸法師という…」


 ………

 ……

 …


 もう、鬼には一寸の価値もない一寸法師。

 っと」



 昔話と夜の準備中、ヲリヱは、幸せそうに、す〜す〜と寝ている。

「で、

 なんで、ニッポン昔話をスプラッタホラーにしたのかな? コヨミちゃん」

「教訓としては、明日は遺跡探索なんだしダンジョンでは何がトラップかわかんないから気を付けけようね、の、例えなばなしかな?

 それに、この世界自体が、私に対するトラップかもしれないね。

 宝や仲間が罠なんて、良くある事だし、明日見る太陽が、罠かもしれないでしょ。

 それは、それでいいけど、もしヲりヱやルラが傷つくことになったらイヤだよ自分」

「コヨミちゃん自分そっちのけで、割と救いようないけど、そういったこともショっチューしょっチュー、そう僕が僕自身こそが罠だったのだ」

「ルラは存在自体が罠だよね」

「罠はしっかり吟味してぇ踏むべしっフむべしっフミべし♪」

「早よ寝い」

「ふみぃ」

 ルラとヲリヱを見ながら、この子達の為に死ぬのはかまわないとしている自分に、違和感を感じないのを妙に思いつつながら…。

 

 寝る準備と片づけ途中で、持ち上げたヲリヱの盾兜の鏡に映った大木。 

「精霊か妖精でも住んでいそうな巨大樹だよね」

「呼ぶ? コヨミちゃん」

「呼びな、夜中に相手も迷惑だ。

 さて、明日は遺跡探索、夜明け前には起きたいな」



 そうして、その遺跡の方に目をやると、光りの点が見えた。


 それは、高速で、こっち向かってくる。


 ヲリヱの盾兜を構えて光点に向き合う、剣は無い。

 遺跡からの攻撃?


 そんな記憶は自分にはない。

 けど、あたしには10才の経験しかなく、あの遺跡のことは何も知らないから、自分は最大限の警戒をする。


 一歩目を踏み出す、ついでに大きく頭を振って、頭の上の子を振りはらう。

 対象の方向は、こっちに真っ直ぐ、やっぱりここが狙われてる?

「ルラ、ヲリヱ起きて!」


 二歩目で駆け出す、ついでに頭の上の子を掴んでほおり投げる。

 対象の目的は不明、不確定情報だらけだけ、対処法は当たって砕けろ、…しか残ってないな。

「みんな伏せてて!」


 三歩目で加速する、手から解けなかった子に言いながら。

 対象の速度は早い、けど視認出来る、弾丸ほどじゃない、光線でもない。

「キヲン、付き合って!」


 四歩目で跳躍する、対象に向けて盾兜を構える、爆発物なら少しでも被害が向くよ上に傾斜をつけて。

 対象の大きさは、こぶし大ぐらい、光はアフターバーナーじゃない、爆音も音速音も聞こえない。

「止まって!」


 五歩目で、盾兜に確かな手ごたえ、パッチーンと言う音と、何か柔らかいものがあたった感触。

 対象が止まった?

 かな?

「なに…、

 かな…?」


 六歩目で着地 盾兜に対象が張り付いてる感触。

 対象は、何だろ?


 と、盾をひっくり返して見る。

「妖精?

 捕まえた?」



 盾兜の鏡面にはバードストライクしたような、手の平サイズくらいの女の子みたいのが張り付いてた。

 ファンタジー的なピッチリした妖精服と透明な翅をした、耳の長い妖精の子が気を失っている。

 この妖精? みたいなのは、時と場所を問わず、ごく偶に、あちこちにいる。


「なんなんコヨミちゃん?」

「ルラ、起きちゃったの?」

「コヨミちゃんが起こしたんよ、ヲリヱちゃんも起きてフラフラフラフラ。

 って、おや『ヰるかなヱ』だ。

 ヰるかなヱどこ居おってたん、て、ノびてるね、平べったく」

「ヰるかなヱ?」

「その子の、いつのまにか出来てた御名前。

 え〜。

 あ〜。

 うー。

 よし、

 ヰるかなヱが騒いでただけならもう寝ようよ、ヲリヱちゃんも限界限界」

 −キィ−

「キヲンも、そうなの。

 って、この子、ヰるかなヱは?」

「こうする、寝てよ」

 ルラはヰるかなヱをむんずと掴んで引っぺがすと、丸めて自分の胸ポケットにギュッギュと突っ込む。

「どうるのよ、この子」

「美味しいよ」

「食べんわ」

 ポケットをのぞくと、何故か、幸せそうに膝を抱えて眠る妖精がいた。

 うーん。

 この世界の妖精のする事だしね。


「…寝ようか、みんな」

「ヲリヱちゃん寝落ちちゃったから、コヨミちゃん運ぶの手伝ってね」

「うん」




 そして、自分達は明日の遺跡探索に備えて、ここにいるみんなと眠りにつきます。


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