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01-02 ともたち

01-02 ともたち 剣の王国 遺跡のへの途中の草っぱ 三つの月の月明りの中。



「と、言うわけで、コヨミちゃんは、勇者になってしまうための旅に出たのでした〜っ、まる♪」

「ワ〜〜」

 パチパチパチ♪

 ルラとヲリヱが、謎のテンションで盛り上がっている。

 …

 自分にしても、ルラにても、シームレスで普段の言葉と『日本語』とを切り替えてお話ししている。

 ヲリヱは、幼い頃からの一緒だったからかな?

 難しそうな言い回しは、こっちの言葉で言い直してるし、

 何を言ってるのか雰囲気だけで理解してるみたい。


「これで日本語が話せるのが、仲良し三人組のうち二人になっちゃたわけですね」

 ルラのその言葉に、とたんに悲しそうな顔をするヲリヱ。

 ヲリヱも仲間外れが苦手だ。

 何故、今、それ言うかな?


「いあいあヲリヱちゃん、のったりのったり、のんべんたらりん♪ とした日本語なんてね。

 ね。

 発音表記が貧弱で、同音異句がやたら多くて、聞きずらくて解りずらい、日本語はね。

 元から島国特有文法の変な独自言語なのに、漢字なんて外来語で記録するから表音と意味がずれまくっていているのにさらに外来語多用で、それを漢字のくずし字の平がな片カナの2種で好き勝ってに音の当て果めの、パラタゴス進化を加速させながら時代毎にレベルアップくりかえした日本語はね。

 完全なる不完全言語の、自己美化が異様に進んだ変態後語に成り果てちゃってて、じーえいちきゅーも英語を国語にしとけば世界進出が楽だったのに、放任され見放さちゃった、変なお言葉なのです。

 この国に、日本語の授業が無くてホント〜に、よかった〜っよね。

 ね。

 だからヲリヱちゃんが、そんな日本語なんてもん話せなくても、全く全然なんの問題ないんだからね。

 ね」


 日本語が、すごくディスられる。

「ルラは、日本語にウラミあるかな?」

「? いろいろ遊べるから、おもろいと思うけど僕、欠点のないお言葉なんて無いし」

「そういった子だよね、ルラは」

 美点を蹴っ倒して、欠点を褒め称える子だから。 


「るら~」

「うん?

 それでも、ヲリヱちゃんは『日本語』を語りたい? 遊びたい?

 うん、そうだね、じゃあコヨミちゃんに、お願いお願い、ヲリヱちゃんに『日本語』お話してあげてね」

「何で、私に丸投げなのかな?」

 まあ、そうなる気はしてたけど。


「ではではヲリヱちゃん、君の責任は重大だ、コヨミちゃんが間違って『日本語』なんかと、こっちのお言葉間違えないようにね。

 練習、復習、分割会話が出来ないと、コヨミちゃんが困るやもやも? さっきみたく、無意識に、急に、突然、日本ことば話すと出すと…。

 コヨミちゃんが変なこと話しだす、変な子にしないがためにも重大なのだし」

「フンフンフン」

 と、やる気十分なヲリヱは激しくうなずく。

「自分が悪いのかな?」

 うーん…悪いのかも、こんな面白そうなオモチャ見せちゃったらね。

 


「まず、今、持ってるものから、複数視点で読み合わせしていこういこう。等価交換、物々交換、異文化交流、異界化変性、まずまず現物で手に取れるものから現物確認の実情把握、いまそこにある物の語り。そんなわけで、装備確認と容姿確認と用紙確認してして、いわゆるキャラクターシート作成、プレイヤー登録しちゃおうおうっと、

 ステータス、オープン、ファイア〜♪」

「オオー」

 ルラとヲリエは本当にいつものテンションで、カバン降ろして筆記用具を取り出した。

「ここで状況確認の流れなのかな」

 まっ、いっか。

 一休みも一緒にしよう。



 …

 ……

 ………



 三つの月の、一つは落ちて。

 星空の下、真夜中の草原でのピクニック。

 敷物は、ルラが着ていた謎衣装が、いつのまにか変形して、銀色四角のレジャーシートになってる。

 ルラや大人達は、こんなふうに自然と魔法している。

 現実だと、アハ体験か、サブリミナル効果な感じで、

 けど、CG映像じゃなく実感を伴う物理現象として、

 匂いや温感や触感もいつの間にか変わってたりする。


 自然で意識を向けないと感じられない、そんな感覚の世界。

 中世ヨーロッパと言うより、マンガやアニメのファンタジー世界のような、現在過去未来が混じった世界感。

 部活のあいつらが言わせたら「時代背景御意見無用」「設定ボードが多過ぎ」「スタッフや技術に金かけてるのは良し」「制作会社、金策で潰れないで下さい」「AIより不自然なんのが不自然」とか、言いそうな見栄えの良いのが、あたしの世界かな。


 それが、この世なのかもしれないけど、今の自分は解らない事が多すぎて、

 たぶん、辺境らしきこの地の小さな子どもが感じている世界なのかな?

 まだ、わからないことだらけだけでワクワクする。


 そんな事を考えながら、自分はトーチを冒険者セットから出して明りを確保する。

 ルラは、筆記用具を出して執筆準備。

 ヲリヱは、そんな自分達に興味しんしん。


 うん。


「じゃ、コヨミちゃん、日本語にてにて、お話してして」

「何を?

 あっ、ヲリヱ、これ返すね」

 とりあえず起きたのならと、ルラが杖とカバンをヲリヱに返したので、自分も背負っていた丸い盾をヲリヱに持たせる。

 この杖と盾と今の神官服みたいのは、父さん達からヲリヱに与えらた物だ。

 なぜかは、まだわからないけど。


「ではでは、まずまず…、うん?

 今ならばな、コヨミちゃんの思ってても口に出せないコト、言っちゃうやもやも?」

 ルラが、また、いらん事を思いついたようだ。

「メイキング中で、キャラクターが不安定なコヨミちゃんこよみちゃん。

 コヨミちゃんから見て、僕をどうなのか話してみてみて、あっちの『日本語』と、こっちのお言葉で」

 いらんこと言うルラは、基本バカ正直な良い子だと思う。


 では、

 と、ルラの顔を両手で捕まえて、

 真正面から目を真っ直ぐ見て、

 逃げられないようにして、

 はっきりと言葉にする。

 ずっと思ってたこと。


「変な子」

 もう一度言う。

「とっても、変な子」

「大事な事なので2回言われました僕」


「で、性格?

 …性質は、凝り性のいらんコトしい?」

「ういうい」

 嫌いじゃないけどね。


「僕、悪い魔モノなんだよ、悪魔なんだよ、今年で10万とんで10歳なんだよ、…歳はちょいちゃうかもかも?」

「ルラは悪い子じゃないと思うよ」

「でも、サンタさんにプレゼント貰ったことないから、僕、良い子じゃないのかも」

「自分も本物のサンタさんにあったことないよ」

「でも、コヨミちゃんは、ナマハゲに追い回されたことないから悪い子じゃねぇよね」

「それは、そうかも」

 ルラは、あるんだろうか? …ありそうな気もする。


「えっと、自称が僕で、知ったこと全部、条件反射で口にする子どもみたいな話しかた。

 でも、その情報元が謎。

 声音は、眠気の入ったハスキーヴォイスで、寝ぼけたような間延びした感じで、息継ぎ無しでだらだら話すから聞き取りに難あり。

 あと、

 今、気づいたけど、普段から『日本語』しゃべっていたよね。

 絶対に、ろくでもないコト言ってたよね」

「ぎくぎく」

「なんで『日本語』と、そんなネタ満載なのかな?」

「あの子の影響?」

「あの子って誰?

 ルラの友達?」

「ビックリまなこのマナコちゃんこと、青根の愛子ちゃんは、アニメや小説が大好きな、それで心情ツブヤキまくる、オタクの子〜 ヲタクの子♪」

「まなこ チャン?」

 ヲリヱも、その子に興味津々なようだ。

「愛子ちゃんって、その名の子だと日本の女の子?」

「うん、そだよ」

「自分と同じ、異世界転生者か転移者かな?」

「イセカイ ごっこ?」

「一度会って、ルラについて話をつけないといけないような…。 

 まっ、ルラの友達なら、自分もヲリヱも友達だよね」

「トモダチ、トモダチ?」

「友達な、ともだちは?」

「うん、友達。

 けど、近くの子じゃないよね?

 聞いた事なかった子だし」

「ちょっと遠い、世界の中心にいるよ」

「どこそこ?

 まぁ、そのうちに、けど、いつか、絶対に、みんなで会いに行かないとね。

 友達だし」

「トモダチ トモダチ♪」

 オタクさんな子だと部活のあいつ達みたいに人を選ぶ子かな?

 まあ、友達になれるよね。 


 あたしの記憶では、ルラは物心つく頃にはヲリヱと一緒に傍にいた、あたしの家族。

 うん、小さな頃から一緒に育った、あたし達の家族。 

 でも、異種族のルラの両親の事は、あたしは知らない。

 誰かの子…って、わけでもないらしい。

 しいて言えば、あたしのお父さん達が保護者になるのかな?

 まったく管理出来てなくて、ハックルベリーみたく、いつもどこかに旅してる子だ。

 前に、ルラに聞いた記憶だと、

『両親は、いないよ。

 そんな僕らを、つくった子ならいるけどね。

 僕たちが旅をする理由は、使命みたいなもの。

 僕たち、魔物は、産まれながらの冒険者なのだ。

 いわゆる世界ふしぎ発見の旅、神さまとか何かを探してるの』

 …

 たぶん、そんな旅の途中で出会った子なんだと思うけど。

 …

 また新たな見知らぬ友達が出来たけど、

 今は、目の前の子の再認識。

 新たに増えた私の現代知識を使って、健康診断モドキでもやってみるか。


「見た目は、私より背が低くてヲリヱと同じ身長。

 でもヲリヱより骨太で健康」

「ヲリヱちゃん華奢すぎ、もっと肉ついてると、ジューシーで濃くまろ柔らかで、美味しくなるね」

「食感で語りな、ヲリヱを。

 顔は…、まあ可愛いのかな?

 表情が、やたらに豊富、妙な表情をたくさんする。

 そして、くりくりとした目、今の瞳は青緑に微発光してるね。

 うーん、良く見ると多重円のグルグル目だ、ルラの瞳は」

「瞳孔の構造が人間と違うっぽい? 眼筋が十字じゃなく、斜め多重についてるし。ほら、こうやって瞳孔の中心下げるとラブターゲットなハート目出来るよ、キャッツアイな蛇眼、車輪眼や砂時計な瞳も出来るよ」

「それ、どんな風に見えてるの?」

「ぐんにゃりしてるよ、あと目を光らせると僕も眩しい」

「それも、そっか」

「光線は盲点から出るから、そんなでもない。

 あっ、コヨミちゃんの瞳の中に僕が写ってる。ほら、僕の瞳に写ってるコヨミちゃんは可愛い?」

「オカッパ頭の女の子が映っている」

 あたしの知っている自分の姿だし。

「それは良かった良かった。あとトカゲさんみたいな透明瞬膜もあるよ、これで風の強い日が多くても安心」

 単純で複雑なルラの瞳、

 妙なところで人間と違う異種族の身体構造。

 ちゃんと私で健康診断出来るのかな?

 外国の子や、人じゃない子とかは診た事はあるけど、ルラ以外に異種族な子って、あんまり知らないし。

 まあ、現状確認にはなるかな?

 知らなかったこと気づかなかったこと、そんなこと言い訳にしたくないし。


「うーん、あたし、いつもの好奇心丸出しな目が好きだよ。

 何を見てたか追いやすいし。

 フォローもするのも、まだ楽かな。

 でも、そういったのも、人から変に見られそうだから、気を付けてねルラ」

「あいあい」

 ルラの顔をムニムニしながら話す。

 あたしもヲリエもカナヱも、一緒の好奇心の先を追ってる、そんな目だからね。


「あちこち人間と違うよね、ルラ。

 見や鼻立ちがすっきりしてない、鼻も高くない丸顔、日本人より?

 今は猫っ毛の癖っ毛のショート 髪は普段は白髪じみた薄い藍色…。

 肌は今は空色、でも不健康そうでもない」

「薄いガミラスの人?」

「そんな感じ、アニメやマンガじゃないと、まず見ない色合い。

 それと額に卵大の石が、

 …飾りじゃなくてマジに埋まってる」

 コツコツと指先でルラの額石をつつく。

「その額の石も、色が変わるんだよね」

「そ〜だよ、そ〜だよ♪」

「何の為にあるんだろ?」

 ルラはくすぐったそうに答える。

 今はトーチの明りでも解る程度の青い光。

 視界の端のヲリヱは、カバンから水筒とお菓子を取り出し、ピクニック始めてる。


「これ、ゾデイアックの子なら額についてるメモリーチップだよ。

 インジケーターなウソ発見機も兼ねてて、色は青ならは正常、黄ならキンチョッ! 赤色危機一髪!! みたいな精神肉体状態を常時表示するドライブレコーダーなブラックボックス〜♪ これほじくり出して解析すると、色々いろいろ五感情報や精神状態とかプライバシー無視で解るんだよ、産声から断末魔まで全部丸ごと。

 ま、

 いわゆるや印鑑にもマイナンバーな個人識別判定になる、ドッグタグだね。

 ほじくり出した形は勾玉みたいなの。

 で、

 頭蓋骨食んで、お玉杓子のしっぽの先っちょ前頭葉にロコツに食い込んでるんから、頭からほじくり出すとえらいことになるよ。

 魔物は生きて死ぬるのが、お仕事だしね」


 …飾りじゃ無かったけど、思ったより重たいなコレ。


「悲しいこと言うと泣くよ、あたしも、ヲリエも。

 額の石は、異種族特性なの知らなかったけど、なんか好きだよ、綺麗だし、これ」

 飾りだけのほうが、まだ良かったけどね、ほんとは。


 そう思いながら、次にとルラの耳を触る。

 その尖った小さな耳の形をなぞるように。 

「ルラの耳の形も尖っているよね、森で見るエルフさん達ほどでもないけど」

「ミスタなスポック君みたい?

 尖ってるのは高周波を聞き取るためだよ、船の空気穴とか、

 あと『可聴領が違います』の、分かりやすい目印。

 ひそひそ話も聞こえてるかもしれませんよってな警告表示。

 あと鼻もだけどね、耳動かせるよ、穴閉じるるために」

 ぴくぴく、ぐんにょり動くルラの耳。

 スピスピ、ひくひくと動くルラの鼻。

 なんで動かす必要あるんだろ?

 閉じるためか、ほんとにピタって閉じてるし。


「ルラ耳が良かったかな?

 難聴系主人公じゃないけど、なんか誤魔化されてる気が…いっぱいある。

 それと、両のコメカミの上あたりから対に生えてる半透明な角?

 肌と同化してるけど、妙なのに綺麗な髪飾りか…アホ毛みたい?

 やっぱりルラ、人間じゃないね」

「そだよ、そだよ」


 一対の細いクリスタルみたいな30㎝程の角を指で掴む。

 形自体は刀に近いのだろうか、感触は…それなりに硬い。

 指を離すとルラはヒュンヒュンピコピコと角を交互に動かす。

 器用に可動している、たぶん変形もしている。


「なの為にあるのかな、その角?」

「バランサーとアホ毛な感情表現とか。

 あと最強幻想さんが黒騎士さんに逆転勝利のヘッドバットするためなのかも?」

「五つな星の話かな?」 

 戦闘用なのかな?


「で、恰好は一張羅なのかの着たきりなのかの謎衣装。

 今は冒険者ごっこの灰色魔法使いローブ兼、ピクニックの敷物」

 あたしの記憶の中では、普段着のワンピースやパジャマ、それから姉の結婚の時にウエディングドレスみたいのにも変形していた謎衣装。

 魔法の品なのかな?

 現場に合わせた可愛いのにしてるし。

 その下の、下着は、競泳水着状の半透明な装甲インナーぽいの、頭の角と同じ材質?

 ルラの胸は、あたし達と同じく成長期前。


「コヨミちゃん、そこモニモニされると羞恥が危ない。

 脇の下にエラみたいのあるし、鎖骨のくぼみに肺に通じるクジラさんの鼻みたいのあるんよね」

「それは、あたしも知ってる。

 一緒にオフロしたときに見てたしね。

 で、他の持ち物も、なんにも無いよね?」

「慣れると旅の持ち物は少なくなるものだよ」

「全く無いのはどうなの?

 食べ物や飲み物は?」

「無くてもいいよ、何でもいいよ、スライムでも食べるよっと」

「食べな、んなもん」


 スライムな粘液玉、ケセランパサランな毛玉、それとウイプスな光玉達は、この世界の何でも屋さんな子達で、お掃除屋さんもしている、あらゆるところの…。

 ペットにしてる子もいるし、それ食べると言われると、ちょっと抵抗がある、今の自分には。


 ルラの身体を、ふにふにと触診する。

「で、コヨミちゃんこよみちゃん、なにしてるの?」

「私の、若宮こよみの記憶で、ルラとヲリヱの健康診断しようとしてるんだけど…。

 みんな無茶するしね」

 あたしも含めて。

「医療技術もいろいろ違うけど、健康は毎日の記録から。

 病気や怪我のときに、今とどれだけ違うかだけでも見分けられるようにしないとね。

 こういったことは気休めだけど、気が休まるまで続けないと、私の気が休まらないの。

 ヲリヱにも、あとでするから良く見ててね、自分にも二人にしてもらうし」

 ヲリヱは「ウンウン」と頷く。

 自分の身体のことも、あたしの分しか今はわからないから情報は多くしないと。


「ほら、マブタの下ベーットするから、舌をベーとして」

「うん、あかん、ベーって。

 それなら、僕の身体、全身解剖したらコヨミちゃんご安心?」

「人体解剖は私が実践したことないから、また後でね。

 自分が解る範囲で知っておきたいだけだし」

 知らないことの基準にもなる。

 人に都合のよい病気や怪我なんてないとしてもね。


 あちこち人間と違う構造のルラ。

 ルラの小さな手すら、人間と違って小指が親指にみたいなってて左右対称。

「うん? この手? 両手が右手な子になれるよね、作画ミスしても誤魔化せるかも? わかる子には手を握っただけで人間じゃないってわかるよ」

「だから、なぜ、そこを気にするのかな」

 小指が親指の分、握力もあり可動範囲が広くて器用な手、人間よりよほど発達してるみたい。

 …。

 これは、どんな進化なのかな?

 人間や類人猿からだと、あちこち飛躍している気がする。


「つぎは、あー、て、口開けて」

「うん♪ あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」

 胸筋も肋骨も肺も、左右を交互に動かして、「あ」の音を、息継ぎなく続けるルラ。


 ルラ開いた口のなかは、見た目正常、虫歯なし、変な匂いなし。 

 色素は違うけど、健康で綺麗な色、歯も尖ってるけど綺麗。

 …?


 ルラの口の中を、もっと覗きこむ。

「あーーー♪ あーあーあっあっあっ」

 歯の数が変?

 親知らずは見えず。

 この年で全部乳歯?

 って、歯茎見るとサメみたいな生え変わり構造なのかな。


 ルラの身体を抱きしめて、体温湿感と脈を体感で計る。

 体温がヲリヱより低めなのなのは、あたし同じ。

 あと胸と背中を見て、心音聞いてから…、

 血液と尿とか、どう検診しよう?

 味かな? 先ずは匂いから?

「コヨミちゃんこよみちゃん」

「うん?

 なに、ルラ?」

「もっ、いいかな? これ以上されると、恋に落ちちゃうよ僕、ヲリヱちゃんの教育にも良くない良くない」

 顔を赤くしたヲリヱが、かぶりつきで見ている。

「何がよ?」

 現状、ルラがいつもどおりに過剰に元気で健康だということは納得出来たし、それで良いのかな。

「えっと、

 ルラ・カンンパネルラは同郷の同い年の同じ家に住む幼馴染で、魔法使い、種族ゾディアックの女の子。

 で、良いの?」

「色々違うけど、一番違うのは魔法使いじゃないことかな」

「ルラがそれっぽいこと、いつもやらかしてる記憶、あたしあるよ」

「まぁ魔法使いじゃ無んくて、魔術師なのだ」

「何? その謎のこだわり」

 うーん、

 わからないことが増えていく。



 …

 ……

 ………



「じゃあ、次は、ヲリヱちゃんだよだよ」

 ヲリヱがモジモジとしたあと「ドウゾ」と、顔を真っ赤にして自分の前に正座する。

「何?

 えっと…、

 ヲリヱ・ストロナッハさん」

 ヲリヱが「ハイ」と、神妙に頷く。

 この金髪の三つ編みお下げの目隠れっ娘がヲリヱで、あたしの家族。


「あたしの記憶だと、

 幼い頃に、あたしの家に来てくれた血は繋がらない少しお姉さん。

 お父さん達から家名を貰ってるから血族の上にはなる、お姉さん。

 けど、

 ずっと身体が弱くて、今も貧弱で、やたらにひ弱だから、ルラとまとめて手のかかる妹って、感じです。

 背も、あたしより低いし」

「ウ〜ウ〜」

「うん、あたしの大切な家族達です」


「今の衣装は、ファンタジーゲームの僧侶がきていそうな、青に白線の法衣みたいのかな」

「それ『神と会話せよ』Tシャツな、ピクトグラムな天使さん交信中表示なのだよ」

「ちょと服大きめ、で、その下に…鎧?」

 ヲリヱの服をひん剥きながら、その下を確かめる。

「ア ア ア」


「全身鎧?

 ゲームとかに出てくるスーツアーマーとかドレスアーマーだよね、これ」

「こよみちゃんは、とてもヘンなことに詳しいんだね」

 ヲリヱは法衣の下に銀色の薄い装甲板の鎧を着こんでいた。

 袈裟じゃないけど、それっぽい、なんで?


「ヲリヱが、元気に動き回っていたから気づかなかった。

 小さな指にも、装甲あるのに良く動くな。

 やたら薄っぺらくて柔らかい構造。

 私の弟と近所の子達がやってたダンボールで作った剣や盾での勇者ごっこ遊びみたいの。

 それより夏休み自由研究の紙で作った戦国鎧に近いかな?

 う〜ん…どんな構造なんだろ?

 脱がせかたもわからん」

「命名:迷君主の法衣」

 ルラは、あいも変わらず急に変なこと言いだす。

 

「あと手に持ってる、鐘の付いた長い布を巻きつけた杖。

 さっきまでルラが持っていたやつ」

「魔ほう使いごっこは、杖がデフォでふぉ。その鐘、磁石が付いててて普段鳴らないけど、石外して振ると結構大きな鐘の音鳴るんよね。絡めた布も解いてふると、遠くからでも目立つよ。その磁石もホイッスルに成ってる。吹き方は一分で6回吹いたあと一分休憩の繰り返し。それか、ピッピッピッ、ピーピーピー、ピッピッピッ?」

「防犯ブザーかな?

 あたしの家は、どれだけ過保護なんだ?

 出発でのゴタゴタも、そうだったけど」

「命名:ココニ・イルダの杖」

 ルラのことは置いとく。

 なにかのネタなんだろうし。


「そして、行くときに頭に被れされたラウンドシールドみたいな大きな…ヘルメットなのかな?

 盾兜?

 盾にも使えて鏡みたいに磨かれてる。

 うん?

 鏡面だと目立つから反射板?

 いや安全帽?」

「さらに命名:水鏡の花笠。なんかいまいち、保留」

 時代劇の雨傘みたいな使い方でもあるのかな。


「大きなバックパックの中身はっと?」

 出るときから背負っていたバックパッカーみたいな大きめカバン。

「着替えと大きなお弁当、玩具とぬいぐるみと、お菓子がいっぱい…しか入ってない」

「おやつは3ゴールドまで」

「多すぎ」

「女の子の素敵なモノでいっぱい、いっぱい」

「熊のファーファも連れて来たんだね」

 ファーファは、これもルラ命名の熊のぬいぐるみ、ヲリヱお気に入りので、柔軟剤CMで見たような子。

「玩具は、トランプもどきと冒険者ごっこのセット?

 …どこで遊ぶ気なのかな?」

「ココ?」と、応えるヲリヱ。

 どこでも遊べる子だしね。

「今は、ちょっとダメかな、まだ目的地ついてないし」

「ウン」と、素直で良い子だ、ヲリエは。

「ヲリヱって、

 この世界の神様達との交信っていうか、神聖魔法的な神託みないなの出来たんだよね」

 それがヲリエの、特技なのかな、自分でも、本当にわからないけど。

 この世界の自分は魔法特性低いのかな?

 今の自分は職業:剣士みたいだし。

「ヲリヱちゃんはね、天使さんと、いっつもお話ししてるんだよ」

「ウンウン」と、うなずくヲリエ。

 あたしはまだ、この世界の神様に会った事はないから正直よく解からない。

 天使さんは良く見るけどね。

「それでなのかな。

 見た目の威厳も実感もないけど聖職者様なんだろう、きっと」

「神も仏もあるんだよ、きっと、どこかに、たぶん、信じていれば、めいびー?」

 なんで疑問形なのかな?


「そうだ、そうなのだったヲリヱちゃん、天使さんにコヨミちゃんが勇者を目指した旅立つこと、伝えてといてね」


「まだ、言ってるかな。

 …。

 でも、

 魔王って…、

 普通に考えて…、

 とても強いのよね」


「うん、世界一強いよ、世界より強えーよ、世界を滅ぼしちゃったくらいに、モンのすんごくつおいよ」

「まさに魔王だね」

 ルラは変だけどウソつかないし、魔王ってホントに世界滅ぼせるんだろうなー多分。


「そんな魔王と戦ったら死んじゃうと思うよ自分。

 …。

 うん。

 あたし、ワクワクしてるけど負けてなんてあげられないし、

 私は、負けるのは良いけど手を抜くのは嫌で出来ないから。

 きっと、そうなるよね」

 うーん。

 転生なんて、するもんじゃないね。

 だって、自分の命が妙に軽く感じる。

 …

 死んだあとなんか期待も何にもしてないのに。


「でも、コヨミちゃんなら、きっと勝てると思うよ」

「うーん、どうしよっか?」

「勝てる、勝てるコヨミちゃん」

「カッテ カッテ」と、ヲリエも言うし。

「この根拠のない期待に、答えようとする私がいる。

 あたしもドキドキしてるし、なんだろ、この本能みたいな闘争心。

 …。

 ま、いっか、

 で…。

 それにしても…」

 それはそれとして、それ以前に現在進行形で、割と、ちょっとした問題が、自分を見上げている。


「そして、ヲリヱの顔、

 …問題のヲリヱの顔、

 …大問題だ

 何ゆえ、みんな、気にしないのかな?」

 そういってヲリヱの前髪をかき上げて瞳を覗き込む。

 自分を写す大きめの青い瞳、

 鼻立ちのとおった小顔、

 アルビノちゃんじゃないけど、桃色っぽい肌。

 あたしの記憶のとおりに優しく見つめる女の子。

 私の記憶からしても普通に美少女さんだ。

 周りも、あたしも、気にしてないけど何でだろ?


「見た目は、不思議な国のアリスさん?

 ハナペチャもソバカスもないキャンディさん?

 わりと、ワールドワイドな美少女顔だよね。

 日本語の話し方と仕草のせいで、バカッぽく見えるの偶に傷だけど、

 …頭は、悪くない子なのに。

 うん?

 何、恥ずかしがってるのヲリヱ?

 ちょっと、この辺の子達と毛色違うだけでしょ。

 ちゃんとヲリヱは可愛いよ」

 どんどんニンジンみたく顔を赤くするヲリヱ。

「割と、どしがたい美少女さんだ。

 このあと、どうしよう。

 他人に劣情や劣等感与えないと良いけど…」

「コヨミちゃんが、守護らないとね」


「ちょっと舌足らずな甘い声。

 話し方は…。

 日本語にするとニュアンスが、いろいろ足りない」

「やっぱり日本語不完全言語、発音制限と独自性で」

 顔を真っ赤にして、涙目で見上げるヲリヱをペタペタと健診していく。

「コヨミちゃん、スキンシップ大好き?」

「そうかも、寂しがりなのかな、自分。

 と、いうか、このまま私が弟としてたみたくプロレスごっこしたいぞ」

「とりあえず、ヲリヱちゃんはコヨミちゃんのモノだから、また今度にしてね、可愛がりすぎるとストレスでどうかしちゃうかも。

 次はコヨミちゃんのこと、お話ししてして♪」

「あたしのこと?

 いや、私の事かな?」


 …

 ……

 ………


「自分のこと?」

「そそそそ」

 ヲリヱと頬と頬をくっつけフニフニしながら応える。

 匂いも触感も健康で問題なし。


 で、自分に、何かあったかな?


「そうだね」

 と、立ち上がり襟を正す、

 少しは恰好つけるために。

 そして、視界の遠くで何かを見つけた。

「…。

 ファレステジア王国の貴族ストラナッハ家カキシュの子、コヨミ10歳、家名は継いでない。

 以上」


「ハヤスギル」

「コヨミちゃんこよみちゃん淡泊すぎすぎ」

「でも、休憩は終わり、ここ片づけて進もう」

「ドシタノ?」

「なんかあったんね?」

「あっちにゴブリンさん達いるし、野生の子達でも出てきたかもしれないしね。

 場所うつそ」

「あらホント、んじゃま、おいとま、しましょうしましょう」

 ヲリヱが、わたわたと荷物をかたずけて真夜中のピクニックは終わり、旅を再開する。


 また、歩き始める自分達。

 そんな中でルラが妙な顔、

 たぶん、思案な顔でいた。

「何? ルラ?」

「う〜んと、どうしよっかな、でも、このままだと、危なっかしいし? コヨミちゃんもこよみちゃんも、元モトから、かなり無謀だしそうだし?」

 何やら呟いてるルラ。


 今までも、そうだったようにルラは、いろいろやらかしてくる。

「コヨミちゃん。こよみちゃん。勇者を目指して旅するコヨミちゃん」

「くどいかな」

「幻想の化け物さん達を倒して進むコヨミちゃん」

「まだ言うかな。

 じゃあ、お話しの前書き風に、今の心情を語ると、


 私、若宮こよみ(ワカミヤ コヨミ)は、ひょんなことから、どうやら、この世界にコヨミという少女に転生してしまったらしい。

 どうやら、と言うのは死んだ記憶は無いけど、見上げた夜空には、異世界名物の複数の月や、見知らぬ星々があったからでした。

 でも、そんなことより、あたしには、お父さんから大切な約束『ヲリヱの初めてのお使いを全うする』という使命があったのでした。


 しかし、

 その使命を妨害する数々の障害。

 出発前から家族皆で大騒ぎの。

 予想もしてなかった同行者。

 刻々と変わる旅の目的。

 次々と増える目的地。

 そして、


 そして、

『魔王を倒すために勇者になるための旅にでるのだ』

 と、さらなる道草を誘発されるのであった。


 って、こんな感じかな」

 これで誤魔化そう。

「おお、なんかコヨミちゃん小説家になれそうだね」

「ナロウ ナロウ」

「なれんくて良いよ。

 けど、今のとこは、まあ、そんなんな感じだから。

 あんまし変なこと言いなよね、ルラ」

「なんか訛ってるけど、そんななコヨミちゃんには、これを授けてしんぜよう、あとオプションもつけよう」

 誤魔化されなかった。


 で、

 ルラが手を上げて、そして下げると、パフンッと頭に何かを被らされる。

 いつもの事だけどね何処から出した何なんだろ?

 と、まずはこういったのの現状確認。

「ポワポワ触感、程よいヌクさ、

 ちょうどよい重さとフィット感。

 なに、これ?」


 −キィ−

 と、鍵を開けるような綺麗な共鳴音。


「この子は『キヲン』で、コヨミちゃんの防御リキをあげるリユウノウロコ。

 三つと、七つと、九つのリユウ。一番大事な、一つのリユウ。

 コヨミちゃんを守護るのがリユウの竜な、ガーデイアンなドラゴンな子だよ」

「きをん?」

「あら、竜な子なの?

 よろしくキヲン、

 じゃあ、一緒に行こうか」


 −キィ−


「わあぉ♪

 こよみちゃん、スルースキル高いね」

「気にしたら負けなこと、多かったからね、私」




 そして、こんな子達とともに、自分達は旅の再開をします。



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