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06-05 魔王の島

06-05 魔王の島  北にある南の島 西に行った東の端て



『ヒミツキチ』でみんなと目が覚めて、顔を洗ったら朝の準備。

 キャンプ場での朝みたいになった朝食は、ホットサンドと、昨日の残りで具沢山カレースープ。


 色々間違ってない朝の朝食。

 と、言うか、そこに違和感なり矛盾があればと思うけど…。

 感覚的には、何の綻びもない世界。

 うーん、何か、まるで世界みたいだ。



 ………

 ……

 …



 今日『ヒミツキチ』ですることは、毎朝しているラジオ体操もどきと参加分のカードの判子押し…自分が何故か班長さん。

 その後の朝の教室の朝礼もどきでは、みんなとの話し合いで、この星からの避難訓練に決定されてしまった、民主主義という数の暴力で。

 …なんかいろいろ省略した気もするけど、

 いつもの変で特別な今日の、その日の予定。


 自分やヲリヱが装備している剣や鎧に訓練手順を聞いてみると、自分達でやっても問題無いらしい。

 初期設定やハプニング対処は、経験者で有資格者に剣や鎧に任せばいいとのこと。

 出来るだけ自分達だけでやりたいけど死活問題は最優先だし、

 特殊技能はその道のプロにお願いすれば、より安全だし。

 しかし、拙くても自分の命は自分で管理、最低限は。


 …宇宙飛行とか実験過程じゃなくて普通の到達技術で、

 その技術がクローゼットにしまっていた装備と剣や、

 玄関に飾っていた鎧に宿っているは、

 割とファンタジーなのかな?

 エンディングで宇宙に飛び立つ話も多いし。

 で、その避難訓練は「まれによくするよ」と、ルラが言って、みんなも知らないわけじゃないから、そうなのだろう。

 惑星間なら星々を渡れる個人装備も、この世界で数万機は現状で可動状態だそう。

 この星が死んでも人類の存続可能個体数は確保されるためとか。

 自分の特異性がドンドン無くなっていくなぁ…。


 まぁいっか。


 その避難訓練も、ルラが「少年えすぱーみたく、思いっきしジャンプしてみい」と言われて、ヲリヱが茶目っ気を出して、ほんとに思いっきり空に飛んでったので大わらわになってしまった。


 そんな空への向かう駆けっこ鬼ごっこ。

 感覚的に飛べると思って、思いっきしジャンプしたら、そのま無反動飛行状態。

 その感覚が 身体のあっちこちに圧迫感へのような力場へ不可視コンソールへの選択キー入力。

 自分は、胸の中心を感覚を方向軸に両手足を逐次切り替え指で逐次制御、小さなな身体各所へ圧迫力場情報から高度なり速度なり相対位置・星間位置をそれなりに把握。

 …ほんとに星間仕様だったことは後にして、ヲリヱを天空のこの場所へと追いかける。


 そして、大気が暗いところまで上がってやっと追いつけ捕まえて、ひと段落。

 成層圏は超えてたような? 電離圏も行けそうだけど。

 音速超えてたし、音の壁を手づかみした感覚あったから、アトム君ぐらいの速さだったのかな?


「ヲリヱ♪ つっかまえた♪}

「ツカマエラレマシタ」

「勝手に先に行ったら、また迷子になるよね。

 みんなを待とうよヲリヱ」

「ウン、

 デモ、

 こよみチャン、

 アノ星マデ行コウヨ」

 ヲリエの小さな指が指さした星はミレミアスアース。

 千年王国の地球、ヲリエの故郷の星の名前。

 空の真ん中で、また迷子になった感覚。

 行きたいところが、また増えて迷ってばっかりだ。


「そうだね、みんなで一緒に行こうねヲリエ。

 でも一度は家に帰って、お父さんお母さんに、ただいまって言ってからにしようよ」

「…ハイ、

 ナノデス」


 そして、どこかの見知らぬ空の真ん中で、ヲリエを抱えて、また迷子。

 瞬かない天空の星々や、細かすぎる地図のような見慣れない空を見ながら、

 昔のマンガみたく普段着のままで、宇宙のそば、地球の上の端っこにいる自分達。

 ほぼ、この剣に教えてもらった自動飛行だけど、この剣やヲリヱの鎧で、星間移動出来ることは確認は出来たけど…、

 この星の形や、自分の国や、旅してきた大陸を、空から見下ろしながら、また迷子になった自分達。

 空でも迷子って、どこでも迷子してる自分達、これからも未来や将来で迷子するんだろうな、きっと。

 そして、

 なんやかんやと無重力や真空とかの極限状態に、のんきに適応してる自分達がいるし…。

 って、

 空って、やっぱり大きいな…。

 とか思ったいたら、

 この異世界名物な天の構造物、

 地球を回るリングワールド・帯状人工衛星『天輪』に電飾みたいに文字が浮かんで、

「そこで待ってるように」

 と、メッセージが届いた、

 たぶん天使さんから?

 その後、自分達を追ってきてくれた、戦闘機動妖精ヰるかなヱと、ロケットドラゴンなキヲンに先導してもらって、途中で飛べる子拾って、やっと『ヒミツキチ』へ。



 そのまま帰るのも恥ずかかったので『ヒミツキチ』の上で、空飛ぶ子達揃って曲芸飛行。

 編隊組んで、急降下、急上昇、トーチ使って花火みたいにフレアをまいて、水筒から飛行機雲のスモーク引いて。

 みんなのところに両足を揃えて着地。


「ぶるーいんぱるすー♪ つぎ、イタノサーカスやってみよコヨミちゃん」

「それは、また今度、他の子の訓練もあるしね」


 みんなを待ってる間に、この機動服のマニュアル操作テスト。

 袖に隠れていたコントローラーを出してモードを切り替えて、

 襟カラーからヘルメットを展開する時、髪がかからないように気を付ける。

 旅に出るときお母さんが髪を整えてくれたは、このためだったのか気付きつつ、

 インジケーターを見るとこれだけで気密とか何やら確保されたらしい、

 緊急時のマニュアルでの星間飛行の準備は、たったこれだけ。

 緊急時以外、実際に飛ぶには服がやってくれた飛行計画や関係各所への連絡が必要になるんだけど

 技術も資格も剣や鎧が持ってるから自分達は服着てお願いするだけだ。

 そして、その恰好は、

「ヲリエちゃん達、金魚鉢かぶったみたいだね」

 とは、ルラ達の弁。

 ヲリヱの機動鎧と相互に指差し確認して状態をチェックする。

「ゴ安全ニ♪」

「はい、ご安全に」


 この現代日本の科学技術凌駕する自分の装備も、避難設備程度でしかなく。

 自分達の旅のあいだで、いっぱい遭った危険な事は、そんなことは全くなかったらしい。

 お父さん達が、自分達お子様だけで旅に出したのも納得の、過剰装備もいいとこだ、

 部屋のクローゼットには、宇宙戦艦が入っていましたって、ところかな?

 ずっと過保護なくらい護られてたわけだ。

「…けっこう怖い思いしたんだけど」

 これまでの旅は遊園地か公園遊具の危険度だったのか?

「そんなことないよ、コヨミちゃん何度も死に挑んでたし、最初からだし、ついさっきもだし」

 とは、ルラは言っていたけどね、


 みんなの訓練も終わって、ヲリヱが空から見つけていた島に遊びに行くことになった。


 海の真ん中で、ポツンと一つだけあった三角形の形の、その島に。




 ………

 ……

 …




 空から見えた、その三角形の小さな島の滑走路っぽい場所の端にみんなで降り立つ。

 人間さんと海の異種族ネプトゥスの海棲人さん達の小さな漁村がある島。

 仲良くなった漁村の子達に案内されて島内探検。


 自分達は、その旅の途中の、その三角形の平たい小さな島、その島で見つけた遺跡前で、また鬼ごっこの最中。

 湾岸に停泊中の『ヒミツキチ』は、夜の準備を始めたところ、日はかなり傾いてるけど、まだまだ明るい。

 陽が落ちるのが遅い島なのかな?

 夕食の時間までは、あまりなさそうだけど。

 いろいろ解ってきた世界だけど、まだまだ遊び足りないかな。


 

「注意事項。

 範囲は、この島の中だけ。

 時間制限は、この時間だから、誰かが夕食を呼びに来るまで、日が落ちたら強制終了。

 ちっちゃくて飛べる子達は、公正な鬼ごっこのため、高さ制限1.5メートル。

 森の深いところに入りすぎないこと、危ないと思ったら、救難信号を出して、みんなを待つ。

 で、良いかな? みんな」

 そう言うと、参加者みんなが元気に了解の返事をする。

 自分の気分も、また幼稚園児だ。

「妨害行為もあり、協力プレイも可、道具や地形の利用は当然可。

 緊急時は大声で救援を呼ぶ、救援はみんなでするけど、大人に助けを呼ぶ子は、遅れた子達がなる。

 みんなケガしないよう注意する。

 勝利者には、みんなで出来る事なら、みんなでお願いを一つ叶えること。

 以上、

 鬼ごっこ精神にもとづき、正々堂々鬼ごっこすること」

 そう言うと、いつものみんなの個性的な返事が返ってくる。


「それじゃ

 ジャーン♪

 ケーン♪

 ポン♪」

 で、

 自分がチョキ負けた。



 ………

 ……

 …



 なにかの遺跡の壁に手をついて、目を被い数を大声で読み上げる。


「ひとーつ」

 自分が10数えたら、鬼ごっこの始まり、鬼役の追跡開始。


「ふたーつ」

 みんなが、逃げ出す様子が、目をつぶっていても感じる。


「みーつ」

 目を瞑ると、これまでの旅の出来事が、色々浮かんでくる。


「よーつ」

『ヒミツキチ』で、みんな鍛えられたから、逃げるの早い。

 ダンジョンは、レベルアップは間違いなくしてるよね。


「いつーつ」

 王都への旅も色々経験になった。

 家に帰るときも良い経験を積もう。


「むーつ」

 王都では、もっとゆっくり滞在してたかったかな?

 王さま、王女さまも、優しくかっけど、イベントいっぱいだったしね。

 でも、王様の椅子の後ろの隠し階段から、ダンジョンに潜るのはデフォルトになってるのは様式美?


「ななーつ」

 王都のダンジョンは、レベルが高かった。

 王女さまが先導で、ほとんど駆け抜ける事になっちゃったけど。

 あっ、王さまから預かってるトーチと鍵を早くかえさないとね。


「やーつ」

『無の大陸』でも、いろいろありました。

 つい先日のことだし、帰ってから思い出そう。


「ここのつ」

 今日も『ヒミツキチ』で寝泊り、明日の朝には、また出発。

 今度は何処に行くのやら、思えば遠くへ来たけれど、

 けど、もっと遠くへかな?


「とー」

 さあ、追跡開始、

 みんな何処に行ったかな?



 ………

 ……

 …



 みんな本気で逃げ回って、手こずったけど、何とかタッチ出来た。

 危なかった。

 鬼役の最中に見つけたものが気になったけど、それを後まわしにして真剣に遊んだから勝てた。

 さて、勝利者としてのお願い事は、


「はーい、みんなー、集合ー、お願いー」

「ハーイ」

「うん、コヨミちゃん?

 お願いごと、それでいいの?」

「うん、ちょっと自分が確認したいこと見つけたから集まって貰っただけだし」

 その鬼ごっこの途中で見つけた丸い岩の前で、最初に捕まえて連れ回してたルラとヲリヱにそう答える。


 ヲリヱが、その石に書かれていた、風化してるけどまだ読める漢字を読み上げる。

「ミナミトリシマ?

 ニホンサイトウタン?」

「はい、ヲリヱさん、良く出来ました」

「ヤリマシタノデスネ」


 …。

 南鳥島 日本最東端。

 やっぱり、そうだよね。

 あれ、滑走路あとだったし、このなにかの遺跡も飛行場や観測所の跡みたいだしね。


 …。

 空を見上げ思い返してみる。

 あの真月さまにある魔方陣模様を取っ払って半回転すると、見た覚えのある兎の影、魔女の横顔が…あったりするね。

 いつもの夜空から、十字の銀河とか光輪とか怪しいの取り払ってズイっとずらしてと…あの三角形や十字の配置の星は…あの星座かな。 

 うん、南半球の星空ってプラネタリウムぐらしか見たことなかったし、見知らぬ天井なわけだ。


「ルラ。

 北にある南の島、西に行った先にある東の果て、

 南半球にある『無の大地』ことムー大陸から北西にある。

『南鳥島』って、日本最東端だから…。

『魔王の島』って、日本列島のことかな?」

「そだよ」


「ものすごく、あっさり言うんだね、ルラ」

「そだよ、コヨミちゃんには、ウソつきたくないし

 僕、友達にウソつくような悪い魔物じゃないよ」

「うん、ルラは、ホントに何にひとつ、何にもウソつかなかったよね。

 言葉足らずで、舌足らずだから、ちゃんとわからないこと多かったけど」

「あー、それは、それは、ゴメンなさいさい、コヨミちゃん」

「いいよー、ルラー。

 それって、自分の理解力や洞察力の問題だしね」

 自分をビックリさせてようとしただけなのかも?

 だったら自分からは何もいえないしね。

 私も、友達のサプライズパーティで、やらかしてことあるし。

「ありがとルラ、あとヲリヱ達もね。

 自分、ビックリしました」

「そ、なの? コヨミちゃん?」

「うん、ほーんと、知らないことばっかりで、ビックリだよ」


 そんなふうに、おサルな惑星で自由奔放な女神様を見つけた気分の自分がいました。


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