洞窟からの旅立ち
ネメのうっかりで、私が皇帝を倒したことが勇者にばれてしまった。
「どうする?ネメ。全力で逃げたいんだけど。」
「同意。でも言いふらされたら、厄介じゃない?」
「むぅ。どうする?」
「正直に話すしかないんじゃない?レリア?」
私たちは話し合いを終え、勇者に三十年前の出来事を話した。
姉の復讐から、ネメとの出会いまで。
「そんなことが、私は生まれていなかったので、大人たちはあの英雄は誰だとか噂が今でもありますが、童話にもなっていますし。」
「え!?そんなことになっての!?私。」
「よかったね。レリア。有名人じゃん。」
「嫌だよ。皇帝と一緒になるじゃん。」
私とレメは軽口をたたく。
「それで、お二方はここにずっと住んでいるとのことでしたが、そとのせかいにいってみませんか?」
そこで私はふと気が付く。
私は今日まで、姉との暮らしと皇帝への復讐の修業、ネメとの洞窟内での暮らししかしていない。つまりほとんど私は人生を満喫していないのだ。
「ねえ、レリア。ここから旅立たない?」
「え、でもネメは…。」
「ああ、それなら大丈夫。レリアに負けてるから、試練としての必要はなくなってるんだよね。」
「じゃあ、ネメも一緒に来れるってわけ?」
「うん。そうなるね。」
私は考える。俗世と離れてここでずっとネメと暮らすか、三十年越しの人生を満喫するか。
私はもっと人を知りたくなった。
「じゃあ、行ってみようかな。勇者さん。私の名前はレリアだよ。」
「私はネメ。」
「私はアステリアと申します。では、一緒に行きましょう。外の世界を案内しますよ。」
「あ、待って、虚偽魔法《真実の虚偽・虚ろの世界》。」
私は私自身の世界に勇者を引きずり込む。
「!!?ここはいったい!?」
「ああ、ここは私の魔法の世界。普通じゃあ亜神は殺せないから。」
「驚きの連続で忘れていましたが、そういえばそうでしたね。」
「うん。じゃあ、《ミストルティン》」
私は剣を握った。神の真実を知ってから作った対神兵装だ。
不死を吸い、神格を封じる若芽の樹木だ。
私はアステリアについている亜神の力をミストルティンが吸い取った。
「これでおしまい。勇者の恩恵だけは吸い取ってないから、これまで通り使えるよ。」
私たちは洞窟を出た。
「じゃあ、アステリア案内よろしく。」
私の冒険はここから始まった。