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回想

 

 私にはシンシアという双子の妹がいる。

 髪は私が銀髪でシンシアが金髪という違いはあれど、双子だけあって見目はよく似ている。

 雰囲気は全く違うらしいが。

 彼女は皆いわく天真爛漫で明るく、誰とでもすぐに仲良くなれてしまう、らしい。

 それに対し私はというと、まるっきり正反対。

 性格は似ても似つかない。


 そのため、周りは皆彼女を可愛がった。

 それはそうだろう、同じ顔でいつもニコニコしている彼女とぶすりとしている私、どちらが可愛いかなど聞かなくても分かる。

 誕生日は最早彼女のためのものであったし、プレゼントもしかり。

 二人に、といただいたものは彼女のものであったし、私のものでさえ彼女が欲しいと一言言えば彼女のものになった。


 玩具もお人形もドレスもアクセサリーも、親の愛情だって、なにもかも全てが、我が家は妹を中心に回っていた。


 今はもう、その事実を諦めて受け入れてはいるが、小さい頃はそうもいかなかった。

 双子であるから、私達は同じ日に生まれた。

 しかし、姉だから我慢しろ、妹に譲りなさいと何でもかんでもそれを理由にして妹に奪われていく。

 それが許せなかった。


 そして決定的な出来事は起こる。

 昔は私ばかりが怒られることが気に食わなくて、よく不貞腐れていた。

 その日もいつものように叱られて不貞腐れて、私は初めて一人で街に出た。

 所謂家出、というやつである。

 両親はそれを咎めもしなかった。

 というか、私が何処にいても気にならなかっただけかもしれないが。

 10歳にも満たない、貴族であることが丸分かりの格好の女の子が一人、お付きの者もつけないで街に出るなど今考えれば危ないことだと分かるのだが、当時の私はそれを理解していなかった。


 屋敷を出て、道を歩く。

 いつもは馬車ですぐに通りすぎてしまう道だったので全てが新鮮で、不貞腐れて家出をしたことなどすぐに忘れてしまった。

 道端に咲いている花をしゃがんで初めてじっと見た。

 ドレスの裾が汚れるが構わなかった。

 母が見たら、悲鳴をあげるだろうが今ここにはいないから。

 屋敷の花瓶に活けられている大輪の花も豪華で綺麗だけど、この花も可憐で、慎ましくて可愛い。

 しばらくそうしていたが、街に行こうと思いたってまた歩き出した。

 その時だった。



「なにしてるの」



 背後から子供の声がした。

 振り返ると、私は思わず目を見開いた。

 こんな綺麗な子は初めて見た。

 まるで、天使みたいだと思った。

 女の子とも思ったが、服装でかろうじて男の子であることが分かる。

 どう見ても顔は女の子なのに、その格好がアンバランスなものに思えて私はじっと彼を見つめた。

 すると、彼も空色の透き通った大きな瞳で私をじっと見据えていた。

 蜂蜜色の髪は風にふわりと揺れて、小さな唇が開き声を紡いだことで、私はハッと我に返った。


「きみ、貴族でしょ?そんなドレス着て、ゆうかいしてくれとでも言わんばかりだね」


「ゆうかい?」


 聞きなれない言葉に首を傾げる私に、彼はぱちりと瞬きを一度。

 長い睫毛がふるりと震えた。

 そして次の瞬間、馬鹿じゃないの、とでも言いたげに彼はフンと鼻で笑った。


「そんなことも知らないわけ?怖い人に怖いばしょにつれてかれるんだよ」


 前言撤回。

 彼は天使ではなかった。

 いや、見た目は天使そのものだが、口を開けばそれは台無しである。


「いいもん。そしたら、お父様とお母様がしんぱいしてくれるもん」


 私は家出中だったことを思い出した。

 私がゆうかいされれば、きっとお父様もお母様も、シンシアなんかほっといて私をむかえに来てくれるわ。


 言うと、彼は大きな瞳をさらに見開いた。

 そして、私の右手を握るとどこかに向かって歩き出す。


「どこいくの?」


「……」


 彼は何も言わなかった。

 私も口を噤んだ。

 ただ前を歩く彼の後ろ姿と握られた白い小さな手をぼーっと眺めながら、彼について行った。

 連れて行かれた先は小さな公園だった。

 花壇には、先ほど道端で見ていたようなでも初めて見る小さな花が沢山咲いている。


「好きなんでしょ?さっきも見てた」


「お花、きれいで、かわいいからすき」


「そう」


 これを見せるために連れてきてくれたのだろうか。

 ちらりと横の彼を横目に見たが、彼は花壇を見ていた。

 ベンチに座ると、彼が切り出した。


「なにがあったの」


 話を聞いてくれるらしい。

 誰かに話したら、少し楽になるだろうか。


「あのね―……」


 私はごくりと唾を飲むと、家出に至る経緯を話した。


 ―――……


「じゃあ僕が君の一番の味方になってあげる」


「ほんとう?」


 今までそんなことを言ってくれる人はいなかった。

 ただ、私を慰めるだけのその場限りの言葉かもしれないが、それだけでもすごく嬉しかった。

 心強かった。


「ほんと。いつでも話きいてあげるからここに来なよ。この時間だとだいたいここにいるから」


「っありがとう!」


「でもそういうの着てくるのは危ないからやめなよね」


 彼はピッと私のドレスを指さした。

 私はぶんぶんと首を縦に振って頷いた。

 彼に会いたいから、ゆうかい、されるわけにはいかないのだ。


「やめる!だから、毎日会いに来るね!」


 それからは、毎日彼に会いに公園へ走った。

 家で怒られたって以前ほどは落ち込まなくなった。

 彼だけは私を分かってくれたから、味方でいてくれたから。

 他にも色々なことを沢山話した。

 でも今思えば彼は、自分のことに関してはそんなに話したがらなかった。


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