第8話 親友との会話ってありですか?
思いつかなかった…。
ただでさえ短いのに更に短めです。
来栖に清潔感のある小洒落た喫茶店に案内された。
店内は朝食時でも昼食時でもないためか、まだらに幾人か居るだけで結構、席は空いている。
一瞬、厨房の方に向けた視線に見慣れた制服の上からエプロンをしている少女のような容貌をした小柄な少年が料理の腕を振るっているように見えたけど、二階にテラス席もあるようで、ちょっとした内緒話をするにはもってこいの場所に見える。
「清涼感もあるし、料理が上手いことも確定したし、来てよかった」
あの少女のような少年の料理の腕を知っている来栖は俺の言葉に頷き、小腹を満たすのに丁度良さそうな食事をオススメで注文して整然とした綺麗な街の景色が見えるテラス席に向かった。
大通りから死角になっている席に座り、早速、俺から話を切り出す。
「それで、どっちから話す?俺としては一言で済む俺の話を後回しにしたいけど」
「いやいや、一言で済むなら先に言えよ。俺のは、こっちの事情もあるからそれなりに長引きそうなんだ」
「事情って、向こうの魔術師ってことでしょ?そのくらい知ってるよ?」
「…マジで、なんで知ってんだよ。お前には魔術師総出で隠してたんだぞ…」
テーブルに突っ伏し、来栖が呆然となんかいろいろ諦めたように言葉をこぼす。
というか、うちもその特殊な家系の一部で、その中でも結構上の方にいるみたいだからね。各家の名簿くらいすぐに見つかった。
なんか、俺には隠してたみたいだけど、本当にあの程度で隠せてると思っているんだろうか?
「…ちなみに、いつ気づいたんだ?」
「中二の頃だよ。父さんと母さんの執務室に大量にある本を漁ってたら、いろいろ出てきて、その中に魔術師の家系の名簿帳があったから、前々から怪しかった来栖の家名を探したら、見つかって、そこに次期当主として悠月 来栖の名前があったから」
「根本の原因、俺なのかよ。というかその書類、"認識阻害"とか"不可視化"とか"個人認証"とかで、見えないようになってなかったか?」
「多分、なってたんじゃない?感覚に依存する魔術は俺に効かないみたいだから、なんとも言えないけど」
実際、夢見坂先生を捜索してるときにみんなに見えてない様子だった夢見坂先生を視認して追跡できたから、そこは確かだと思う。
…まあ、もしかしたら魔眼みたいに眼に宿った能力で、見なきゃ意味ないかも知れないけどね。
「あー、魔力への親和性が高いと稀に発現する特異体質か。俺もあるけど、一部とはいえ魔術を無効化できるとか、恐ろしいな」
「そうかな?…まあ、いいや。ちなみに来栖はどんな特異体質を持ってるの?」
「俺か?俺はな…、身体能力の強化だぜ。具体的に言えば五感とか、筋力とかの純粋な強化だな。大体、鉄板くらいなら5枚重ねても指二本で余裕で割れる」
なんというか、通常時でそれなら異能力の『怪力無双』と『限界超過』を使えばどうなるんだろう。
「というか、その事情を知ってるなら、俺も二言程度で済むな。単純に魔術で染色して、装備を作っただけの話だし」
「魔術って、そんなことも出来るんだ…。っと、俺の方も説明しないとね。まあ、ただ単に異能力の力ってだけで詳しい説明なんて微塵もないんだけどさ」
薄々気付いてたけど、お互いに大した事情なんてなかった。
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