第5話 どうにでもなーれってありですか?
「それで、夢見坂先生を探せばいいんだっけ?」
「ああ、探してくれるなら助かる。でも、できるのか?照輝はスペックこそアホみたいに高いけど、気配察知みたいな特殊な技術は持ってねえだろ?」
「確かにないけど、その人の思考をトレースすればそれに近いことはできるよ。…まあ、その為には一週から二週間、観察しないとダメなんだけどさ」
誰も動かないのを見て、話を聞く姿勢を見せていると受け取ったのか、召喚理由を説明し始めた教会の代表者二名の話を聞きつつ、俺は来栖と会話する。
「観察っていっても、どうせ流し見する程度でいいんだろ。というか、それも十分特殊な技術だからな?」
「そうだけど…、A組で同じことできる奴、あと5人くらい知ってるよ。特に詩兎さんは別格で、初対面でも相手がなにを考えているのか分かるそうだし」
「そんなにいんのか…。まあ、どちらにせよ、それなら照輝に任せても大丈夫そうだな」
「うん…ん?任せるって来栖は探さないの?用事あるんでしょ?」
「別件がもう一つあるんだ。先生にはこのメモ渡しといてくれ」
そう来栖は話ながら書き、一枚の紙切れを渡してきた。
別件ってのが気になるけど、来栖の家ことだろうし、あまり関わらない方がいいかな
「了解、すぐに見つけて渡しとくよ」
「助かる。それじゃ、頼んだぜ」
そこで話を切り上げると来栖は生徒たちが特に集まっている方向に向かっていった。
とりあえず、もう一人の均衡崩し、発見っと。
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名前:悠月 来栖
レベル:01
能力傾向:豪剣士
称号:異界の魔術師 異世界転移者
英雄候補 均衡崩し
異能力:『怪力無双』『限界超過』
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ちなみにこれは、『森羅万象』の能力―魔力の最大値を未所持スキルに変換、および所持スキルを魔力の最大値に変換―を利用してさっき作ったスキル、【鑑定眼】の能力だったりする。
「さて、そろそろ俺も行動するかな」
そして、俺も特異存在と夢見坂先生を見つける為の行動を開始した。
side夢見坂 夏希
「だぁー、なんでこんな行き先が全部読まれてるんだ」
なんか女体化してるうちのクラスのトップに何処かへと追い込まれてる現状にオレは我慢していた声を漏らす。
あいつらの中に人の思考を読むことができる奴がいることはしっていたし、それの対策も持っているつもりだった。
なのになんで、なんで照輝の奴は対策をしっかりしているオレを悠々と誘導できるんだっ!
『環ヶ崎の出身だからではないでしょうか?』
心の中で叫び声を上げるオレにオレの異能力『智慧者』―思考強化に魔法補助、世界記憶録の限定的な閲覧権限などを持っていて、擬似人格が搭載されている―の声がかけられる
『だが、アイツは環ヶ崎本来の教育を受けていないんだろ?それだと、環ヶ崎出身ってのは関係ないように思うんだが』
『いいえ、マスター。彼の場合、教育云々は関係ありません。むしろ、彼に環ヶ崎本来の教育をしてはいけないというか…』
『うん?なんでなんだ?』
環ヶ崎は自身に特殊な|誓約を掛けることで特定の存在―精霊や魔物、神などの超常存在―に対して世界の管理者も恐れる、めちゃくちゃな力を発揮する。
それが環ヶ崎の教育と呼ばれているものの実態だ。
まあ、その誓約は環ヶ崎の家系に流れる特殊の因子に起因しているから誰にでもできるわけじゃないんだけどな。
どちらにせよ、その誓約を施さない理由はないはずだ。
『それはですね。その誓約が…って、マスター、止まってくださいっ!』
「へっ?」
それは誘導させるがままに、一歩踏み出した時だった。
『智慧者』が警鐘を鳴らす。
しかし、それはすでに遅く…。
「【幻術】解除、"魔法破壊"」
周りにいた人が夢だったかのように姿を消し、自分にかけていた"認識阻害"が解除されたあとだった。
「ゆ、勇者さまっ!」
ついで、物凄く見覚えのある聖女さまの嬉しそうな声が響き、すぐにオレへと駆け寄ってくる。
教皇…いや、聖騎士も驚愕に目を見開き、すぐに嬉しそうに目を細める。
そんな元パーティーメンバーたちの反応を見つつ、オレは思った。
もう、どうにでもなーれ、と。
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