第4話 異世界召喚ってありですか?
side環ヶ崎 照輝
一瞬の浮遊感、そのあとすぐに強い光を感じて、瞼を開く。
開いた瞳へと最初に映ったのは、白を基調に金糸の装飾が施された豪華な神官服を身に纏う威風堂々とした金髪金眼の青年と白を基調に銀糸の装飾が施された華美な修道服を見に纏う清廉潔白とした銀髪銀眼の少女、それにその二人の後方に侍るように立つ赤い神官服を着た四人の男女だった。
うーん、赤い神官服は枢機卿の証のはずだから、目の前の二人は教皇と聖女かな。―…服装は断然、特別に見えるけれど。
「ようこそいらっしゃいました、皆様方。私は勇神教の聖女セラス・アレイシスと申します」
そんな予想を立てていると銀髪銀眼の少女―セラス・アレイシス―が一歩前に出て、綺麗なお辞儀とともに自己紹介してきた。
続いて、金髪金眼の青年も一歩前に出る。
「そして私は勇神教の教皇ファナテア・アレイシスだ。勇者様方よろしく頼む」
そして、威厳をその身から滲ませる堂々とした態度で自己紹介してきた。
それに対してこちら側は……、誰が出るんだろ?
なんとなく、A組が揃っているこの辺りに視線が集中している気がするけど、とりあえず、誰が出るのか周りを見回してみる。
来栖は腕を組み、状況がどう進むか見守っていて、前に出ようとする様子はない。
3位の人―確か、美佐崖 柚子って名前だったはず―は、完全に我関せずといった様子でぼーっと、虚空を眺めている。
4位の人―斑鳩名 蓮華、男の娘だから覚えてた-は、至福の表情を浮かべる5位の人―詩兎 天巳だったっけ?―に抱きつかれて疲れた様子を見せている。
6位以下略のA組メンバーも似たような感じで思い思いの態度で過ごしている。周りの様子なんてなんのそのって感じだ。
こいつら、学校にいる時はアホみたいに真面目だったのに、そこから解放されたのを理解した途端に、全開で本性を露わにしてるんだけど。
いやまあ、それぞれの本性が隠せてたか聞かれると、首を横に振らざるを得ないんだけどさ。
「なあ、お前って照輝だよな」
「ん?って、うわっ、来栖なんでここにいるの、さっきまで向こうにいたじゃん」
「その反応…、当たっているみたいだな」
さっきまでそこそこ離れた位置にいたはずの来栖が、気がついた時には真後ろに立っていた。
うん、これで来栖の異能力に身体強化とか気配遮断とかその系統があるのは推測できたけど、いきなり背後に現れると軽くホラーだよっ。
「ところで、うちの担任知らないか?」
「いや、知らないけど。なんか、トラブルでも起きたの?」
「普通に現在進行形で起きてるだろ。異世界召喚にリーダーの不在なんて誰が聞いたってトラブルっていうわ」
「それもそうか。それで、そのトラブルをうちの優秀な担任に押し付けようと探してるの?」
うちの担任教師―夢見坂 夏希―は学校外で俺たちが起こす数々のトラブルをその優秀な手腕でもって解決してきた苦労性の鏡のような人だ。
確かに、リーダー役を押し付けるには丁度いい相手だろう。
「…まあ、それもあるけど、今探してるのは別件だ」
「別件?…あぁ、そういえば来栖って、あの人の従兄弟だったね。その件で用事でもあったの?」
「おまっ、なんでそんなこと知ってんだよ。この学校じゃ誰にも教えてないはずだぜ」
「1位舐めんな。そのくらい余裕で分かる」
「普通、分からねえからな!?」
そりゃ、普通は分からないだろうな。従兄弟くらい血が離れると顔とかもあんまりに似てないし。
でもさ、俺…というかA組に詰め込まれた奴らって、良くも悪くも普通じゃないってこと忘れてるよ。
俺は来栖に、そんな思いを乗せた苦笑いを向ける。
というか、普通って言葉も、普通とは対極にいる来栖に普通を語られたくないと思う。
「…あぁ、そうだった。A組に普通を求めるのはダメなんだった」
「そうそう、みんな、真面目を装おうのは得意だけど、実際は我が道を行くって性格だし、能力も常識はずれだから」
「特にA組トップは常識が通じないから気をつけろ、っていわれるのも忘れてたぜ」
「そうそう、俺ってば、常識じゃ測れないから」
「認めるんだな。常識通じないの」
「この会話、前もしなかった?まあいいや、だってちょっと見聞きしただけでも忘れない記憶力に、銃弾でも余裕で視認できる動体視力、物を落としても地面に着く前にキャッチできる反射神経、学校の屋上から飛び降りても無事な運動能力、ほかにもいろいろあるけど、全部普通じゃないでしょ?」
まあ、目の前の来栖やA組のメンバーもこのくらいは平然としたりする超人だから、そこまで凄いとは感じないかもしれないけどさ
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