第3話 異世界の説明ってありですか?
「とりあえず、これで説明は終わったけど質問は?」
説明が開始されて三十分くらいが経った頃、向こうとこっちの細かな違いを教えられ終わったところで説明が終了した。
「ちょっと整理する時間、貰っていい?」
「いいよ、いいよ。時間はたっぷりあるからその辺りは気にしないでじっくり整理するといいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
それだけ言って、俺は思考に没頭し始めた。
それから数分後…。
「よし、整理終了」
大体の整理が完了した。
ちなみに整理したものはこんな感じ。
日本との共通点……言語(名称は世界共通語)、文字(アレイシス神聖国のみ)、一日の時間、時間や距離や重さなどの単位、季節の数(アレイシス神聖国近隣のみ)、重力
地球との相違点……地形、世界の規模、魔法や異能力やスキルなどの超常の存在、宗教(勇神教、八神教、精霊信仰など)、文字(アレイシス神聖国以外)、種族(向こうで俺たちは種族:異世界人)
ちなみに説明に三十分前後必要だったのは、なぜ同じか、なぜ違うか、なんかの理由が大体全部、説明されたからで、まとめるとこんな感じで結構、少なくなる。
「じゃあ、まず最初の質問は地球に帰還する方法は?」
「召喚された理由を達成することだよ。今回で言えば、戦争を推進する国のトップをどうにかすることだね。一応、予想はついてたんじゃないかな?」
「まあ…、召喚理由を説明されたときの口振りからなんとなく…。それじゃ、次の質問、魔法の属性の種類は?」
「火水風土の基本属性に、炎氷雷地の上位属性、あとは光闇時空重の特殊属性だよ。ほかに質問は?」
「んー、ないかな?」
基本的に全部説明されたので質問はこれだけ、あっさりしたもんだ。―…それにしても、魔法の属性って十三種類もあるんだ。―…予想してたのより倍以上多い。
「それなら、そろそろ向こう側に飛ばすよ。あっ、そうそう、召喚先で10人くらい倒れてるだろうけど魔力切れで命に別状はないから、あの子たちに変な悪感情を持たないでね」
「了解、じゃあ転送よろしく」
「3カウントでするよ。3…2…1、いってらっしゃい【時空干渉】」
その言葉を最後に俺の意識は微睡みに誘われた。
side???
「…ふぅ、やっと終わった。異常な異能力を覚醒するのが二人もいるし、転生繰り返してる過去の勇者はいるし、なんかもう、すごい疲れたよ」
事情説明もせずに転移させたマヌケ同僚のせいでわざわざ【時空干渉】までさせられるし、精神的にも、魔力的にも疲れた。しばらくはゆっくりさせて欲しいよ。―…まあ、無理だろうけどね。
「はぁー…」
見目と性格、あと戦闘能力だけは良い同僚たちが頭を過ぎり、僕は深いため息を吐く。―…ホント、あれで事務仕事もできたら最高なのに。
「…っと、いけない。あの加護を与えた子ことを調べないといけないんだった」
あの子が覚醒した異能力『森羅万象』の秘める力は、明らかに人の身には余るもの、絶対に僕たち側の存在の干渉があった筈だ。
一応、応急処置として僕の因子と加護を与えて、限界値を底上げしたけど、いつまで耐えれるかどうか…。
そんな心配を胸にしながら、僕はあの子ことを調べていく。―…あの子が辿ってきた人生から始まり、家族構成、あの子が関わった生き物、果てはあの子の先祖やその先祖たちが関わってきたあらゆる存在までもを調べ上げる。
「…あれ、ない?」
だけど、見つからない。
僕くらいの権限があれば最高位クラスの権限があっても干渉跡は探れるはずなのに、見つからない。―…というか、この環ヶ崎という家自体に一切の超常の干渉が見られない。
それこそ、まるで……
「ユーテア、それ以上環ヶ崎に干渉するな」
「えっ…、先輩?」
そんな僕の思考は途中で遮られる。
遮ったのは数少ない僕の上司、それも寡黙で真面目と名が知れている幹部の一人だ。
ちなみに学生時代の先輩で、今も先輩と呼んでいる。
「えーっと、どうしてですか?あれほどの力を持った異能力、あの子の魂で抑えきれなくなったらどれほどの被害が出るか分かりませんよ」
「大丈夫だ、環ヶ崎の出身ならお前がした補助ですぐに適応する。というか、むしろ過剰なくらいだ。それより、問題はお前の体だ」
「僕の体ですか?特になんの問題もありませんけど…」
「本当になんの問題も起きてないのか?例えば、妙に力が湧き出てくるとか、逆に力が入り辛いとか」
そんなこと言われても僕はいつも通り健康そのもののはず、特に先輩が言ったような症状はないし、ホントにどうしたんだろ?
「ならいいが…。とりあえず、体に異変が起きればなによりも優先して俺に連絡しろ、すぐに駆け付ける」
「…えぇと、わかりました。すぐ連絡します」
突然のことに少し吃りつつも、僕は返事を返す。
その返事に満足したのか、先輩は去っていった。
一体、なんだったんだろうか?
結局、僕の頭に残ったのは先輩とこの事態に対する困惑だけだった。
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