第2話 状況説明ってありですか?
「まず、君たちが巻き込まれたことを端的に言ってしまうと異世界召喚ってやつだね。…こんな状況だし、それはなんとなくわかってるんじゃないかな?」
「まあ、なんとなく…。でも、召喚じゃなくて転生だと思ってた」
真っ白な空間に一人っていうシチュエーションは、異世界召喚モノより異世界転移モノの方が断然、多いように感じるから仕方ないか。
うーん、やっぱり、先入観の影響って結構あるみたい。
「さすがにあの規模の人数を全員転生させるのはあの子には無理かな。転生って、ハズレがない代わりに魔力消費が大きいから」
「へぇー、ちなみに俺は当たり?」
「当たりを通り越して均衡崩しだね。多分だけど、しっかり鍛えれば向こうの―――ぐらいなら殺せるんじゃない?」
「えっ、今なんて?」
言葉にテレビで放送禁止用語が出たようなノイズがかかり、全く聞き取れなかった。
一応、直前に俺のことを均衡崩しなんて言っていたから、ノイズの部分にとてつもないほど強力な存在の称号か、名前が入るって推測はできるんだけど。
「うーん、どうにも上司から規制されたみたい。まあ、気にしなくてもいいよ。どうせ、向こうの―――が君たちに接触するなんて事態は起きないだろうしね」
「ふーん、なら、心に留めておく程度にする」
「それで充分。まあ、均衡崩しはもう一人いるし、特異存在もいるから、忘れても問題ないよ。ささ、説明に戻るよ」
うん、サラッとさらにヤバい情報ありがとうございます。
…向こうにいったら『森羅万象』のテストがてら、そのメンバーを急いで探そう。
まあ、急いで探してどうなるって話かもしれないけど、いざってとき、特別強い力を持っているのが誰か知っておきたいんだよ。
「まず、君たちを召喚したのは『ファーゼン』って世界のアレイシス神聖国っていう『初代勇者』たちを信仰している宗教国、召喚自体を主導したのはその国の教皇と聖女、それに今は枢機卿の地位についている元地球人の転生者だよ。この転生者ちゃんは君と同じTS娘だから君とは気が合うんじゃないかな?」
「そんなところにも被害者がいたんだ…」
「違うよ、あれはたまたま転生先が女の子だっただけ、僕はなんの干渉もしてないよ。ラッキーって思ったのは事実だけど、特になにもしてない善良な子の性別を変えたりしないよ」
なんでだろう…。俺の性別が変えられた最大の理由が、このよく分からない存在の趣味な気がしてきた。
「っと、また本題から逸れかけた。じゃあ、次は召喚理由の説明だね。向こうでも説明は受けるだろうけど、これの伝達に万が一のことがあると、君たちが帰還できなくなるから」
「なんで帰還でき…」
「質問は最後にまとめて受けるからちょっと待って、いちいち質問に答えてたら埒があかないから。それで、召喚理由は『再発しようとしている人類種(普人族、森人族、山人族、小人族など)と魔族種(獣族、闇族、霊族など)の戦争、通称『人魔大戦』を事前に阻止する』こと」
要するに大規模な戦争の阻止が召喚理由なのか。
………えっ、マジ。力を得ただけの高校生にそんなこと期待するの?
「って、言いたいんだけど、さすがにそれを君たちに頼んじゃうと帰還するまでに何年かかるか全然、わからないから『『人魔大戦』を推進している各種族の王や皇帝をどうにかして』って、召喚理由に変えてもらったよ。まあ、それでも結構な労力になるだろうけど、戦争を事前に阻止するより、幾分か楽でしょ?」
確かにこの人型シルエットの言う通り、そっちの方が断然楽になる。
なんせ、説得するなり、引きずり下ろすなり、この世から消すなりするのは戦争しようとしている国のトップだけでいいのだから。
その他の戦争推進勢力への干渉は、ほとんど必要ない。
「うん、それだけでもかなり楽になる。それに、それなら召喚先の世界の裏社会とはあまり関わらずに済みそう」
「そうそう、戦争の裏に巨大な影ありってね」
裏の連中は、表の世界に大きな歪みが生じるほどに活発に、活動的に、勢力的に動きだす。
戦争開始直前レベルの歪みともなれば、ああいう連中はさまざまな国と組み出して、より大きな被害をもたらす。
…裏社会の連中は、普通に生きる俺たちにとっては、本当に害悪で、危険な存在でしかない。
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