第1話 いきなり性転換ってありですか?
初投稿です、よろしくお願いします。
(……ん…ここ、どこ?)
なんとなく、絵の具を滲ませたようなモヤがかった人型のシルエットが見えるけど、それ以外はすべて、ぼやけた白に包まれている。
んー、本当にどこだろ?
「ここは僕の部屋だよ。環ヶ崎君」
「うわっ、しゃべった」
前の方から、というかあの人型シルエットから聞こえてきた声に思わず、そんな声が漏れる。
やばいっ、明らかに女の子の声だったのに、この反応は明らかにしたらダメなやつ。
「えっ、あ、ご、ごめん。急だったから、つい…」
…俺、慌てすぎ。
女子との会話に戸惑うコミュ障感、満載だわ。
「いいよいいよ。五千年生きてれば、そういう反応はよく見るから。みんなと同じ、ちょっとしたお仕置きで許してあげる」
「…なんか、嫌な予感がするんだけど」
しかし、返ってきたのは、俺が思っていたような怒りを含む声ではなく、穏やかで、どこか楽しんでいるような声。
五千年生きてる存在のお仕置きが人基準である保証がない上に、この声音は不穏すぎる。
「大丈夫、君の性別を女にするだけだから」
性別を女にするという言葉が拒絶する暇さえなしに頭へと流れ込んでくる。……それについで、白髪の少女のイメージが頭に浮かんできた。
その少女は、とろんっとした眠たげな目付きが可愛らしい美少女で我が妹にそっくりだけど、髪色が違う。
うん、なんとなく、今のがなにか分かったけど、一応―…そう、一応、勘違いかもしれないから聞いてみよう。
「えーっと、今のは?」
「もちろん、女体化後の君の姿だよ。サラサラツヤツヤな純白の髪も、太陽みたいな緋色の瞳も、健康的に焼けた肌も、そのままでしょ?」
「勘違いじゃなかった」
俺は膝を折り、両手をついて項垂れる。
俗に言うorzの体勢、まさか自分が実際することになるなんて思ってみなかった。
「まあまあ、君に覚醒した異能力は『森羅万象』と『並列思考』、性別は特に関係ないから問題ないって」
「ん?異能力ってなんの話?」
「あれ、ここに来るときに〈異能力『○○○』に覚醒しました〉って声、聞こえなかった?」
ちょっと、思い返してみる。
確か、ここで意識が戻る前は―…
時は遡ること、…何時間だろ。
まあ、とにかく、ここに来る前の最後の意識の辺りのこと。
「照輝。そろそろ集会始まるから移動しようぜ」
親友…悠月 来栖の声にシャーペンを手に黙々と動かしていた左腕を止め、顔を上げる。
「あれ、もうそんなに経ったっけ?」
「余裕で経ってるわ。時計見ろ、時計」
呆れ顔の来栖にそう言われ、黒板の上につけられている時計に視線を向ける。
視線の先でその針が指し示しているのは、十三時二十六分、学年集会の開始まであと四分しかなかった。
「うわっ、あと四分しかない。みんなは…うん、やっぱりもう行ってるっ」
「そりゃな、うちは栄誉のA組だぜ。ギリギリで行動するやつなんて滅多にいないだろ」
「そのクラスで1位と2位を独占している二人がギリギリ行動してるんだけど、それについては?」
来栖は何も言わず、サッと視線を逸らした。
そのあと、学年集会が開かれる第一体育館に行き、授業開始のチャイムが鳴ったところで記憶が途切れている。
「うーん、やっぱり聞いてない」
恐らく、あの時点で記憶が途切れているのは、ここに来たからなんだろうけど、その前には特になにも聞いていない。
「んー、でも君の行動ログを確認する限りだと、そこで覚醒してるんだけどなぁ。……まっ、いっか、特に問題もないしね」
「特に問題ないんだ…」
「だってね。ただ、僕たち側の存在が特別措置で異能力の覚醒を誘発させてるだけだから、本来の覚醒のような面白みもないしね」
本来の覚醒がどんなのかはさておいて、俺たち、知らないうちに異能力なんて力が必要な事態に巻き込まれてる様子。
「さて、それよりもそろそろに本題に入ろっか。具体的には、君たちがどんな事態に巻き込まれたかの説明だね」
そして、このよく分からない存在からの説明は始まった。
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