ふじのやまい
今、私の目の前には私が長年に渡って患っている
病気に効くという粉薬の瓶がある。
その粉は白色でまるで小麦粉のようだった。
本当に効くのだろうか…。
しかし、効くと信じるしか無い…。
非正規ルートでやっとのことで手に入れることができたのだから。
毎日、毎日、飲み続けた。
毎日、毎日、効果が現れた。
これなら今度こそ間違いなく私は、
この忌々しい病気から解放される、
そう確信したのだった。
薬を飲み続けて数週間経ったある日の事だった。
私は通勤の為、駅へ向かう途中に
急に呼吸が苦しくなり道端に倒れこんだ。
倒れる瞬間、視界全体が白くなり
その白色が無数の円を描き、
そして、収縮して行き、
白い円が収縮した跡を黒が支配し、
やがてすべてが黒になった。
遂にやった、これで楽になれる…。
そう思った私は嬉しくて仕方がなかった。
しかし、世の中そう甘くは無かった。
私は病院に運び込まれ一命を取り留めてしまった…。
病院のベッドに横たわる私に医者は驚きながら私に言った。
「あなたが生きているのは本当に奇跡としか言いようがない…」と。
そんな事はどうでもいい…。
毒薬であるはずの「青酸カリ(シアン化カリウム)」でさえ効かなかったことに
私は呆然としていた…。
やはり、私の病気を治す薬は無いのだろうか…。
「不死の病」を治す薬は…。
(了)