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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
63/67

63.香り、光、水

リアンは小型の銃のようなものを取り出した。

そして向かってきた男たちに向けた。


怯んだ男たちの顔にペタッと白いクリームが噴射される。


「!?」


一列目の男たちは皆お揃いで生クリームが鼻に添えられた。


次の瞬間、男たちはうっとりとした恍惚の表情を浮かべ座り込む。


「バニラに良く似た甘い香りが調合されています。これを嗅ぐと何をする気もおきなくなるのです。お試しになりたい方は?」


二列目以降の男たちはたじろぎ、骨抜きになった同僚を見下ろしている。


「鼻のクリームを拭いなさい!」


そこへ鋭いダイアナの声が飛んだ。


「お、おい、しっかりしろ!」


その言葉に慌ててハンカチを取り出し拭っていくけれど、好奇心に勝てず、拭ったハンカチの香りを嗅いでへたり込む者もいた。


「…今さらですけど」


わたしは荒い息で切り出した。


「わたしたち、こんなにこの世界で魔法を使って大丈夫、ですかね?」


「こうなることもレヴィ様なら予想済みでしょう。偉大なお方ですから」


リアンはまったく気にせず、朗らかに答える。


「さて、お次は」


そして取り出したのは、棒付きのペロペロキャンディ。

キャンディ部分はレモンイエローだ。


リアンが大きく円を描くように手を振ると、キャンディ部分が光となり、部屋中を流れ星のように四方八方に飛んでいく。


「う、うわぁ!」


攻撃性のない、ただの明るい花火みたいだったけど、彼らの戦意を削ぐには充分だった。

部屋を飛び出していくものもいた。


「綺麗ですねえ。そう思いませんか、ダイアナさま?」


飛び交う光の奥で、唇を噛み締めているダイアナの顔が見える。


「争いなんて辞めませんか。貴女は何を守っていきたいんですか?プライドですか?私たちを処罰したと世間に発表したとして、それで貴女の評価が上がるのでしようか?それが《運命の女神》ですか?」


「…お前たち、早く2人を!」


リアンの言葉を遮るようにダイアナが叫んだ瞬間、彼は2本めのペロペロキャンディを取り出した。

あれは、わたしがあの時使った…!


そう思った瞬間、ブルーのキャンディは水を産みだした。

男たちはその水流に尻もちをつき、ダイアナも思わず椅子にしがみついた。


リアンはわたしを立ち上がせてくれて、水はあっという間にわたしの太ももくらいの高さになった。


「デイジーは光と水のキャンディの他に、風を起こすグリーンのキャンディと炎をおこすレッドのキャンディもくれました。風はいいとして、炎はちょっと使いづらいですかね」


さすがデイジー…本当に一流の腕を持っている。


「ダイアナさま!」


そこへ、マリーさんがやって来た。

彼女が手を引いてるのは、装飾のない白い服を身にまとった、金髪の老女。


マリーさんの手を握りながら、水の中をゆっくり、ゆっくり進んでくる。


「ダイアナ。…もうお止め」


老女は静かだけど強い力を持った声でいった。


「…お母さま。立ち上がって大丈夫なんですか」


反対にダイアナの声は硬かった。


お母さま…つまり、この方が先代の《運命の女神》、ソフィアさま!


わたしの祖母に当たる人…!


皺が刻まれた控えめな笑顔と深い青い目でわたしを見つめる。


「まさかこんな大きな孫に会えるとはね。ダイアナの娘はまだ小さいから。…ライラとエヴァンズ先生、両方に似てるね」


そう優しく語りかけてくれた。


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