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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
62/67

62.彼のターン

ここに来る前、レヴィ様から『祝福』を授けてもらったからだろうか。


今までと違って、わたしは自分の中の力をはっきりと感じることが出来た。


例の口髭の男が、瞳に恐怖の色を浮かべながら上体を起こし、槍を握り直す。


わたしはそれに目をやり、槍が折れるところをイメージする。


すると、簡単に槍はポキリと折れた。


「ひぃ…」


槍が床に転がり、男は引きつった声を上げる。


わたしは次にダイアナを見つめた。


彼女は青ざめた顔で立っていたけれど、瞳の中の炎は消えてないようだった。


「…確かに金色の髪に青い瞳。ライラの娘で間違いないようね」


動揺を抑えつつ、低い声でそう言った。


「金髪になったり黒髪になったりするのね?変わっていること」


「偉大なる母君の遺伝のためですよ」


彼女か吐き捨てると、すかさずリアンが答える。


「母君の能力は大変高かったようで。常時、力を出したままだと体に負担がかかる。こうやって出したりしまったりする方が効率が良いでしょう」


母の大きな力はダイアナにとってコンプレックスだった、そう父は言っていた。


それは確かに当たっていたらしく、リアンの発言にますます瞳が燃える。


「そう。で?貴女はその偉大な力でどうする気なの?可愛い姪」


椅子にドサッと体を預けると足を組む。


「私を滅ぼして、この世界を支配するつもり?」


「そんはつもりはありません」


わたしはきっぱりと、言い返す。


「そんなことに興味はないし、この力をそんな風に使ったりしない。ただ、わたしは貴女に《運命の女神》として、人々に信頼され、人々を助ける、そんな風に生きて欲しいだけです。ただ…」


ここで息を整える。


「貴女がわたしの大切な人たちや街の人を苦しめるなら…容赦しない!」


わたしの強い気持ちに呼応して風が起こり、シャンデリアが揺れ、カーテンがなびき、窓がガタガタと音を立てた。


男たちは床で縮こまり、ダイアナは身じろぎ1つせず、わたしを見つめてる。


「…!」


「アリス!」


急に目眩が起こって、わたしの体はぐらっと揺れた。

リアンが咄嗟に腕を伸ばし、支えてくれる。


目の前がチカチカする…。


「…やっぱりねぇ。思った通りだわ」


肘掛けに頬杖をついて、ダイアナは薄く笑う。


「ライラも良く目眩を起こしてた。貴女がどんな偉大な力を持っていたとしても、長くは保っていられない、そう思ったのよ」


鏡に目をやるとわたしはまだ金髪に青い瞳だったけれど、目眩と呼吸の乱れが続いていく。


この世界は魔法に満ちていないから、魔法を使うと体に負担がかかるって…レヴィ様も言っていたけれど…


「大きいことを言ってたみたいだけど、どうしましょうか?」


…例え体に負担がかかっても、今、全力で。


そう思った瞬間、リアンがわたしの手をぎゅっと握った。


「アリスはちょっと休憩してて下さい」


「え?」


リアンはわたしをそっと床に座らせた。


「じゃあ、ここからは私のターンとしましょうか!」


そう言って、明るく宣言した。


「皆さんがまだ見たことない、不思議なお菓子をご覧にいれましょう」


…そういえば、出発の時にデイジーが何かくれてた。


「お菓子はお好きですか?ダイアナさま。魔法のお菓子に興味は?」


「…それも謎の人物にもらったというものなのかしら?」


「その通りでございます」


ダイアナは床にしゃがみこんでる男たちにすかさず指示を出した。


「早くあの2人を捕らえなさい!」


男たちは何かのスイッチを押されたように慌てて立ち上がると、ぎくしゃくしながらこちらへ向かってきた。


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