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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
55/67

55.魔法と勇気

「次に手帳を開いて、白いページを球体に向けて下さい」


言われるままに手帳を開くと、真っ白のページが続いている。

そして、それを球体にかざした。


次の瞬間、球体から光が伸びて手帳に吸い込まれていく。


それと同時に、ドム爺さんが立ってる近くに白い光が生まれた。


「手帳をご覧下さい」


クリフさんは優雅に続ける。


光があたったページには丸いスタンプのような、紋章のようなものが浮き上がっていた。


「このスタンプがあると、この『道』を使うことができます」


「こちらに戻ってくる時はどうすれば?」


リアンが尋ねる。


「そちらの世界にもこの球体があります。普通の人には見えないようにしてありますが。手帳が導いてくれるでしょう」


この手帳…大切にしなくちゃ。

わたしはぎゅっと手に力を込める。


「あ〜あ、オレも一緒について行きたいなぁ」


カレブが大きな声でぼやく。


「ありがとう。でもすぐに戻ってくるから」


「絶対だよ」


わたしはカレブに頷く。


「では、行きましょうか」


「はい!」


リアンの言葉に力強く返事をする。


「お気をつけて」


「また来いよ」


「早くだよ!絶対!」


柔らかく微笑むクリフさんに、軽く手を上げるドム爺さん、羽をばたつかせるカレブ。


「みんな、ありがとう!またね!」


わたしたちは白い光の中に進んでいく。

そこには石でできた階段があった。


初めてこの世界に来た時のように階段を下っていく。


下っていくほどに光は遠ざかり、薄暗くなっていった。


「緊張してますか?」


ふいにリアンに尋ねられた。


「えっ?」


「顔が固まっています」


「えっ、えっ」


わたしは両手で頰を包んだ。


「大丈夫、きっとうまくいきますよ。魔法はその為にあるんです。ポジティブな気持ちで使う魔法は成功します。ネガティヴな気持ちで使う魔法はそれに勝てないものですよ」


「ポジティブな魔法…」


「私自身は魔法を使えませんが、子供の頃から魔法の世界にいて、そう学び取りました」


これから対峙する《運命の女神》ダイアナさま…

きっとポジティブな気持ちでは負けない気がする。


「…そうですね。ありがとうございます。リアンはいつもわたしに勇気をくれる」


ん?ポロっと唇から本音が溢れてしまった。


「…というか、あのっ」


あわてて何か言おうとしたけれど、


「いつも勇気をもらってるのは私の方ですよ」


リアンがそう言って微笑んだ。


「アリスは前向きで一生懸命で、勇気がある。いつもハッとさせられます。…私はあの魔法の世界と出会うまで、孤独な幼少期を過ごしていました。もしあの時、アリスと知り合えていたら…私は今と違った人物になれてたかもしれませんね」


孤児院で育ち、丁寧な言葉使いと笑顔で身を守ってきたリアン。


でも…わたしは。


「でもわたしは今のリアン、好きですよっ」


なぜかぶっきらぼうに言葉が飛び出した。


なにこれ、なんか告白みたいになっちゃった?

そうだけど、そうじゃなくて…

わたしは一気に混乱してしまう。


「ふふっ、ありがとうございます」


慰めにとったのか、リアンは笑って流しただけだった。


階段を下り、平地を歩き、再び階段を上り、光に包まれた…と思ったら、そこは森の中だった。


明らかに空気が違う。


久しぶりに帰ってきた…!


ここは元の世界だ!





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