表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
53/67

53.繋いだ手と手

「では、元の世界への手配についてはクリフを向かわせます」


レヴィ様と別れる時間になり、彼女は優雅に立ち上がった。


「レヴィ様はいつもこちらで暮らしてるのですか?」


リアンが尋ねると小さく首を振る。


「一応、来賓を持てなすためのきちんとしたお屋敷もあるのですが…。長閑で静かな場所が好きで、たまにここに来ているのです」


「もしかして、こちらは魔法で作った場所なんですか?」


辺りを見回しながら、今度はわたしが尋ねる。


「はい。『道』をつくるのと似た方法なのですよ」


…凄い。

どこまでも広がって見える空と大地、風。

揺れる花や草木。

これが魔法で出来てるなんて。


「そして…我々はどうやってまずここから戻れば?」


リアンも不思議顔だ。


「それはこちらに」


レヴィ様はまるでカーテンを開くように、何もない空間に手をかけ、ひらりと動かした。


するとそこには鏡…!


「ね?」


目を丸くするわたしたちにまるで少女のように微笑む。


「またお会いできるのを楽しみにしてますよ」


「ありがとうございます」


わたしたちは順番にレヴィ様と握手をした。

透き通るような白い肌に華奢な指先をしている。


「自信を持つことです。背筋をしゃんと伸ばして、顔を上げて。前を見るのです」


「はい」


わたしの目を見て、そう言ってくれた。


背筋を伸ばして、顔を上げて、前を見る。


心の中でそう繰り返して、頷いた。


鏡をくぐり抜けると、あの絵が飾られた部屋に戻ってこれた。


そして、そのタイミングがわかっていたかのように扉が開く。


顔を覗かせたのはクリフさんだった。


「お話はレヴィ様から伺いました」


え?

いつの間に?


「色々用意を致しまして、明日また、ハワードホテルの方へお迎えに参ります」


クリフさんは涼しい顔をして続ける。


「よろしくお願いします」


リアンが頭を下げたのを見て、驚いて固まっていたわたしも慌てて頭をさげる。


相変わらずの美しい笑顔を見せたクリフさんは、つつっとわたしに近づくと唇を耳元に寄せて来た。


「リアン氏は大変興味深い人物です。アリス嬢、恋愛相手に選ぶと苦労するかもしれませんね」


「えっ?」


聞き返すと、クリフさんはさっと離れて杖を掲げた。


「何事も退屈しなさそうな方を選ぶといいですよ。私はそうしてきました」


そう言い終わるやいなや、杖の先を床に軽く打ちつける。


わたしとリアンの足元からピンクの光が立ち上り、あっという間に包み込まれた。


体がぐるん、と回転し、次の瞬間には硬い床に体が打ちつけられた。


目の前には天井だ。


…なんだか、クリフさんという人がわかってきた気がする。

コナーの苦々しい顔も思い浮かんだ。


「アリス、大丈夫ですか?」


「は、はい!」


リアンに顔を覗き込まれて、上体を起こす。


ここは…ハワードホテルの廊下?


「アリス!」


「リアンさん!」


そこへ、バタバタとデイジーとオーウェンさんが駆け寄ってきた。


「帰ってきたんですね!大丈夫ですか?」


「レヴィ様に会ったの?どんな人?ドム爺はさっき『道』を作る仕事が正式に入って、魔法士に連れてかれたんだけどさぁ」


デイジーは喋り続けながら、わたしの手を引っ張って立ち上がらせた。


「…アリスは、レヴィ様の血を受け継ぐ存在でした」


「えぇっ!?」


リアンが静かに切り出すと、デイジーとオーウェンさんが大きな声を上げた。


「そして、我々は一度元の世界に帰り、騒ぎをおさめてこようと思っています」


「…え?どういうこと?」


わたしの手を握るデイジーの力がぎゅっと強くなり、その赤い瞳は揺れている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ